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小説に関するhizkiのブックマーク (44)

  • 『おっぱいマンション改修争議』原田ひ香

    「おっぱいマンション」のネーミングが絶妙です。個性的な建物ってわかりやすい(そして下品な)あだ名がつけられますよね。 アサヒビール社隣のう●こビルとか…。 この物語は「おっぱいマンション」という建築物が舞台ですが、読みどころはマンションに関わる人たちの思惑です。 おっぱいマンション改修争議 著:原田 ひ香 ¥1,781 (2024/03/12 21:35時点 | Amazon調べ) Amazon 楽天市場 Yahooショッピング ポチップ 『おっぱいマンション改修争議』あらすじ その個性的な形状から「おっぱいマンション」と呼ばれるニューテラスメタボマンションは50年近く前、天才建築家・小宮山悟郎によって建てられた。 しかし老朽化が進んだため「解体か改修か」を決める住民会議が開かれることに。 建築家の娘、弟子、彼に人生を狂わされた住人、それぞれの思惑が交錯し、争議は難航する。そして、おっぱ

    『おっぱいマンション改修争議』原田ひ香
  • 『板上に咲く』原田マハ

    情熱の版画家・棟方志功のもまた、情熱の人でした。原田マハさんの『板上に咲く』は、彼を支えた・チヤの目線から見た棟方志功とその作品の物語です。 板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh (幻冬舎単行) 著:原田マハ ¥1,599 (2024/03/23 18:38時点 | Amazon調べ) Amazon 楽天市場 Yahooショッピング ポチップ から見た棟方志功 物語はチヤさんが棟方志功と出会ってから添い遂げるまで、夫婦の人生の節目となった出来事が描かれています。 驚くことに、棟方はなんと新聞広告でチヤさんに愛の告白をしているのです。さすが情熱の人だ…。 やがて結婚した二人ですが、最初は東京と青森で別れて暮らすことになります。 棟方は「帝展に入選して一人前になるまでは暮らせない」など弱気な手紙ばかり。一向に東京にチヤを呼び寄せてくれません。 業を煮やしたチヤ

    『板上に咲く』原田マハ
  • 『私たちの特別な一日: 冠婚葬祭アンソロジー』

    冠婚葬祭をテーマに、6人の作家が描いたアンソロジー『私たちの特別な一日』。SFやミステリなど、それぞれ個性的な視点から冠婚葬祭を描いています。 私たちの特別な一日: 冠婚葬祭アンソロジー (創元文芸文庫) 東京創元社 ¥836 (2024/03/19 15:02時点 | Amazon調べ) Amazon 楽天市場 Yahooショッピング ポチップ 『もうすぐ十八歳』 飛鳥井千砂 「成人年齢18歳引き下げ」をテーマにした物語。 18歳で妊娠結婚した主人公。過去の辛い経験から、職場の人に自分のことを話せないでいた。やがて彼女の家の事情が明らかになっていく。 義母とも仲がよく、若くして子どもを産んで幸せに見える主人公でしたが、若い出産であらぬ誤解や偏見に悩まされます。 さまざまな事情がある中で、それでも家族が仲がいいのが救いになった物語でした。 ・飛鳥井千砂『タイニー・タイニー・ハッピー』 『

    『私たちの特別な一日: 冠婚葬祭アンソロジー』
  • 八咫烏シリーズ第二部『望月の烏』(ややネタバレ)阿部智里 | 日々の書付 感想録

    八咫烏シリーズ第二部『望月の烏』。時間軸でいうと『追憶の烏』の10数年後、『楽園の烏』の少し前といったところです。 まだ発売されたばかりなので、できるだけネタバレを少なく書いたつもりですが、未読の方はぜひ、『望月の烏』後に御覧ください。 ネタバレ考察もいずれ書きたいと思います。 『望月の烏』あらすじ 金鳥代・凪彦の后選び「登殿」が行われることになり、東家、南家、北家、西家から新たな姫が選ばれ桜花宮にやってくる。 しかし、以前の「登殿」とは異なり、政治的な取り決めにより皇后と側室(それに羽母まで)に選ばれる家はあらかじめ決まっていた。 そんな中、美貌の落女(男として朝廷で働く女性)・澄生(すみき)が注目を集め、凪彦もまた、彼女の聡明さに興味を持つようになり…。 望月の烏AmazonKindle楽天楽天Kobo 金鳥代凪彦(ややネタバレ) 今回、私が一番驚いた人物が凪彦でした。『追憶の烏』で奈

