思考過程で使われる記憶:作業記憶 前頭葉損傷の患者さんでは「宣言記憶」も「手続き記憶」も比較的良く保たれているのですが、作業記憶と呼ばれるタイプの記憶が障害されます。 作業記憶(ワーキング・メモリー)という概念を最初に提唱したバドレーBaddeley (1986)によれば、作業記憶とは「理解、学習、推論など認知的課題の遂行中に情報を一時的に保持し操作するためのシステム」です。ちょっと分かりにくい言い回しですが、要するに、ものごとを考えるときに使う記憶ということです。記憶というと、憶えておくべき内容を記憶の引き出しに入れておいて、必要に応じて取り出すような単純なイメージを持ちがちです。一方、私達が考えるときは複数の内容を同時に心に留めておかないと、それらの関係を判断することはできません。このタイプの記憶は考えているあいだ頭の中に存在すれば良いので短期記憶の一種です。しかし、電話番号を憶えてお