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2023年7月9日のブックマーク (46件)

  • 『ドスコイ警備保障』 室積光

    ドスコイ警備保障設立 水商売専門の商業高校を描いた「都立水商!」では、そのアイデアにびっくりしましたが、「ドスコイ警備保障」驚き満載。力士による警備会社という、ありそうで無かった意外な設定です。 お相撲さんのイメージといえば、「強いけれど、どこか動作がゆったりしている」なのですが、しかし、実はトップスプリンター並の瞬発力と強靭な筋肉を持つ格闘家なのですって。(近距離のスピードならカール・ルイスよりも上回る力士がいるらしい) そんな格闘のプロ集団が警備を行うんですから、ちゃらい犯罪者などはひとたまりもありません。そして案の定、ボッコボコの返り討ちにあってしまいます。 そして、いつしか、「ドスコイ警備保障」は「警察官立ち寄り所」よりも効果のある犯罪抑止力となってゆくのでした…。 全員が主人公 普通のドラマなんかだと、 会社設立→順調→ものすごい困難がやってくる→克服して大団円 という流れになる

    『ドスコイ警備保障』 室積光
  • うめめ 梅佳代写真集

    『うめめ』は写真家・梅佳代の初写真集です。 一度ハマると、ずるずるとその魅力に引きずりこまれてゆく梅佳代ワールド。 面白いのにアート。 アートなのに面白い。 私自身、写真を撮るのも、見るのものが好きだけれど、どうもプロの写真集ってあまり興味がなかったのです。 プロの写真集って、なんだか「アートしてるでしょ」とか「心して鑑賞しろ」とか、見る側に主張してくる感じがして。

    うめめ 梅佳代写真集
  • うめ版―新明解国語辞典×梅佳代

    梅佳代写真と国語辞典 辞典をモチーフにした作品は、過去には、アンブローズ・ビアスの『 悪魔の辞典』が面白かったけれど、「うめ版」もまた辞典パロディ部門(?)に新風を巻き起こすことでしょう。 たとえば、表紙の写真の言葉は【ライバル】。上目遣いに頬を膨らませて腕組みをする女の子。その目線の先には、彼女がライバルと思う人物(あるいは動物)がいるのでしょう。 その場面を想像するだけで面白いのです。 他にも【座席】では、ベンチに茶トラが2匹。ちょこんと座っている。これが妙にシュールで可笑しいのです。 ほかにも、【好感】では、手すりに片足をかけた船乗りポーズを取っている少年。添えられた意味には「調子に乗って失敗しないように気をつけろ」と書かれています。

    うめ版―新明解国語辞典×梅佳代
  • ウメップ 梅佳代

    変顔の子どもたち、自由な老人たち ウメップでは、人物の自然で面白い表情が絶妙なタイミングで映されています。まず、表紙の写真。お化け屋敷でしょうか。暗い部屋で泣き叫ぶ子どもたちがいます。 人たちはメチャクチャ怖いのでしょう。でも、見ているこちらはついつい、笑顔になってしまいます。 ほかにも、より目をしたり、ガニ股でピースをするなど、変顔、変ポーズをとる子どもたち。おいおい、それ将来、黒歴史になるぞ…と心配しながらも、やっぱりついつい笑ってしまいます。 そして、自由なのが老人たちです。 お寺の門の前で、なぜかえびぞりポーズのおじいさん、彫刻の胸を思わず触ってしまうおじさん。疲れたのか、石のベンチの下に足を投げ出し、そのまま地べたに座りこんでいるおばあさん。 彼らの見せる姿は哀愁とユーモアに満ちています。 笑える風景 梅佳代さんは、日常に潜む笑いを見つける天才です。パチンコ屋の看板、最初の文字

    ウメップ 梅佳代
  • 『ママの狙撃銃』 萩原浩

    萩原浩さんの『ママの狙撃銃』では、ママが狙撃銃で標的を狙撃をしたり、いじめ相手をやっつけるという、痛快でちょっと切ないお話です。 一見、意外な組み合わせな「主婦スナイパー」という職業。だけど、読んでいうくうちにってなんだか「ありえそう」って思ってしまいました。 ママの狙撃銃 あらすじ 東京郊外の一戸建てに住む曜子は、ガーデニングが趣味で2児の母の、どこにでもいそうな普通の主婦。しかし、彼女が普通の主婦と違うのは、前職がスナイパー(狙撃手)だったこと。 アメリカ人の祖父から教わった銃の腕と形見の銃で、今日も標的を狙い撃つ。家族の平和のために…。 娘のいじめ問題や、夫の転職問題で頭を悩ませるものの、平凡で幸せな生活を送っていた曜子。 しかしある日、「K」という男から電話がかかってくる。 Kはアメリカ時代、祖父と仕事をしていたエージェント。彼が25年ぶりに曜子に仕事の依頼をしたいという。 曜子は

    『ママの狙撃銃』 萩原浩
  • 廃墟建築士 三崎亜記

    「廃墟建築士」は文字通り廃墟を設計する建築士のこと。ここでは廃墟は純粋な建築物として必要とされているのです。 この世界では、「廃墟」美術館や博物館、公園のような位置づけなんですね。各国で設置が義務付けられ、廃墟の数やクオリティでその国の文化レベルも決まります。 そんな廃墟に見せられ、廃墟を作り続けたある廃墟建築士の物語。 廃墟建築士の中には、廃墟を悪用したり、住民の反対を押し切って巨大廃墟を建設したりしていて、現実の建設業界にありそうな問題でした。 モチーフは虚構だけれど、現実味を帯びてこの世界が近くに感じられました。 が飛ぶ図書館 その他、図書館を生物として定義した「図書館」。その図書館では、夜になると野生化して飛び回るため、たちを納める調教師がいるのです。彼女が夜間開放のために図書館を懐柔していく物語です。 調教師が暴れる図書館を抑えるために出す天敵の姿は、ハリー・ポッターのパトロ