    八咫烏シリーズ第二部『望月の烏』(ややネタバレ)阿部智里 | 日々の書付 感想録
  • 国芳の弟子たち『おもちゃ絵芳藤』谷津 矢車

    絵師の生きざま 芳藤の得意は「おもちゃ絵」という、双六など子供が使う玩具に使われる絵を得意とする絵師。国芳一門でも目立たない存在です。 世の中が明治に変わっても、相変わらずおもちゃ絵と、国芳塾を守ることを生業としている芳藤。その姿はかたくなで、弟弟子たちが仕事を世話しても、頑として譲らない。 読んでいて最初は、芳藤のあまりに平凡さ、時代にのれない頑固さを歯がゆくおもっていました。 お互い憎からず思っていた国芳の娘さんとの縁談も、亡きや師匠に遠慮して身を引いてしまうし。 けれど読み終わってみると、絵師という矜持を不器用なりに最後まで貫きとおしたその姿は、すごいもんだな、と感じずにはいられませんでした。 どんな道でも、たとえ人から嗤われようとも最後まで貫き通す。 芳藤が国芳から受け継いだのは、技でも画塾でもなく、「絵師としての生きざま」だったのかもしれません。 歌川芳藤と弟弟子 幕末から明治

    国芳の弟子たち『おもちゃ絵芳藤』谷津 矢車
  • 女中文学の源流『流れる』幸田文

    『流れる』あらすじ 芸者置屋「蔦の家」の住み込み女中となった梨花。もともとは「しろうと」の奥様だった彼女は、置屋での暮らしで「くろうと」である彼女たちの暮らしに驚きつつも勤め始める。 その家の主人は名妓だったが、揉め事が耐えない。勤めて早々、前にいた芸者の叔父という男から揺すりをうけるのだった。 映画との相違点 私は成瀬巳喜男の映画『流れる』を見てから原作を読みました。 あらすじや設定は映画とほぼ同じですが、原作では登場人物たちが一癖も二癖もあるキャラクターとして描かれています。 映画では梨花は従順でおだやかな元奥様の女中でしたが(映画では田中絹代が演じていました。)、原作では従順な表面の下に辛辣な観察眼と批評精神が宿っていたのです。 そのほかにも、主人の娘の勝代が不器量だったり、姪の不二子がわがままだったりと、映画と真逆なのには驚きました。

    女中文学の源流『流れる』幸田文
  • 不良女中の人生を描いた『女中譚』中島 京子

    不良女中の人生 『小さいおうち』のタキさんは、勤勉な家事のプロフェッショナルでした。でも『女中譚』のおすみばあさんは、一言でいうなら「すれっからし」です。 おすみさんはもともと女給(現代でいうとホステスみたいなもの)でした。 悪い男と組んで、その男が売った女から金を引き出す手紙を書いてみたり、奉公先を飛び出したり、夜にダンス練習所に通ってダンサーを志してみたり…。 彼女の行動には一貫性がなく、浮草のような暮らしぶりです。 女中体験譚 『小さいおうち』とくらべると、やはり面白さには欠けるかもしれません。 元女中の老婆が昔を回想するという手法は同じです。 しかし、『小さいおうち』のように、当時の社会情勢エピソードでうまく物語を包むのではなく、ちょっと強引のからめている感じがします。 あとは主人公のおすみさんの性格や行動に、まったく共感ができなかったのも原因かも。 メイドと女中 秋葉原のメイド「

    不良女中の人生を描いた『女中譚』中島 京子
  • 珠玉の日常短編集『スナック墓場』嶋津輝

    ラインのふたり 倉庫作業員の霧子と亜紀。二人で予定を合わせて働き、終わると亜紀の車で帰る(車通勤はルール違反だが)。時々は一緒にご飯をべるが、お互いどこに住んでいるかは知らない。 仕事ができる二人だが、ある工場の女性社員「ジャミラさん」だけは苦手としていた。 私はオフィス内でしたが、こうした単純作業の経験があるので、現場の雰囲気がより伝わってきました。 霧子と亜紀は、ウマは合うけれど深入りせず、友情というより相棒のようで、この関係性が読んでいて心地いいです。 カシさん 夫婦が営むクリーニング店に来た風変わりな女性客「カシさん」。彼女は、下着も含めてすべての衣類をクリーニングしてほしいという。 カシさんは何者なのか、なぜ下着までクリーニングに出そうとするのか(それも自分で予洗いしてまで)。そのあたりの謎は、なんとなくわかったような、わからないような。 それでもきっと、カシさんとクリーニング

