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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (93)

  • 異世界からの”帰還後に”苦悩を抱き続ける少女たち──『不思議の国の少女たち』 - 基本読書

    不思議の国の少女たち (創元推理文庫) 作者: ショーニン・マグワイア,原島文世出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『不思議の国の少女たち』とは不思議な題名だが、読み始めてすぐに納得がいった。これは「不思議の国」や「ナルニア国」といったファンタジックな世界から”帰還した後”の少年少女たちが集まる全寮制の学校での物語なのだ。子供たちは異世界で大冒険を成し遂げた後、さまざまな理由によって元の世界へと帰還する。そして、その時の経験を大人たちに語るが、まずもってその内容が正しく理解されることはない。 大人からすればそれは子供にありがちな幻想的な誇大妄想、あるいは何らかの理由によって家出した時の、精神的トラウマによるショック症状にしか捉えられないからだ。そうした子供たちを救うために、学校は存在する。『入学するかもしれない子どもたちにと

    異世界からの”帰還後に”苦悩を抱き続ける少女たち──『不思議の国の少女たち』 - 基本読書
  • 早川書房の電子書籍「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する2018年版 - 基本読書

    去年も早川書房は「海外SFセール」をやっていたのだけれども、今年もやりはじめたようなので個人的おすすめを紹介します。今回も大体半額になっている! お得! しかもシリーズ物が多くて素晴らしい。とくにセール対象が代わり映えしないようなら前回の記事を貼っつけて終わりにすりゃあいいかなぐらいに思っていたのだけれども、今年に入ってからの新刊も大量に入っているから一から書き直すぞー! huyukiitoichi.hatenadiary.jp 前回セール対象だったやつは今回もおおむね&僕がオススメしたやつは前回の記事を読んでね。書き手のバックボーンとして、現在雑誌のSFマガジンで海外SFレビューを担当しているので、この3年ぐらいに出た海外SF新刊は全部読んでます。 あと、載せ忘れていたけれど一覧はこちら https://www.hayakawabooks.com/n/n3b549434cf3f ざっと紹

    早川書房の電子書籍「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する2018年版 - 基本読書
  • デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』 - 基本読書

    ランドスケープと夏の定理 (創元日SF叢書) 作者: 高島雄哉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る書『ランドスケープと夏の定理』は第5回創元SF短編賞を受賞した高島雄哉の、受賞作を端緒とする3編の連作短編集にして、単行のデビュー作になる。その作風を一言でいえばキャラ萌えが追加されたグレッグ・イーガン(いや、イーガン作品のキャラに萌えないってわけじゃないですよ!)、日作家でいうならば小松左京みたいなもんで、ちゃくちゃおもしろい。ぜんぜんデビュー作って感じじゃない。 21世紀後半を舞台に、22歳で教授になった天才物理学者の姉と、姉には及ばないものの優秀な弟が、世界を激変させる知性に関する3つの新しい定理を解き明かしていく──と、ざっくり表現すればそんな話になる。第一作「ランドスケープと夏の定理」では、”すべての

    デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』 - 基本読書
  • 『ストーナー』の著者による、恐ろしいほどに美しい物語──『ブッチャーズ・クロッシング』 - 基本読書

    ブッチャーズ・クロッシング 作者: ジョン・ウィリアムズ,布施由紀子出版社/メーカー: 作品社発売日: 2018/02/26メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る『ストーナー』が”再発見”されたジョン・ウィリアムズの第二作目がこの『ブッチャーズ・クロッシング』である。『ストーナー』は農家の息子だったウィリアム・ストーナーが大学へ進み、文学に出会い、一生を終えるまでの物語だが、これを15年に読み終えてから僕はこの作品を人に薦めまくっていた。薦めまくっていたというか、プレゼントするような機会があった場合、迷わずこのを渡していたのである。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp それは単純に、この『ストーナー』という物語がおもしろいからだし、同時に、失敗の多い、妥協と諦念に彩られ、しかしささやかな達成も訪れる、複雑な陰影を持ったストーナーの人生には、読む

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  • 共感によって繋がった"悪の勢力"vs賄賂も脅迫も通用しない選りすぐりの"善の勢力"──『マルドゥック・アノニマス』 - 基本読書

