他人の犯罪を捜査機関に明かす見返りに、起訴を見送ったり求刑を軽くしたりする「司法取引」が6月から始まった。組織犯罪などの解明を進めやすくする狙いだが、うその供述で無関係の人が巻き込まれる恐れも指摘される。かつて部下の供述をもとに逮捕、起訴され、無罪となった中嶋玲子さん(64)も冤罪(えんざい)を懸念する一人だ。 《中嶋さんは2002年4月、福岡県杷木町(現・朝倉市)の町長選で初当選。九州初の女性町長として注目されたが、03年10月、国税の還付金を詐取したとして逮捕された》 警察から「署に来てくれませんか」と電話があり、行ったら逮捕状を見せられた。なぜ自分が逮捕されるのか分からなかった。 《『還付金をだまし取ることについて、事前に説明した』という職員の供述が逮捕に至る根拠となった。勾留は約7カ月に及んだ》 取り調べは厳しく、毎日午前10時から午前0時ごろまで行われた。刑事は「知っていたと言え