    珠玉の日常短編集『スナック墓場』嶋津輝
  • 平安時代版シンデレラ『おちくぼ物語』田辺聖子

    ラノベのように読める古典 源氏物語は「超」がつくほどの上流貴族ですが、『おちくぼ物語』のお話にでてくるのはやや中流の貴族たち。そのせいか喜怒哀楽が激しいし、けっこうお下品な表現(いわゆる下ネタ)もでてきます。 姫に横恋慕する好色の典薬の助なんかは、彼だけねちっこい関西弁をしゃべったり、腹を下して漏らしてしまったりとかなりお下品。 最後は少将の部下にコテンパンにやられるところもコミカルで面白いです。 しかしまあ、人のやることなんて千年前も今もあんまり変わらないんですよね。今でもこうした好色オヤジっていますし。 でも主人公である姫君はどこまでも美しくて人を恨んだりしません。その分、女房の阿漕(あこぎ)や後に姫の夫になる少将たちが姫をいじめていた北の方(継母)をいじめ返すところが痛快でした。 寺社へのお参りの場所を横取りしたり、召使いを引き抜いたりと何度もネチネチと行うのですけど、それもまた人間

    平安時代版シンデレラ『おちくぼ物語』田辺聖子
  • 『優しい音楽』瀬尾まいこ

    優しい音楽 駅のホームで突然見知らぬ女性・千波から声をかけられたタケル。それがきっかけで付き合うようになったふたりだが、彼女はタケルを家族に会わせたがらない。 それには彼女の悲しい過去が関係しているのだけれど… 『春、戻る』と同じく不思議な展開で始まる『優しい音楽』もまた、読み進めると切なくも温かい展開になっていきます。 物語を最期まで読むと、タイトルの意味がわかります。タケルが千波の家族を思いやる姿に『賢者の贈り物』を思い出しました。 お寿司のべ方みたいな何気ない生活習慣の違いに驚いたり、家でだらだら過ごしたりする恋人達の日常の様子にほっこりします。 タイムラグ 不倫中の彼、平太の娘を旅行中預かることになってしまった深雪。平太の娘・佐奈に「お願い」されて、母親との結婚のことを許していない祖父のところへ説得をしに乗り込むことに。 途中まで「平太(不倫中の男)はなんて嫌な奴だ!」と思ってい

    『優しい音楽』瀬尾まいこ
  • 『駐車場のねこ』嶋津 輝

    カシさん 夫婦が営むクリーニング店。そこへ来た風変わりな女性客「カシさん」は、下着も含めてすべての衣類をクリーニングしてほしいという。 カシさんは何者なのか。なぜ下着までクリーニングに出そうとするのか、なぜクリーニング屋の主人を見つめるのか。そのあたりの謎は、なんとなくわかったような、わからないような。 それでもきっと、わからないままにカシさんとクリーニング屋の関係は続いていくのでしょうね。 駐車場のねこ ふとん屋の民子は野良たちに餌をやっている。は去勢済の「さくら」だし、客受けがいいので商店街でも餌やりを認めていた。 しかし、向かいのふぐ屋の料理人だけは、民子に文句を言ってきた。ある時、民子が膝の手術で入院中に夫からたちが来なくなったと聞かされる。民子はふぐ屋がなにかしたのではと思い込むようになり…。 商店街の店同士って、連帯感があるのかとおもったら、アパートと同じで付き合いがな

    『駐車場のねこ』嶋津 輝
  • 『おしまいのデート』瀬尾 まいこ

    『おしまいのデート』は、普通の人々の、よくあるようなお話です。けれど、瀬尾まいこさんが描くと、どのお話もいとおしく、切なくなります。 瀬尾まいこさんは、私たちが邪険に扱ってしまう普通の日常を、丹念に拾い集めて磨き上げ、私たちの前に見せてくれます。だからどの物語も愛おしいんです。 『おしまいのデート』掲載作品 ・別々に住んでいるおじいちゃんと孫の「おしまいのデート」 ・卒業した教え子と教師が、月に一度定屋で玉子丼をたべる「ランクアップ丼」 ・今まで全く話したことのない同級生男子に誘われ「デート」をすることになった「ファーストラブ」 ・公園に捨てられた犬をめぐる男女の不思議な交流「ドッグシェア」 ・シングルファザーの父兄と恋仲になってしまった幼稚園の先生と、園児のかんちゃんの「デートまでの道のり」 私が特に好きなのは、不良の男子学生が先生と一緒に玉子丼をべる『ランクアップ丼』です。 ランク