    廃墟建築士 三崎亜記
  • 『鼓笛隊の襲来』 三崎亜紀

    「廃墟建築士」を読んでから三崎ワールドの不可思議な魅力にとりつかれてしまいました。幻想と現実が奇妙に入り混じった世界。 もし、パラレルワールドがあるとしたら、どこかにこんな世界が存在するのではないでしょうか…。 不可思議な三崎亜紀ワールド 「鼓笛隊の襲来」では、表題作品以外にも、不可思議な世界を描いた短編が掲載されています。どれも日常とつながっているのに、どこかおかしい。 私たち側から見たら、これらの世界は奇妙にみえるかもしれません。けれど三崎ワールドの人々も私たちと同じく悩んだり、切ない思いをしたり、奇妙な世界で普通に懸命に生きています。 たとえ「世界」が違っても、人間がやっていることなんてそう変わらないんですよね。 ・戦後最大規模の鼓笛隊に遭遇する家族「鼓笛隊の襲来」 ・記憶の不確かさを描いた「彼女の痕跡展」 ・労働者の覆面着用の権利について「覆面社員」 ・物の「象さんすべり台のある

    『鼓笛隊の襲来』 三崎亜紀
  • メフィストの漫画 喜国雅彦 国樹由香

  • 『おばあさんの魂』 酒井順子

    新しい時代の「おばあさん」になるために しかし、新しい時代の「おばあさん」になるためには、やはり先達たちの人生から何か学べるんじゃないかと、様々な分野で活躍したおばあさんたちの人生に迫ります。 有名な「佐賀のがばいばあちゃん」、庭を愛したターシャ・テューダー、老いてもなお、男をひきつけるジョージア・オキーフやマルグリット・デュラス…。実に様々なおばあさんたちがいます。 有名無名、両方のおばあさんの人生をひも解くため、酒井さんはご自分のおばあさま(当時99歳!)にもインタビューしています。 みなそれぞれ困難な時代を生き抜いて、次の世代にいろいろなものを伝えてくれています。まさに、人生そのものが私たちの教科書といえそうです。 文の中で、すてきな言葉を見つけました。 おばあさんは、子供であれ、考えであれ、道であれ、「より遠く」の未来まで、何かを伝えていこうとしている。 おばあさんの魂より 果たし

    『おばあさんの魂』 酒井順子
  • フューチャー・イズ・ワイルド完全図解

    500万年後の世界 まず、500万年後の世界は氷河期です。カナダはすっぽりと氷に覆われていて、熱帯雨林は乾いた平原へと変わります。そんな世界には、人間のような顔をした地球最後の猿が暮らしています。 ここから徐々に哺乳類は衰退していき、1億年後、ついに哺乳類は蜘蛛の餌として養殖されています。 2億年後の世界 フューチャー・イズ・ワイルドで重要な生物・イカ 分かれていた大陸は再び集まり、大きな大陸が出現します。 哺乳類が衰退すると、両生類が進化して地球を支配します。巨大化したカメは、かつての恐竜のように地上に君臨し、鳥が滅びたあとは魚が進化して空を飛びます。 そして、2億年後の世界の支配者はイカ。陸に上がったイカたちは森で集団生活を営むようになります。やがて、彼らがまた進化し、文明を築いていくのでしょうか…。 フューチャー・イズ・ワイルドとカンブリア紀 一見、荒唐無稽にも思える世界ですが、そも

    フューチャー・イズ・ワイルド完全図解
  • 『漢方小説』 中島たい子

    漢方のイメージに似つかわしくない、若い漢方医にひそかに思いをよせながら、みのりは徐々に体と心のバランスを整えてゆく。 個性的な登場人物 物語の主軸は漢方なのですが、それ以外にも登場する面々が個性的でストーリーに面白みを加えてくれています。 タイタニックを「船というモンスターが次々と人を襲う話」と説明する天然の志保さん。 幽霊飲み仲間のサッちゃんは必ずラスト主人公が牧場に暮らすシナリオを書く(でもおもしろいらしい) ヘタな手品にはまっていて、会うと必ずみのりを実験台にする大家さん。でもいつも縄抜けは悲惨な結果に…。 普段は淡白な事なのに、突然午後3時に衝動的にエビチリを作ってべる主人公の母親。 べたくなったら時間を関係なくべたいときにべたいものをべる母親に「なんでこの人が病気にならず、私が病気になるのか」とみのりは嘆きます。 けれど、自分の欲求にあわせてべたほうが精神的にもいい

    『漢方小説』 中島たい子
  • 『鹿男あおによし』 万城目学

    「鹿男あをによし」は奈良を舞台にした歴史ファンタジー(だと思う)。 わたしはドラマを見てから原作を読んだのですが、原作にほぼ忠実につくられていたのに驚きました。 読んでみてドラマがキャスティングもほぼ原作のイメージ通りでした。 これは「鹿男あをによし」が、読んでいて映像が浮かんでくるような物語だからかもしれません。 ドラマ放送後、「鹿男あおによし」ドラマのロケ地マップが配布されていました。 こちらは奈良市内でもらったロケ地マップ。奈良公園や奈良町で撮影されたそうです。 『鹿男あをによし』 あらすじ 赴任先の奈良で鹿に話しかけられるという不思議な体験をする主人公(先生)。鹿は先生に「サンカク」と呼ばれる”目”を、狐の使い番から受け取れという。 ”目”には地震を抑える力があり、鹿、狐、鼠がそれぞれ60年ごとに”目”使って儀式を行い、地震をおさえてきたのだ。 しかし、鼠のいたずらにより「サンカク

