『ウイルスの意味論』という書名や『生命の定義を超えた存在』という副題からは、1980年代の日本のポストモダニズムの一群の書籍を連想させるが、本書の叙述は至って平易で、それでいて内容は最新のウイルス学までをカバーし、かつ、生命とは何かという難問を踏まえつつも、ウイルス学の基本をきちんとおさえている。中学・高校の教科書、あるいは副読本としてもよいもので、当然、一般人の読書としても有意義で楽しめる。カッパ・ブックスの一冊であってもよかったかもしれないが、いずれにせよ、生物学にとりわけ関心がない人でも、まずもって読んで損のない書籍である。というか、読んだほうがいい。 私はウイルス学が好きで、このブログでも過去にいくつか記事を書いてきた。ゆえに比較的最近の動向を知っているつもりでいたが、それでも抜けは多いものだと、本書を読みながら思う。そして、それは知識が不足していて恥じ入るというより、新しいことが