    『おしまいのデート』瀬尾 まいこ
  • 『パンとスープとネコ日和』群 ようこ

    「パンとスープとネコ日和」は、「かもめ堂」のスタッフが制作したWOWOWドラマ。その原作にあたる「パンとスープとネコ日和」を読みました。 こちらも「かもめ堂」と同じく、群ようこさんが原作を手掛けています。 「パンとスープとネコ日和」あらすじ 出版社に努めていたアキコは、母の死と転属をきっかけに母の残した堂を再建。サンドイッチとスープ、フルーツだけを出す店をオープンさせる。 そんなアキコののもとに、突然現れたの「たろ」。 お店を手伝ってくれる女の子・しまちゃんも決まり、アキコはパンとスープとネコのいる、忙しくも充実した日々を送っていた。 そんなある日。アキコのもとに、あったことのない父親の話を持ってくる女性が…。

    『パンとスープとネコ日和』群 ようこ
  • 『麦ふみクーツェ』 いしいしんじ

    童話のようで、童話でない物語 わたしにとって、はじめてのいしいしんじ作品です。 童話のようで童話でない、不思議でちょっと切ないお話でした。 いままで読んだことのないような、それでいてどこか懐かしいような舞台の世界。そして、主人公のまわりのユーモラスで優しい人々。 物語の前半部分は吹奏楽のコンクールで優勝して楽しいのですが、町に不思議なネズミの雨が降ったおかげで、町の様子がおかしくなったってしまいます。 そして「ねこ」は進学した音楽学校になじめず、悲しい思いをします。 また、故郷に現れたセールスマンが町の人々をだましてしまうなど辛いことも多く、読んでいて切なくなりました。 へんてこで優しい人々 「ねこ」はある時、蝶の刺青をしている盲目の「ちょうちょおじさん」に出会います。おじさんは友達の名チェリストの「先生」や、先生の娘の「みどりいろ」を紹介してくれます。 ほかにも、「先生」がチェロを弾きに

    『麦ふみクーツェ』 いしいしんじ
  • 『誰かが足りない』宮下 奈都

    宮下奈都さんの「誰かが足りない 」。レストランとべ物にちなんだほっこりとした話かとおもいきや、意外な視点で物語が綴られます。 様々な人がレストランに予約を入れるまでの、オムニバスになっているのです。 古くからの老舗で、人気のレストラン・ハライ。予約困難なこの店に、どんなに人々が、どんな思いで事にこようとしているのか…。 就職活動に破れ、彼女にも去られた青年。認知症のため、愛する夫との思い出を忘れてしまう老婦人。母の死が原因でひきこもり、ビデオカメラを通じてしか人と話せない青年…。

    『誰かが足りない』宮下 奈都
  • 『ドスコイ警備保障』 室積光

    ドスコイ警備保障設立 水商売専門の商業高校を描いた「都立水商!」では、そのアイデアにびっくりしましたが、「ドスコイ警備保障」驚き満載。力士による警備会社という、ありそうで無かった意外な設定です。 お相撲さんのイメージといえば、「強いけれど、どこか動作がゆったりしている」なのですが、しかし、実はトップスプリンター並の瞬発力と強靭な筋肉を持つ格闘家なのですって。(近距離のスピードならカール・ルイスよりも上回る力士がいるらしい) そんな格闘のプロ集団が警備を行うんですから、ちゃらい犯罪者などはひとたまりもありません。そして案の定、ボッコボコの返り討ちにあってしまいます。 そして、いつしか、「ドスコイ警備保障」は「警察官立ち寄り所」よりも効果のある犯罪抑止力となってゆくのでした…。 全員が主人公 普通のドラマなんかだと、 会社設立→順調→ものすごい困難がやってくる→克服して大団円 という流れになる