    『鹿男あおによし』 万城目学
  • 『鴨川ホルモー』 万城目学

    「鹿男あをによし」を読んでからずっと読みたかった「鴨川ホルモー」。 いったいこの「ホルモー」とはなんなのだろう?いよいよこの疑問が解き明かされる時がきました。 鴨川ホルモー あらすじ 二浪した後、念願の京都大学に入学した安倍は、一目ぼれした早良京子(の鼻)の存在が決め手となり「京大青竜会」というサークルに入部する。安倍はここをレジャーサークルか何かだと思っていた。しかし、実態は京都に千年伝わる競技、“ホルモー”のサークルだった。 「ホルモー」とは対戦型競技の名前。私が一番近いと思ったのはピクミンでしょうか。 自分たちが戦闘を行うのではなく、実際に戦うのは「オニ」と呼ばれる小さな異界の生き物。目や鼻はなく、顔には茶きん絞りのような「絞り」がついている。 ホルモーは、「オニ」たちに命令を下し、10人×オニ100匹で対戦を行う。相手のオニが全滅するか、相手が降参するまで戦いは続き、力尽きたとき「

    『鴨川ホルモー』 万城目学
  • 『ホルモー六景』万城目学

    同志社大学黄龍陣 ホルモーのベースとなる陰陽道には青龍、白虎、朱雀、玄武のほかにも方位が存在する。中心を表す方位・黄龍。 ほろびてしまった「黄龍陣」が偶然にも復活を果たすまでのお話。 京大青龍会の芦屋の元カノ・巴は一年浪人の末、念願の同志社に入学。ひょんなことから「horumo」と書かれた古い英文の手紙をみつける。 どうやらそれは、現在同志社である京都の旧薩摩藩で行われたものらしい。 見えない糸に引かれるように巴は「復活ニカンスル三条件」を果たすべく、たまたま居合わせた元彼・芦屋と神社に向かう。しかし、残りの2条件がまったくわからなかったのだが、実は偶然にも条件は満たされており、巴も知らないうちに「黄龍陣」は復活を遂げる。 ほんと、芦屋って最低男だな。自分から誘っておいて彼女に見つかったのを巴ちゃんのせいにしたりして。巴ちゃん、こんなヘタレは叩きのめしておやんなさい。 丸の内サミット ホル

    『ホルモー六景』万城目学
  • ズルい言葉 酒井順子

    タクシー運転手にあやまる 私が一番共感したのは、近い距離でタクシーを利用するとき「近くで申し訳ないんですけど」という言葉。今の若い人はそんなことを言わないというのも目からウロコでした。 それは若い頃、タクシーに乗るとよく運転手に怒られた経験があるからです。 近い距離だったり、おつりが面倒な1万円をだすと「ふざけんな!若造が!」と怒鳴つけられたことも点。そのため、たまにタクシーを使うと運転手さんに怒られないよう、ものすごく気をつかいます。 今ではそうしたタクシー運転手も少なくなってきたようです。 感情や責任をあいまいにする それと、感情や責任をあいまいにするため「嫌いじゃない」とか「ある意味」、「なかなか」とかはついつい使ってしまいます。 以前読んだ『オトナ語の謎』でも、責任をあいまいにしたり、難しい言葉で煙に巻くビジネス語が紹介されています。 なので、ズルい言葉を使いこなすことがオトナにな

    ズルい言葉 酒井順子
  • 『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』 万城目学

    かのこちゃんとマドレーヌ夫人 あらすじ マドレーヌ夫人は1年前の嵐の日、老犬・玄三郎が犬小屋に匿ってから、かのこちゃんちの飼いになりました。 マドレーヌと玄三郎は、ふつう動物の種類がちがうと言葉が通じません。(らしい) けれど、マドレーヌ夫人は玄三郎の言葉だけは理解できて、ふたりは「夫婦」として暮らすことになります。 一方、小学校1年のかのこちゃんは、ある朝教室で、すずちゃんを見かけます。すずちゃんは鼻に親指を突っ込んで、ほかの指をひらひらさせていました。 ひとめで「こやつはできる」と感じたかのこちゃん。なんとかすずちゃんとお友達になろうと試みるのですが、なぜか避けられてしまいます。 老犬・玄三郎の病気や、やっと仲良くなれたすずちゃんとの別れ。かのこちゃんにつらい出来事がやってきます。その時、マドレーヌ夫人がちょっとした奇跡を起こしてくれるのです。 小学生の日常との日常 小学生の日常と

    『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』 万城目学
  • ミステリ現場の設計『犯行現場の作り方』

    十角館の設計 私は綾辻行人の館シリーズが好きで、すべて読んでいます。館シリーズには、犯行現場となる奇妙な館の平面図がついています。 しかし、もっと具体的に「誰か、あの館たちを立体化してくれないかな」と思っていました。 家の通路がすべて迷路の「迷路館」や、内部構造が複雑な「時計館」は難しそうだけれど、『十角館の殺人』だったら実際に作れそうだよな~と思っていたら、ついに夢が実現しました。といっても設計上でですが。

    ミステリ現場の設計『犯行現場の作り方』
  • 『もう、怒らない』 小池龍之介

    私も以前、職場の人間にイライラしていました。 その人は連絡なしで仕様を変更して他人に迷惑をかけたり、勝手にを借りていったり、でも仕事はできたので上司に気に入られ、常に自分のペースで仕事をすすめていました。 自分でも、気にしない方がいい、ということはわかっているのです。でも、どうしても怒りを納めることができず、結局胃にポリープをつくるハメに… その職場を去ってから「どうして自分は怒りを抑えることができなかったのか?」、「怒りがずっと継続してしまうのはなぜなのか?」と考えるようになりました。 「もう、怒らない」では、怒り心のメカニズムを、仏教の教えと心理学を用いて簡単に解説してくれています。 人が怒り、怒りを持続させてしまうのは、怒ることでいっときストレスや苦痛から開放されるような快感を感じるからなのだそうです。 しかし、その時はよくても怒りで発生する不快物質によって徐々に体を傷つけられてゆ