    能力者同士の”勢力”間の争いを描いてきた『マルドゥック・アノニマス』もついに第三巻。一巻も二巻もドチャクソおもしろかったけれども、三巻はその遥か上をいく面白さだ。二巻ですでにギア・フルスロットルだと思っていたが、あれはまだまだ序の口であった。三巻に至っては、アホほどおもしれえ、なんだこれはなんだこれは……と呆然としながら読み進めてしまった。おもしろすぎて頭痛がしてくるぐらいだ。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp この『マルドゥック・アノニマス』については、すでに『マルドゥック・スクランブル』全三巻、『マルドゥック・ヴェロシティ』全三巻の冊数を超えていくことがもう確定しているわけだけれども、現時点ですでに、冲方丁のすべての作品を合わせた中でも最高傑作になるんじゃなかろうかと期待してしまう(いや、アニメ脚ゲームシナリオあるしシュピーゲル・シリーズもあるし、”最高”を

    共感によって繋がった"悪の勢力"vs賄賂も脅迫も通用しない選りすぐりの"善の勢力"──『マルドゥック・アノニマス』 - 基本読書
  • SFの醍醐味がつまったSFコミック短篇集──『無限大の日々』 - 基本読書

    無限大の日々 作者: 八木ナガハル出版社/メーカー: 駒草出版発売日: 2018/02/28メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る著者八木ナガハルがコミケやコミティアで発表したオリジナルSF漫画を集めたこの一冊。SF物で一巻完結という時点で珍しいが、その中身は漫画という表現形式ならではの壮大なSFアイディア/光景をみせてくれる、SFとしての醍醐味がたんまり詰まった短編集だ。軌道衛星、何種類もの軌道エレベータ、昆虫型の異生物、機械知性に自由意志問題──といったいくつものネタを、守備範囲が海外SF小説メインのハードSF者と自己紹介する著者が調理していくので、それはまあおもしろいわな。 各作品をざっと紹介する 当は絵、ヴィジョン、見せ方をそのまま貼っつけてお見せしたいところだがそれは無理なので全八篇の収録作を順番に紹介していこう。まず最初に収録されているのは、別々の惑星で同じ

    SFの醍醐味がつまったSFコミック短篇集──『無限大の日々』 - 基本読書
  • 歌によって駆動する船☓星間大戦なスペース・オペラ──『スターシップ・イレヴン』 - 基本読書

    スターシップ・イレヴン〈上〉 (創元SF文庫) 作者: S・K・ダンストール,Kanehira K,三角和代出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/02/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るスターシップ・イレヴン〈下〉 (創元SF文庫) 作者: S・K・ダンストール,Kanehira K,三角和代出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/02/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る何者かによりもたらされた謎のエネルギィ源である”ライン”。人類はそれが何なのかといったことを理解はせずとも宇宙船の動力源とすることに成功し、”ライン”のお世話をすることのできる特殊な才能を持った一部の人々を”ラインズマン”と呼びあらわし、銀河系全域へと広がっていった。そんな世界を舞台とした作は、ラインに対し歌で語りかけ、それを生き物のように捉えてコミュ

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  • 実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFなデビュー作──『最後にして最初のアイドル』 - 基本読書

    最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA) 作者: 草野原々,TNSK出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/01/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る著者自身によって、「実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSF」という長すぎてTwitterに流しにくい、ジャンルだかキャッチコピーだかを名付けられ世に送り出された「最後にして最初のアイドル」。 書はその中篇を表題作として、ガチャと宇宙の真理に到達する「エヴォリューションがーるず」、声優たちが殺し合いエーテルに満ちた宇宙をかけめぐる「暗黒声優」の計三を収録した、著者草野原々のデビュー作品集である。世に出た最初の作品である「最後にして最初のアイドル」はもともとラブライブの二次創作同人誌を改稿してハヤカワのSFコンテストに送ってきた問題作だ(ちなみに特別賞を受賞した)。*1 「

    実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFなデビュー作──『最後にして最初のアイドル』 - 基本読書
  • 人工知能本読みすぎて飽きたけどその中でも記憶に残っている本を紹介する - 基本読書

    この数年人工知能バブルかってぐらい人工知能関連が出まくっていて、最初の頃は律儀に一冊一冊読んでいたもんだが、だんだん飽きてきた(そりゃ読みまくってるんだからそうだ)。やれ人工知能仕事が奪われるだとか奪われない仕事はなんだとかの話は定番だが、定番すぎてそうそう新しい解釈が出てくるわけではない。消える仕事は消えるし、残る仕事の分野もだいたい明らかになってきている。 とはいえそれでも読んでいると「おお、これは視点が良いな」と思えるものもあり、そういうのは読んでいて楽しい。その書き手はやっぱり基的には専門的な知識を持っている人たちだ。認知ロボット工学者であったり、AI研究所に勤めていたり、機械学習の専門家だったりする。最後のはまた特殊事例といえるが、稿ではそうした人工知能飽きた僕の中で記憶に残っているをいくつか紹介してみようと思う。 まずは基的なところを教えてくれる一冊 シンギュラリ