    『ドスコイ警備保障』 室積光
  • 『ママの狙撃銃』 萩原浩

    萩原浩さんの『ママの狙撃銃』では、ママが狙撃銃で標的を狙撃をしたり、いじめ相手をやっつけるという、痛快でちょっと切ないお話です。 一見、意外な組み合わせな「主婦スナイパー」という職業。だけど、読んでいうくうちにってなんだか「ありえそう」って思ってしまいました。 ママの狙撃銃 あらすじ 東京郊外の一戸建てに住む曜子は、ガーデニングが趣味で2児の母の、どこにでもいそうな普通の主婦。しかし、彼女が普通の主婦と違うのは、前職がスナイパー(狙撃手)だったこと。 アメリカ人の祖父から教わった銃の腕と形見の銃で、今日も標的を狙い撃つ。家族の平和のために…。 娘のいじめ問題や、夫の転職問題で頭を悩ませるものの、平凡で幸せな生活を送っていた曜子。 しかしある日、「K」という男から電話がかかってくる。 Kはアメリカ時代、祖父と仕事をしていたエージェント。彼が25年ぶりに曜子に仕事の依頼をしたいという。 曜子は

    『ママの狙撃銃』 萩原浩
  • 廃墟建築士 三崎亜記

    「廃墟建築士」は文字通り廃墟を設計する建築士のこと。ここでは廃墟は純粋な建築物として必要とされているのです。 この世界では、「廃墟」美術館や博物館、公園のような位置づけなんですね。各国で設置が義務付けられ、廃墟の数やクオリティでその国の文化レベルも決まります。 そんな廃墟に見せられ、廃墟を作り続けたある廃墟建築士の物語。 廃墟建築士の中には、廃墟を悪用したり、住民の反対を押し切って巨大廃墟を建設したりしていて、現実の建設業界にありそうな問題でした。 モチーフは虚構だけれど、現実味を帯びてこの世界が近くに感じられました。 が飛ぶ図書館 その他、図書館を生物として定義した「図書館」。その図書館では、夜になると野生化して飛び回るため、たちを納める調教師がいるのです。彼女が夜間開放のために図書館を懐柔していく物語です。 調教師が暴れる図書館を抑えるために出す天敵の姿は、ハリー・ポッターのパトロ

    廃墟建築士 三崎亜記
  • 『鼓笛隊の襲来』 三崎亜紀

    「廃墟建築士」を読んでから三崎ワールドの不可思議な魅力にとりつかれてしまいました。幻想と現実が奇妙に入り混じった世界。 もし、パラレルワールドがあるとしたら、どこかにこんな世界が存在するのではないでしょうか…。 不可思議な三崎亜紀ワールド 「鼓笛隊の襲来」では、表題作品以外にも、不可思議な世界を描いた短編が掲載されています。どれも日常とつながっているのに、どこかおかしい。 私たち側から見たら、これらの世界は奇妙にみえるかもしれません。けれど三崎ワールドの人々も私たちと同じく悩んだり、切ない思いをしたり、奇妙な世界で普通に懸命に生きています。 たとえ「世界」が違っても、人間がやっていることなんてそう変わらないんですよね。 ・戦後最大規模の鼓笛隊に遭遇する家族「鼓笛隊の襲来」 ・記憶の不確かさを描いた「彼女の痕跡展」 ・労働者の覆面着用の権利について「覆面社員」 ・物の「象さんすべり台のある

    『鼓笛隊の襲来』 三崎亜紀
  • 『漢方小説』 中島たい子

    漢方のイメージに似つかわしくない、若い漢方医にひそかに思いをよせながら、みのりは徐々に体と心のバランスを整えてゆく。 個性的な登場人物 物語の主軸は漢方なのですが、それ以外にも登場する面々が個性的でストーリーに面白みを加えてくれています。 タイタニックを「船というモンスターが次々と人を襲う話」と説明する天然の志保さん。 幽霊飲み仲間のサッちゃんは必ずラスト主人公が牧場に暮らすシナリオを書く(でもおもしろいらしい) ヘタな手品にはまっていて、会うと必ずみのりを実験台にする大家さん。でもいつも縄抜けは悲惨な結果に…。 普段は淡白な事なのに、突然午後3時に衝動的にエビチリを作ってべる主人公の母親。 べたくなったら時間を関係なくべたいときにべたいものをべる母親に「なんでこの人が病気にならず、私が病気になるのか」とみのりは嘆きます。 けれど、自分の欲求にあわせてべたほうが精神的にもいい

    『漢方小説』 中島たい子