    『もう、怒らない』 小池龍之介
  • 『偉大なる、しゅららぼん』 万城目 学

    偉大なる、しゅららぼん あらすじ 琵琶湖から不思議な力を授かる日出涼介は、力の抑制を学ぶため、高校入学を期に湖西にある日出家に居候することに。日出家には、涼介と同じ年の総領息子・淡十郎がいるが、城に住むほどの資産家の長男だけにやることが殿様気質。 おまけに、日出家の積年の宿敵・棗家の息子・広海までも同じクラスで、入学早々、お互いの力をぶつけ合ってしまい、波乱含みの高校生活がはじまる。 マイペースな淡十郎に振り回されながらも、徐々に湖西での生活に慣れていく涼介だったが、ある時、元領主の末裔である涼介の高校の校長から「琵琶湖周辺から一族全員、出ていくように」と勧告される。両家の力をあわせもつ校長は、淡十郎の父親と、棗の家族の時を止め、意識を奪う。 涼介、淡十郎、清子、そして仇敵である棗とも協力し、校長と戦う決意をする。 果たして校長の目的とは?しゅららぼんとはなんなのか? 個性的な登場人物

    『偉大なる、しゅららぼん』 万城目 学
  • 『パーマネント神喜劇』万城目 学

    人間くさい神さまたち まずこの表紙のインパクトたるや…。この大阪の街で飲んだくれていそうな太ったおっちゃんが実は縁結びの神。そして裏表紙の七三スーツのサラリーマン風の男性も神さまです。 確かに日には八百万(やおよろず)も神さまいるのだから、中にはこんな神さまもいるかもしれません。 神さまたちも、現代人のニーズに合わせるため、いつまでも弥生時代衣装に「みずら髪」ではいられないのでしょう。 おっちゃん神は縁結びの神さまなんだけど、神さまヒエラルキーでいえば下っぱ。 そのため、上位神からのノルマ(縁結びの成功率とか)に苦しんだり、別の神社(芸能)でパートタイムをしたり、神様仲間に仕事の愚痴をこぼしたり。神さまなのに人間臭い。 けれどそんな人間臭い神さまが、私は大好きです。遠くの大きな存在よりも、近くのおっちゃんの方がお願いごともしやすいですし。 神と人の絆 最終章『パーマネント神喜劇』では、人

    『パーマネント神喜劇』万城目 学
  • 『彼らが本気で編むときは』 荻上直子 百瀬しのぶ

    『彼らが気で編む時は』あらすじ 小学五年生のトモは母親とふたり暮らし。しかし、母親のヒロミはトモに構わず、恋人ができるとトモのことを置いてでていってしまう。今回も母親に置いて行かれたトモは、叔父のマキオのもとへ。 しかし、そこにはマキオと暮らす恋人、リンコがいたが、リンコは元は男性だった女性。 トモは最初は驚いたものの、料理上手なリンコに料理を作ってもらったり、髪の毛を編んでもらったり、時に喧嘩もしながら3人は徐々に仲良くなっていった。 しかし、やがて、3人の生活も、ヒロミが帰ってきたことで終わりをむかえてしまう… 編み物の力 リンコは 『すっげー悔しかったこととか、死ぬほど悲しかったりすることを、全部チャラにする。』 といって、辛いことがあると編み物をします。 目の前の手をひたすら動かすことで、嫌なことを忘れられる。編み物は、そんな癒やしの効果があるんです。 東日大震災後、被災地で仕

    『彼らが本気で編むときは』 荻上直子 百瀬しのぶ
  • 『星間商事株式会社 社史編纂室』 三浦しをん

    『星間商事株式会社 社史編纂室』あらすじ そんな「謎」の社史編纂室を舞台にした「星間商事株式会社社史編纂室」です。 キーワードは「社史編纂室」「会社の過去の不正を暴く」「腐女子」。 一見、脈略のないこれらの要素が、どうやってつながっていくかというと… 主人公の幸代は「腐女子」で、同級生3人で同人活動を続けている。 社編は同人活動に最適な閑職のため自ら志願してきた。他のメンバーも失敗や左遷で部署を異動になった人ばかり。 ある日、会社でイベント用にコピーをしていたBL小説を課長に見られてしまう。その日から社史編纂の裏の目的である会社が過去に行った不正を暴く作業に巻き込まれることになる。 星間商事は過去、東南アジアの小国・サリメニでの受注工事に関して、伏せておきたい事実があった。 次々と明かされる過去。謎の原稿用紙… はたして幸代は過去の真相に迫れるのか? 腐女子のリアルな日常 同時に間近に迫っ

    『星間商事株式会社 社史編纂室』 三浦しをん
  • 『銀河鉄道の父』門井慶喜

    家長制度と父の愛 現代では親はただ子どもを愛し、見守ればればいいのです。しかし、宮沢賢治が生きた時代は「個人」より「家」が重要視されました。 家族は「家」を存続させるためのパーツにすぎず、家長である父親の最大の仕事は「家」を次の世代に渡すことです。 しかし、政次郎さんは賢治への父性愛ゆえに、時にそのルールを踏み外します。賢治が病気になると家長がやらない看病を買って出たり、我が身を犠牲にしても賢治を守ろうとします。 「家長」の責任と父親としての愛に葛藤する政次郎さんと、父の愛を知りつつも、自分の進むべき道を模索し、時に反発してみせる賢治。 二人の視点が交互に描かれ、この不器用な親子の愛と葛藤が伝わってきます。 そして最愛の妹・トシの死を経験して、宮沢賢治は作家となっていきました。トシさんは、賢治の、いろいろな意味で運命の人だったんだな…。 賢治に作家になるようすすめたり、最後、彼女は死ですら

