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ブックマーク / note.com/iovis_takahasius (13)

  • TVアニメ『アキバ冥途戦争』におけるアキバブームの刻印:メイドに関する偽史的想像力をどのように考えるべきか|髙橋優

    Twitterでの指摘を受けて、稿の文末に追記を加えました。 博徒の子分は理非を辨へずに、ひたすらに親方の指揮に服從する。 (柳田國男「親方子方」『定 柳田國男集 第十五巻』筑摩書房、1963年、390頁) 2022年12月に放送が終了したTVアニメ『アキバ冥途戦争』は、加藤智大による無差別殺傷事件(2008年6月8日)を生むような秋葉原の都市構造の変容を前提とした、マッチポンプ的な作品だった。 作は「萌えと暴力について」というキャッチコピーを引っ提げて、秋葉原でメイドとして働く女たちがヤクザ映画さながらの殺し合いを演じる様子を余すところなく描き出す。1999年の秋葉原を舞台に繰り広げられるのは、メイドカフェグループ間の血で血を洗う抗争とメイドカフェグループ内部の内紛だ。作において、秋葉原はメイドカフェグループの双璧をなすケダモノランドグループとメイドリアングループによって牛耳ら

    TVアニメ『アキバ冥途戦争』におけるアキバブームの刻印:メイドに関する偽史的想像力をどのように考えるべきか|髙橋優
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    honeybe 2023/04/05
  • 名作/迷作アニメを虚心坦懐に見る 第5回:『超時空要塞マクロス』|髙橋優

    はじめに 歌・可変戦闘機・三角関係――この三要素は、2022年に40周年を迎えたマクロスシリーズの「お約束」とみなされている。シリーズ第一作にあたる『超時空要塞マクロス』(1982~1983年、以下『マクロス』と略記)は、「お約束」の成立に先鞭をつけた色々な意味で伝説的な作品である。「色々な意味で」と含みを持たせたのは、『マクロス』がシナリオ・作画の両面において、諸手を挙げて褒められるような作品ではないからだ(そもそも諸手を挙げて褒められる作品などない、という指摘はさておき)。 アニメスタイル編集長の小黒祐一郎はコラム「アニメ様365日」において、『マクロス』は「立派なところはこの上なく立派だが、ダメなところは徹底してダメな作品」、「よくも悪くも、ムチャクチャなアニメ」だったと述懐している。 模型文化ライターのあさのまさひこも、アニメーション・特撮研究家の五十嵐浩司との共著のなかで、「昨今

    名作/迷作アニメを虚心坦懐に見る 第5回:『超時空要塞マクロス』|髙橋優
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    honeybe 2022/09/21
  • TVアニメ『86-エイティシックス-』における「高潔」の意義:インティマシー/インテグリティーの観点から|髙橋優

    はじめにインティマシーに動かされた社会は容易に、人種差別、民族中心主義、性差別、階級的エリート主義、狂信的排外主義などを合理的に正当化する結果に陥りうる。 (トマス・カスリス(衣笠正晃訳)『インティマシーあるいはインテグリティー: 哲学と文化的差異』法政大学出版局、2016年、227頁) ちょうど、東京では桜が満開を迎えている。桜の花をドイツ語でキルシュブリューテ(Kirschblüte)という。桜が美しい散り際を見せる時節に、TVアニメ『86-エイティシックス-』の最終回放送がずれ込んだのは面白い偶然だ。そのアニメは「キルシュブリューテ」というパーソナルネームを持つ少女を、戦場で無残に散らせたのだから。 作は2021年4月から6月にかけて第1期(前半11話)の放送が行われ、2021年10月からは第2期の放送が始まったが、「制作の都合」および「より良いクオリティで、第2クールのクライマッ

    TVアニメ『86-エイティシックス-』における「高潔」の意義:インティマシー/インテグリティーの観点から|髙橋優
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    honeybe 2022/04/22
  • 名作/迷作アニメを虚心坦懐に見る 第2回:『機動戦士Zガンダム』|髙橋優