    人工知能本読みすぎて飽きたけどその中でも記憶に残っている本を紹介する - 基本読書
  • 確かに長文を書くにはかなり良い──『考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ』 - 基本読書

    考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ 作者: 向井領治出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社発売日: 2016/03/18メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る書はScrivenerという執筆ツールを紹介した一冊である。ようはテキストエディタなので、そんなもの書ければなんでもいいやという人にはどうでもいいわけだが、なんでもよくないぜという人にはこれがなんでもよくないものなのである。毎日たくさん書いているとちょっとの使いづらさが作業効率に大きな悪影響を与えるものだし、視認性の悪さなどはそのまま出来上がるものの質にまで関わってくる。 この文章はScrivenerを使って書いているのだが、書を使って──というよりかは書が出版されるのを知って、こんなが出るぐらいだからさぞや良い(けど複雑な)ツールなのだろうと思って

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  • 「使命」ではなく職業的作家の「仕事」として──『作家の収支』 - 基本読書

    作家の収支 (幻冬舎新書) 作者: 森博嗣出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/11/28メディア: 新書この商品を含むブログを見る作家・森博嗣さんによる作家業における全体の収支を明かした一冊になる。そもそも、いくら儲かりましたぜげへへみたいな金儲けの話は品がないものだが、特にクリエイター系の職業だと忌避される傾向がある。個人的な推察だけど、ようは人気商売というか、ある種の幻想を売って買ってもらう仕事なので金にまつわる現実的な部分は白けさせる可能性があり、忌避されるのかもしれない。最近はライターや作家、翻訳家でも金の話をしてくれる人も増えているような気がするけれども。togetter.com 森博嗣さんは継続的にを出し続け、近年はアニメ化、ドラマ化が続く「売れている」方の作家であることから、「自慢のか」「作家全体ががっぽがっぽ儲かる職業だと思われる」なんていう非難があるのではな

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  • 文明がもたらした危機──『人体600万年史:科学が明かす進化・健康・疾病』 - 基本読書

    人体600万年史(上):科学が明かす進化・健康・疾病 作者: ダニエル・E・リーバーマン,塩原通緒出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/09/18メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る人体600万年史(下):科学が明かす進化・健康・疾病 作者: ダニエル・E・リーバーマン,塩原通緒出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/09/18メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る読み始める前はちょっと疑っていたんだけど、丹念に人体の歴史と文明の発展をおい、それが我々の身体にどのような利益と危険をもたらしたのかを解説してくれる良書だ。書は、人体がたどってきた歴史を「なぜ立ち上がったのか」「そもそも最初の人類は何か」「何がネアンデルタール絶滅させ、ホモ・サピエンスを生きながらえさせたのか」を根的に解き明かし、人体がたどってきた歴史が現在の文化とミス

    文明がもたらした危機──『人体600万年史:科学が明かす進化・健康・疾病』 - 基本読書
  • SFをもっと楽しむための科学ノンフィクションはこれだ! - 基本読書

    記事名そのまま。SFが好きなのに科学ノンフィクションを読んでない人をみると「現代の最先端科学なんて、どれもほとんどSFでめちゃくちゃ面白いのにもったいない!」と思う。こんなことを考えたのも昨日、オービタルクラウドを最近出したばかりのSFジャンルをメインに執筆している藤井太洋さんのASCII.jp:ITとともに生まれた産業革命に匹敵する質的な方法論 (1/4)|遠藤諭の『デジタルの、これからを聞く』 こんなインタビュー記事を読んだからだ。 藤井さんはデビュー作であるGene Mapperを含め、現代で可能な科学技術の延長線上に起こりえる地続きの未来描写が特徴的で、「今・ここにある技術の凄さ」が感じられるところが毎回凄いんだよなあとこれを読んでいて思い返していた。またそこで使われているアイディアは現代でもそのまま使えるものが多いし。技術的には現実が既にSFなのだ。 透明マントだって現実化して

    SFをもっと楽しむための科学ノンフィクションはこれだ! - 基本読書
    hobbiel55
    hobbiel55 2014/04/18