    『銀河鉄道の父』門井慶喜
  • 『兄のトランク』宮澤清六

    家族から見た宮沢賢治を知りたい人は『兄のトランク』をおすすめします。 『兄のトランク』は、宮沢賢治の実弟、宮澤清六さんによる随筆。兄・宮沢賢治の思い出と、賢治の作品のこと、交流のあった彫刻家で詩人の高村光太郎のことなどが綴られています。 さすが宮沢賢治の弟というべきか、文章も描写も物語のようです。 賢治の物語のような描写 『曠野の饗宴』という話では、清六氏が軍に入隊していた時、賢治が面会に来た思い出です。その情景の描写がまるで賢治の物語のようなのです。 「やあ。」と云って頭を下げると、兄もうれしそうに「やあ。」と、麦藁帽子を取った。 そのあと二人は芝生の上でピーナッツやパン、ぶどう酒の饗宴をしたそうです。 当に、物語に出てきそうなワンシーン… この前の文章でも、宮沢賢治は小高い丘にたち、逆光の中で行軍を見つめている描写があって、ここもまた映像が浮かぶのです。物語のようなのです。

    『兄のトランク』宮澤清六
  • 『プリンセス・トヨトミ』 万城目 学

    登場人物の伏線 登場人物はそれぞれ豊臣家にゆかりの人々の名前がつけられています。 「プリンセス」である茶子は茶々(淀君)で苗字の「橋場」は「羽柴」、豊臣秀吉の旧姓です。 「自分が起こした事件が、後々何を引き起こすかについて無自覚」という茶子の性格も淀君っぽいですね。 幼なじみの「大輔」は真田幸村の息子で最後まで豊臣家の一族につき従った人物。一方、会計監査院側は「松平」は徳川の旧姓で「鳥居」は家康の家臣、鳥居元忠かな。 そして、「旭」は豊臣秀吉の妹で家康に嫁した女性。徳川側にいながらも、もとは豊臣側という旭の立ち位置を考えると、「プリンセス・トヨトミ」での旭・ゲーンズブールの役割にぴったりな名前だと思います。 歴史と虚構の塩梅が絶妙 最初、「会計検査院」というお堅い国の機関と、とある大阪の中学校。一見、何の関連もない出来事がどう結びつくのか不思議だったのですが、見事に糸が繋がっていきました。

    『プリンセス・トヨトミ』 万城目 学
  • 『高原王記』 仁木英之

    「僕僕先生」で美少女仙人と唐時代のニート青年との冒険を描いた仁木英之さんによる、架空の王国を舞台にしたファンタジー小説「高原王記」。 高原王記 あらすじ 高原の国々(三リン国)を妖魔から守る最高の戦士は「英雄」とよばれた。英雄は山の精霊と盟約を結び命尽きるまでともに戦うことを誓う。 英雄タンラは厳しい修行の果てに精霊ジュンガと盟約を結ぶ。けれども、強大な力を持つ光の術師によって心を壊されてしまう。 高原に危機が迫る時、タンラに思いを寄せている竜人の娘・ファムは大総官王の啓示により大総官王の息子と婚姻し、世界を救うとされる英雄を生むことになる。

    『高原王記』 仁木英之
  • 『沖で待つ』絲山秋子

    『沖で待つ』あらすじ 会社で気の置けない同期だった「私」と太っちゃんはある約束をする。それはどちらかが先に死んだらお互いのパソコンのハードディスクを破壊するというものだった。 その約束は思いがけず早く実現することになった。 太っちゃんが突然、事故で死んでしまった。「私」は、約束を果たすべく、前もって作った合鍵で太っちゃんの部屋に向かう。 同僚という関係 会社という組織でなければ成立しない関係。恋愛でもない、家族愛でもない、友情とも微妙にちがう。 しいて言えば同志、仲間みたいなものでしょうか。 相手にもよるでしょうが、同期に限らず会社の同僚というのは家族よりも長い時間を一緒にすごしているわけだから、家族とはまた違う種類の絆を結べるのかもしれません。 短編 勤労感謝の日 同時収録の「勤労感謝の日」は、近所のすすめで見合いをすることになった求職中の元総合職の女性の1日。 ムカつく相手との見合いを

    『沖で待つ』絲山秋子
  • 『探偵ガリレオ』 東野圭吾

    東野圭吾さんの原作『探偵ガリレオ』に登場する湯川先生は、ドラマほど変人ではありません。生真面目な女刑事・薫さんも出てきません。 原作では、大学の同期生の草薙刑事が、一見不可思議で説明のつかないような事件を湯川先生へ相談し、その「事件」を湯川先生が科学的な検証作業で解き明かしてゆきます。

    『探偵ガリレオ』 東野圭吾
  • 『食堂かたつむり』 小川 糸

    料理を通じて学ぶ生と死 料理を通じて生と死という厳粛なテーマを、やさしい料理田舎の美しい風景をベースに書かれていて、読んでいて「癒される」というよりは「考えさせられる」に近いお話でした。 終盤、かわいがっていた豚を主人公が自ら屠り、材にかえていく場面は厳粛で神聖な雰囲気さえ感じられます。 べるということは他の生物の命をいただくこと。 そんな当たり前なのに、忘れていた、あるいはフタをしてきた現実を改めて考えさせられる作品でした。 ただ、ストーリーが少し強引な部分もあるかなと。 私は料理が下手なせいか、ここまで料理に対して盲信的な主人公にいまいち共感できませんでした。 そして、なぜだかいきなり奇跡的に人々を救う料理を作れちゃうのも唐突でした。 堂はらくらく軌道に乗りますし、長い間、確執があった親子ってそんなに簡単に打ち解けないと思うのですが…。