    はじめに:『Z』に対する賛否両論について 『機動戦士Zゼータガンダム』(1985~1986年、以下『Z』と略称)は、放送直後から賛否両論のあった作品らしい。アニメスタイル編集長の小黒祐一郎はコラム「アニメ様365日」のなかで、次のように複雑な思いを吐露している。 『機動戦士Zガンダム』は年齢によって評価が分かれる作品だ。大雑把に分類すると、先のブームで『機動戦士ガンダム』第1作に触れたファンには否定派が多かったはずだし、『Zガンダム』で初めて『ガンダム』を観た人には肯定派が多いようだ。僕はこの作品を肯定できない。ただし、色々と複雑な思いもあり、「こんなのは『ガンダム』じゃないよ!」と頭ごなしに否定する事もできない。そのあたりが自分でももどかしい。 『Z』に対する当時の反応は、アニメ評論家の藤津亮太による「ドキュメントZガンダム」のなかで詳しく取り上げられている。藤津は『Z』が嫌悪感を抱かれ

    名作/迷作アニメを虚心坦懐に見る 第2回:『機動戦士Zガンダム』|髙橋優
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    honeybe 2022/03/22
  • TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』が曝け出す対立のメルトダウン:「沼地」のスクールアイドル・序論|髙橋優

    これらのツイートは、日のアニメが中国でも受け入れられているなどという単純な発信ではなく、中国のソフトパワーが日を席巻しているという同胞向けの広報として読むべきだろうが、いずれにせよ、作が現代の中国人の雰囲気や典型的性格を割と丁寧に写し取っているのは一面の真理ではあるだろう。可可は「~アル」「~ヨ」「~ネ」といった語尾を連発する従来のインチキ中国人キャラではない。可可は独特な「の」を操るという、日語を喋る中国人のリアルな質感を伝えている。たとえば、可可は第10話で「ムリです! 大切なラブライブの最初の課題ですよ! 二人よりポテンシャルが低いのこの人に任せるわけには……」と言うが、これは中国語では形容詞と名詞をつなぐ際に「的」が必要となることに起因する典型的な翻訳調の日語である。なお、キャストのLiyuuもツイッターではしばしば似たような「の」の使い方をしている。 ともあれ、作の真

    TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』が曝け出す対立のメルトダウン:「沼地」のスクールアイドル・序論|髙橋優
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    honeybe 2021/12/02
  • TVアニメ『かげきしょうじょ!!』が照らし出す「僕たち」の後ろめたさ:歌舞伎・アイドル文化の蠱毒を制するためのレッスン|髙橋優

    TVアニメ『かげきしょうじょ!!』が照らし出す「僕たち」の後ろめたさ:歌舞伎・アイドル文化の蠱毒を制するためのレッスン はじめにO, beware, my lord, of jealousy; It is the green-ey’d monster which doth mock The meat it feeds on. お気をつけなさい、将軍、嫉妬というやつに。 こいつは緑色の目をした怪物で、人の心を餌とし、 それをもてあそぶのです。 ――ウィリアム・シェイクスピア『オセロー』、第三幕第三場 (小田島雄志訳『シェイクスピア全集IV』白水社、1986年、275頁) 2021年9月に放送が終了したTVアニメ『かげきしょうじょ!!』は、宝塚音楽学校をモデルにした「紅こう華か歌劇音楽学校」を舞台として、「東大に並ぶ」とも言われる難関の入学試験を突破した100期生(予科生)の少女たちが繰り広

    TVアニメ『かげきしょうじょ!!』が照らし出す「僕たち」の後ろめたさ:歌舞伎・アイドル文化の蠱毒を制するためのレッスン|髙橋優
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    honeybe 2021/10/29
  • TVアニメ『月が導く異世界道中』が描く現代日本の前向きな諦め:「ブサイク」の異界と張り出した女性嫌悪|髙橋優

