『未来への周遊券』 (最相葉月/瀬名秀明 共著・ミシマ社) より。 (1年半にわたって産経新聞で連載された、最相さんと瀬名さんの往復書簡を1冊にまとめた本の一部です。最相さんから瀬名さんへの「生命の未来に迫る滅亡の危険」という回より) 【瀬名さんの手紙の最後にあった、「ただひとつだけ光速を超えられるものがある」という一節を読んで思い出した親子の会話がある。その息子は科学雑誌が大好きで、ある日、身につけたばかりの天文学の知識を父親に披露しようと得意気に解説した。今見えている星は現在そこにはなく、距離によっては十年前、百年前の姿なんだよと。すると、それを聞いた父親はやさしくこう返した。「なるほど、見る場合はそうかもしれないな。しかし、考える場合はどうだ。今地球のことを考えている。つぎに遠い星のことを考える。これにはなんら時間を要しない。人間の思考は光より速いということになるぞ」 息子は一瞬きょ