    『食堂かたつむり』 小川 糸
  • 『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

    『葉桜の季節に君を想うということ』 主人公・成瀬将虎と高校の後輩・キヨシは、キヨシの想い人・久世愛子からある依頼を受ける。高齢者を対象にした詐欺「蓬莱倶楽部」の調査と、それに関わった身内の死の真相を。 そんな時、成瀬は偶然駅で自殺を図ろうとした麻宮さくらと運命的な出会いをする。 二人の恋の行方、「蓬莱倶楽部」の詐欺によって人生を狂わせる老人たち。そこに成瀬の過去が絡み合い、事件は意外な方向へと進んでいく… あ~!、やられた~! 最終章を読み終えて、思わずあ~、やられた~!って思いましたね。 『葉桜の季節に君を想うということ』は「どんでん返し」がすばらしいミステリとして紹介されいました。だから、警戒しつつ読んでいたのですが、まさかこうくるとは。 言われてみれば構成や登場人物たちの言動に「ひっかかり」は感じていたのです。でも、最後の最後で実にスムーズにひっくり返されました。 いかに自分の感覚が

    『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午
  • 『メロディ・フェア』宮下 奈都

    普通の人々の、まいにち 毎日を一生懸命生きながらも、コンプレックスや人間関係に悩んだりする日々を送る結乃。読者である私たちと等身大な感じがして好感がもてます。 美容カウンターに嫁のグチをこぼし来るだけのおばさんとか、実際にいそうです。 でも、結乃はそんなおばさんの話を聞いてあげて、少しでもきれいにしてあげたいと思うんですね。 そして、結乃の努力が身を結び、おばさんは忌の際の亭主を送るために口紅を買いにきます。 私はこのエピソード、とても好きです。 メイクが得意ではない私は、ビューティーアドバイザーの人って怖い印象があります。 昔、強引なセールスで売りつけられた過去があるので、高い化粧品を売りつけられるんじゃないか… と思ってしまうのです。 でも結乃は、メイクで相手をキレイに幸せにすることを目標にしています。 ビューティーアドバイザーってそんな思いで仕事をしているんですね。そう思うと、今まで

    『メロディ・フェア』宮下 奈都
  • 『群ようこの良品カタログ』群 ようこ

    「群ようこの良品カタログ」では、シンプルで使い勝手のよい「良品」を写真とエッセイで紹介しているカタログです。 作者は「かもめ堂」の群ようこさん。群さんが選んだ日常で使う飽きのこない生活雑貨。 でも、普通のカタログと違って上品。そして、あたりまえだけど広告っぽくないのも魅力です。 フィンランドの器メーカー・イッタラ ティーマの白い器など、「かもめ堂」の世界のような雑貨が取り上げられています。 ビルケンシュトックは「腰痛への負担を減らす」として紹介されていました。私はビルケンシュトックにはサンダルのイメージしか知らなかったのでちょっと驚き。 先の丸まったかたちのアナポリスがかわいいです。私もちょっと腰が弱いので、ビルケンシュトック試してみました。歩きやすくて気に入っています。 がすり減ったり、ちょっと傷がついたとしても、ビルケンシュトックでは修理にも対応してくれるので長く使い続け

    『群ようこの良品カタログ』群 ようこ
  • 『お父さんと伊藤さん』 中澤 日菜子

    取扱注意の父親 彩のようなアラサー世代以上の「お父さん」は、なにかと取り扱いが難しい世代です。彩と伊藤さんの生活や仕事についても、お父さんの価値観からすると、彩たちの生活も最初は「普通ではない=よくない」こととして捉えています。 この世代の「お父さん」は、自分の価値観と子ども世代の価値観、世間とのギャップがうまく埋められないし、伝える方法が下手なんでしょうね。 彩のお父さんも、家族に対してだけは甘えから、威張ったり、説教をしたりするのですが、家族のクッション役だったお母さんがなくなると、当然、子どもたちには反発されてしまいます。 彩の家に来ても当初は伊藤さんと顔を合わすのが嫌で、部屋に引きこもったり、ぶらりとどこかへでかけたりして彩をやきもきさせます。 やがて彩は、父が兄夫婦と同居できなくなった、「当の理由」を知ることになるのですが…。

    『お父さんと伊藤さん』 中澤 日菜子
  • 『僕僕先生』 仁木英之

    僕僕先生 あらすじ 物語は唐の時代。都から遠く離れた光州に、王弁という若者がおりました。裕福な父親のおかげで働く事もせず、ただのんびりと日々を送っている。 ま、いまでいうニート青年です。 彼の父親は元県令。引退した今では不老長寿に憧れ、近隣の黄土山に住み着いた仙人と縁を結ぶため 王弁に供物を届けさせます。 黄土山にたどり着いた王弁を待っていたのは、仙人のイメージとはかけ離れた美少女。 彼女は「僕僕」と名乗り、自分が黄土山に住まう仙人だといいます。 やがて王弁は少女仙人・僕僕に従い、あこがれていた旅に出ることになります。しかし、僕僕先生のやることですから、王弁は様々なところへ連れて行かれてしまいます。 皇帝の宮殿から、伝説の神・帝江のいる世界まで旅をしていくのです。 僕僕先生、仙人なのに温泉ではしゃいだり、王弁をからかったりするおちゃめな部分と、困っている人を助けたいという使命感をあわせもつ

