網の目のように張り巡らされた東京都内の鉄道路線は、毎日利用する乗降客にとってさえ、乗り換えが複雑で面倒だ。 そんな乗降客の苦労を大幅に軽減してくれるのが、各駅に貼られている『乗り換え便利マップ』。どの車両に乗ればどの出口や乗り換え口に近いか、エレベーターやエスカレーター、トイレ、公衆電話はどこにあるかが一目でわかるポスタータイプのマップだ。 これを考案したのが、当時いち主婦だった福井泰代さん(39歳)。 話は1995年の夏に遡る。 その日、福井さんはJR西日暮里駅のホームで途方に暮れていた。荷物を持ち、まだ赤ん坊だった下の子供をベビーカーに乗せていた彼女は、改札口に向かうためにエレベーターかエスカレーターを探していた。だが見当たらない。汗をかきながらホームの端から端まで歩いた挙げ句、ようやく見つけたエスカレーターはホームの中央にあった。(なんだ。前もって、車両の真ん中に乗ればいいって知って