「キャンセル・カルチャーと言うべきでない」論 過去または現在に行われた非道徳的あるいは差別的な言動を糾弾し、発言者に対して社会的制裁を求めるムーブメント「キャンセル・カルチャー」が、日本にも根付いて久しくなった。差別的な言説を許さないという社会的コンセンサスの実践であるとして支持・評価する声もある一方で、自由な言論を委縮させるとの批判も根強い。 朝日新聞デジタルに掲載された、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授・南川文里氏のインタビュー記事では「キャンセル・カルチャー」に対する批判はもとより、「キャンセル・カルチャー」という語そのものが、日本社会の現状を鑑みるに、用いられるべきではないとの持論が展開されていた。 〈「マイノリティーが声を上げることをキャンセルカルチャーと名付け、行きすぎだ、と牽制(けんせい)する風潮があるのが気がかりです。現時点では、『キャンセルカルチャー』と