    『僕僕先生』 仁木英之
  • 『深海のパイロット』藤崎 慎吾、田代 省三、藤岡 換太郎

    深海のパイロットは、宇宙パイロットよりも貴少な存在です。しかし、宇宙よりも注目が集まらないので知る人ぞ知るフロンティアなのです。 『深海のパイロット』は、有川浩先生の小説「海の底」で、参考文献として巻末に挙げられていたです。 通常、こういった専門書は、専門用語だらけでおもしろくないものです。でも、このでは、専門用語よりもわかりやすいことばで書かれています。 そのため、私のような一般人にも読みやすい内容でした。

    『深海のパイロット』藤崎 慎吾、田代 省三、藤岡 換太郎
  • 『三谷幸喜のありふれた生活」三谷幸喜

    「愉快ではない」脚家の愉快な日常 三谷さんはいつも最初の書き出しに、現在どんな仕事に携わっているか、どんな人と会ったのかなどを1行くらいで書き、そこからその事柄の説明が続きます。 そこまではなんとなく理解できるものの、そこから先は面白さに目がくらみ、気が付くと最後まで読みきってしまうのです。 だって記念すべき第1回の見出しからしてこれですよ。 「僕は愉快な人間ではない」 愉快ではないといいつつも、彼の周りには引き寄せられるように、面白いことがおこります。 不燃物のゴミ捨てのタイミングを逃がし、奥さんにばれるのを恐れて自分の部屋に次の収集日までゴミを隠しておいたり、海外旅行でホテル火災に巻き込まれそうになったり。 このエッセイを冷静に文章だけ追っていくのは不可能に近い。 イギリスでのホテル火災の様子は、当時の奥さま・小林聡美さんもエッセイで書いてます。夫とでは同じ事件も視点が微妙に違うの

    『三谷幸喜のありふれた生活」三谷幸喜
  • 『つくもがみ貸します』 畠中恵

    『つくもがみ貸します』あらすじ つくもがみとは、百年を経て大切にされた器物に魂が宿り妖力をもった妖(あやかし)のこと。 人間とつくもがみはそれぞれ相手の存在を認識しながらも一線を越える事はない。つくもがみたちは仲間とのおしゃべりを2人に聞かれても知らん顔を決め込んでいる。 お紅と清二も最初は気味悪がっていたのだが、物を貸さなければ、小さな店ではべていけない。 つくもがみたちも、仲間と引き離されてはつまらないのでしぶしぶと貸し出される。 そんなわけで、つくもがみと人間との奇妙な共同生活が続いてゆくのだが、つくもがみたちは貸し出された先の話を聞き込んでは店で仲間に聞かせるため、それが時に様々な事件の糸口になってゆく。 特にお紅は「蘇芳」という銘の香炉を探していて、どうやら「蘇芳」はお紅の過去に絡んでいるらしいのだが… 個性的な「つくもがみ」たち 同じく妖(あやかし)が登場する畠中さんのしゃば

    『つくもがみ貸します』 畠中恵
  • 『京大芸人』菅広文

    京大卒の芸人・ロザン宇治原さん。高学歴芸人としてクイズ番組で圧倒的な回答力を誇っています。そんな宇治原さんを主役に相方・菅広文さんが書いた小説が「京大芸人」です。 宇治原さん主役といっても、宇治原さんを観察している菅さん視点で話は進みます。二人の出会いから学生時代の話、「芸人になるため」の宇治原さんの京大受験。 ロザンの青春時代と受験、芸人になるための戦いの日々が描かれています。 さすがは高学歴芸人さん。文章にリズムがあって、するすると読みやすく、面白い小説に仕上がっています。

    『京大芸人』菅広文
  • 『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下 奈都

    ドリフターズリスト 「ドリフターズ」って「漂流者」って意味なんですね。どうもカトちゃんケンちゃんのイメージが強いけれど。 最初は嫌々リストを書き、リストの内容を実践していくあすわ。うち、今まで自分が見えなかったもの、見ようとしなかったものがなんなのか、そしてそれから自分は何をしたいのか。 そんな風に考えるようになります。 そんな時、ロッカさんに紹介された青空マーケットで同僚の郁ちゃんのが豆のスープの店を出しているのに出会います。 同僚の意外な顔に驚きつつ、郁ちゃんの豆料理に「なにか」のヒントを得たあすわ。自分にとっての大切な「豆」を探すことにします。 「リストにやりたいことを書く」っていうのは、頭の中にあったものをいっぺん出して整理できるので、仕事でも、プライベートでも使っています。 あすわもリストを書いていくうちに、だんだんと内容が具体的になっていきます。そのたび、生活の様子が変わってい

    『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下 奈都
  • 土産物ならぬ『いやげ物』とは - 日々の貼雑(ひびのはりまぜ)レトロと旅とおもしろ画像

    土産物ならぬ『いやげ物』とは 読書感想文 土産物といやげ物、似ているようでぜんぜん違うシロモノです。いわゆる。もらって困る土産物が「いやげ物」です。 私は旅で見つけたヘンテコなお土産は、面白がって写真に撮るのがせいぜいなのですが、みうらじゅん氏は違います。「誰がこんなもん買うわけ?」と思うようなお土産を、あえてコレクションされています。 いやげ物とは そんな、もらったら嬉しくない土産物の「いやげ物」。 黒字の布に極彩色のペイントがほどこされた掛け軸ならぬ「ヘンジク」や、地元の名物や格言がプリントされたフタつき湯呑「ユノミン」、海辺でよく見る貝殻細工のキャラクター(プリ貝)など、どれも「買いたくないし、もらいたくない!」と思うものばかり。 私が実際に見つけた旅の(ヘンテコな)お土産

    土産物ならぬ『いやげ物』とは - 日々の貼雑(ひびのはりまぜ)レトロと旅とおもしろ画像
  • 旅の(ヘンテコな)お土産 - 日々の貼雑(ひびのはりまぜ)レトロと旅とおもしろ画像