    2023年7月8日追記:過去に執筆した文章を読み返し、一部の表現に反省すべき箇所があったと判断したため、文に修正を加えました。) はじめに いつのころからだろうか――この世のほかに、もっと別なところに、自分を受け入れてくれる「場所」があるのではないか、というほのかな期待が生まれたのは。 疲れ切って帰路につくとき、ふと電車の窓を眺めていて「ここは私のいるところではないかもしれない」といった奇妙な気分に陥ることがある。今の生活に不満があるわけではない。だが、「ここではないどこか」へのあこがれは、いつも私の心のすきまにひそやかに入り込んでくるのだ。青臭い感情と、人はたぶん笑うだろう。 (田中貴子『鏡花と怪異』平凡社、2006年、137頁) 「俺は夜なんて駆けない 未来に賭ける」、「そうアタシは半人前 ブサイク ただ凡人/転生さえ願った業人」――「うっせぇわ」を手がけたシンガーソングライター・

    TVアニメ『月が導く異世界道中』が描く現代日本の前向きな諦め:「ブサイク」の異界と張り出した女性嫌悪|髙橋優
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    honeybe 2021/10/01
  • TVアニメ『弱キャラ友崎くん』が映し出す現代資本主義の袋小路:宇野常寛『ゼロ年代の想像力』と終わらない「自己啓発」を超えて|髙橋優

    TVアニメ『弱キャラ友崎くん』が映し出す現代資主義の袋小路:宇野常寛『ゼロ年代の想像力』と終わらない「自己啓発」を超えて はじめに資主義の終わりを想像するより世界の終わりを想像する方が簡単だ。 ――フレドリック・ジェイムソン「アメリカのユートピア」 (フレドリック・ジェイムソンほか著、スラヴォイ・ジジェク編(田尻芳樹/小澤央訳)『アメリカのユートピア:二重権力と国民皆兵制』書肆心水、2018年、13頁) 資主義を飼いならすことはできないし、資主義の外に出ることも決して容易ではない。2021年3月に放送が終了したTVアニメ『弱キャラ友崎くん』(以下『友崎くん』)は、そんなことを教えてくれる傑作である。 作の主人公・友崎文也は、友達も彼女もいない「陰キャ」で「ぼっち」の高校生だ。しかし、その裏の顔は家庭用格闘ゲーム「アタックファミリーズ」(通称「アタファミ」)のレート一位、日最高峰

    TVアニメ『弱キャラ友崎くん』が映し出す現代資本主義の袋小路:宇野常寛『ゼロ年代の想像力』と終わらない「自己啓発」を超えて|髙橋優
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    honeybe 2021/03/30
  • 『鬼滅の刃』鼎談企画 文学・思想編(長谷川晴生×藤崎剛人×髙橋優):文化の旅へ急がず焦らず参ろうか|髙橋優

    (2024年2月18日追記) 記事の剽窃が発覚しました。詳細はこちらの記事をご参照ください。 はじめに 前回鼎談(歴史編)に引き続き、ゲストを入れ替えて『鬼滅の刃』に関するオンライン鼎談を実施した。今回は「文学・思想編」と題して、文学・思想研究者の二人をお招きした。前回鼎談のテーゼを踏まえつつも、また別の着眼点から議論を尽くすことで、『鬼滅の刃』をさらに立体的に把握することが可能となった。私としても、切り口一つで作品の風景を一変させられる批評という営みの豊かさを再認識することができ、大いに刺激を受けたところである。以下では、歴史研究とはひと味もふた味も違う文学・思想研究の奥深さ、その一端が読者諸賢の眼前に広がることだろう。 参加者(敬称略) 長谷川晴生(はせがわ・はるお) 最近は「ヨーロッパの右翼に詳しい人」という扱いを受けているものの、人としてはドイツの文学と思想を学んでいるつもり。

    『鬼滅の刃』鼎談企画 文学・思想編(長谷川晴生×藤崎剛人×髙橋優):文化の旅へ急がず焦らず参ろうか|髙橋優
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    honeybe 2021/03/16
  • アジール・無縁・友誼線:TVアニメ『キミ戦』が掲げた平和の理想とその残響|髙橋優