    旅の(ヘンテコな)お土産 小さな旅 お土産ってレトロで時々ヘンテコなデザインのものがありますよね。昔かrあデザインが変わらない、レトロデザインのお土産が大好きでよく写真を撮っています。 地域色あふれるお土産 お土産の楽しみは「その地でしか買えないもの」をみつけることです。その土地独特のお土産や名産は、みるだけで旅の気分が盛りあがります。 ケロリン桶と富山の薬 レトロお土産 古都鎌倉サブレーとジャンボマックス

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  • 『ビオレタ』寺地 はるな

    『ビオレタ』あらすじ 婚約者に突然別れを告げられ、雨の中泣いていた妙は、ドーベルマンのような印象の女性・菫さんに「道端で泣くのはやめなさい」と、半ば強引に引きずられ、そのまま彼女の店・ビオレタで働くことになった。 妙は、取引のあるボタン屋、千歳さんと「とりあえず」つきあうことにした。でも、実は千歳さんは菫さんの元夫であり、菫さんの息子・蓮太郎くんの父親でもある。 妙は複雑な心をもちつつも「とりあえず」の日々をおくることにする。 ビオレタは、菫さんがつくる美しい雑貨と、あと、風変わりな「棺桶」を置いている。時々、お客さんが来てはなにか自分にとって埋葬したいものを入れる「棺桶」を買い求め、菫さんがそれを庭に埋める。 けれど、菫さんの部屋には埋葬されない「棺桶」が置いてあった。それは彼女の罪の証らしい。

    『ビオレタ』寺地 はるな
  • 『千円贅沢』中野翠

    千円で買える、ちょっと贅沢な雑貨たち 特に必要ってわけじゃないけれど、生活が楽しくなる雑貨があれば、贅沢な気分になれるかもしれません。中野翠さんの「千円贅沢」は、そんなちょっと贅沢になれる品々が紹介されたエッセイです。 著名人の生活雑貨紹介エッセイは楽しいものです。特に、セレブっぽくなくて値段も手頃なものが出てくるは読んでいて楽しい。 なんだか自分も店をめぐって、雑貨をさがしている気分になれます。また「こんな商品があったんだ」と、新しい発見もあり、読んでいて楽しいです。 飾るだけで楽しいジェムストーン宝石鉱物標 Gemstones25。欧米の学校でつかわれているような、おしゃれなクリップボード。 日常をちょっと豊かにしてくれる雑貨たち。こういうのが当の贅沢なのかもしれないなあ。 クリップボード オールドスクール。昔のアメリカの高校生が使っていそう。大きめのクリップのデザインもレトロで

    『千円贅沢』中野翠
  • 『小さなピスケのはじめての旅』 二木 真希子

    『小さなピスケのはじめての旅』あらすじ ねずみに似たジュムというの女の子・ピスケは親元を離れ、自分の家を探す旅に出ます。 「木や川に、いいよっていってもらったら、そこに住みなさい」 お父さんからこう言われ、ピスケは旅の途中で気に入った場所を見つけると、住んでもいいか聞いてみます。 けれども、居心地のいい場所みつけても街は定員オーバー。岩穴は風が強くて住むことができません。 やがて、川のそばに快適住まいをみつけたものの、お父さんから言われた言葉を忘れてしまい… 自分の居場所をさがす旅 子どもが独立して自分の居場所を探す物語は、ジブリの「魔女の宅急便」を思い出します。 「魔女の宅急便」では、すぐに住まいと仕事がみつかり、冒険が始まりました。でも、『小さなピスケのはじめてのたび』では、住まいを見つけるまでが冒険となっています。 そして、「住む場所を決めるとき、きちんと自然に許可を住まないと、しっ

    『小さなピスケのはじめての旅』 二木 真希子
  • 『おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸』楊逸

    文化大革命と生活 ハルビンで育った楊逸さんですが、文化大革命中は「下放」で移転を余儀なくされます。 「下放」とは、文革当時、政府が都会の知識人に対し「農村から学べ」と、無理やり地方に強制移住させた政策。 下放以前はお正月に餃子をつくったり、アイスキャンデーを買ったり。貧しいながらも豊かな生活だったそうです。けれども、文革中、農村ではそんなものはまったく手に入りませんでした。 油も足りないので燃料用の油で調理をしたこともあり、過酷な生活だったのだとか。 そんな厳しい時代の事も、楊逸さんの文章にかかると、どの料理おいしそうなんです。 ヒマワリの種やラードで作ったパイ状のお菓子、ロシア人がつくるパン、白菜の漬物など。 そして日人の私でも何故かしら懐かしい気分になります。 「」からみた中国 中国が今、これほど発展したのは、昔ひもじさを感じたことがあるからかもしれないな。と感じました。日

    『おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸』楊逸
  • 『金魚生活』 楊 逸

    「金魚生活」 あらすじ 主人公の玉玲はレストランで働いている。仕事は金魚の世話。中国では金魚は「ジンユ」、「金余」と発音が同じで、縁起のものとして扱われている。 夫を亡くした寂しさから不眠症に陥った玉玲。そんな彼女を救ったのは店から譲り受けた金魚・黒宝と、不器用で武骨なむかしなじみの周彬だった。 周彬の愛情にとまどいながらも彼と同棲することになる玉玲。 やがて玉玲は日に住む娘・珊々の出産の手伝いで日へ。言葉も通じず、物価の高い日の生活にとまどう日々を送る。 そんなとき、娘から「日で再婚して、日に住まないか」と提案される。周彬のことを娘に話せないまま、日人と見合いをすることに。 やぼったい同棲相手との生活と、日で再婚して娘や孫の近くで暮らす生活。その二つで思い悩む玉玲は…。 普通の中国の人々 あまり知ることのない、中国の人々の生活や心情が描かれていて興味深かったです。 「無問題

    『金魚生活』 楊 逸