    はじめに実際、文学・芸能・美術・宗教等々、人の魂をゆるがす文化は、みな、この「無縁」の場に生れ、「無縁」の人々によって担われているといってもよかろう。 (網野善彦『増補 無縁・公界・楽:日中世の自由と平和』平凡社ライブラリー、1996年、250頁) 2020年12月に放送が終了したTVアニメ『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』(通称『キミ戦』)は瀟洒な秀作であった。作は、高度に発達した機械文明を誇る帝国と、未知のエネルギーである「星霊」をその身に宿した魔女・魔人が治めるネビュリス皇庁が百年にわたる戦争を続ける世界で、両国の最高戦力たる二人が戦場でまみえ、志を同じくすることを知って、互いに惹かれ合う過程を描くファンタジー作品だ。 帝国軍の元最高位戦闘員・「黒鋼の後継」ことイスカと、ネビュリス皇庁の第2王女・「氷禍の魔女」ことアリスリーゼ(アリス)は、くだらない戦争を終わらせ

    アジール・無縁・友誼線:TVアニメ『キミ戦』が掲げた平和の理想とその残響|髙橋優
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    honeybe 2021/01/26
  • TVアニメ『魔王学院の不適合者』が拓く批判的思考の地平:「時下り」と「対」に注目して|髙橋優

    はじめに私は次第に理解しつつあった。将来に向かって航行するとは、どこか遠い彼方からの緻密な積み上げの延長線上において、という特別な仕方においてではあるが、今私がここにいる、その現実を引き受けることである、と。 (木庭顕「現代日法へのカタバシス」同『現代日法へのカタバシス』羽鳥書店、2011年、79頁) 2020年9月に放送が終了したTVアニメ『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』が出色の出来だ。作はそのタイトルが簡潔に示す通り、二千年後に転生した魔族の始祖、「暴虐の魔王」ことアノス・ヴォルディゴードが、平和に慣れて弱体化した子孫と衰退を極めた魔法を叩き直すという物語で、いわゆる「最強系主人公」の無双譚の一つとして世間の耳目を集めている。 作でヒロインの一人を演じる夏吉ゆうこも、ダ・ヴィンチニュースのインタビュー記事(2020年9月19日公開)の

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    honeybe 2020/10/27
  • TVアニメ『モンスター娘のお医者さん』が描き出す信頼・希望・愛の妙味:代替医療や優生思想を乗り越えるためにいま考えるべきこと|髙橋優

    TVアニメ『モンスター娘のお医者さん』が描き出す信頼・希望・愛の妙味:代替医療や優生思想を乗り越えるためにいま考えるべきこと はじめに神よ、信仰はわたしたちをあなたへと激励し、希望はわたしたちをあなたへと鼓舞し、愛はわたしたちをあなたへ結びつける。 ――アウグスティヌス『ソリロキア』、1.1.3 (清水正照訳『アウグスティヌス著作集 第一巻』第3版、教文館、1992年、333頁) モンスター娘というジャンルは若手/新人声優の花園(florilegium)である。先日最終回を迎えたTVアニメ『モンスター娘のお医者さん』も例に漏れず、異種族間の共存と連帯を描くことを通じて、信頼・希望・愛の美しい有り様を示した傑作声優アニメと言うことができる。稿は『モンスター娘のお医者さん』を声優アニメとして論ずることによって、医者という職業のあるべき姿と「信頼」の重要性を提示するものである。 最初にお断りし

    TVアニメ『モンスター娘のお医者さん』が描き出す信頼・希望・愛の妙味:代替医療や優生思想を乗り越えるためにいま考えるべきこと|髙橋優
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    honeybe 2020/09/29
  • 役者に求められる「知性」とはなにか:つるの剛士の外国人差別発言を契機に、自衛隊コラボアニメ『GATE』を振り返る|髙橋優

    役者に求められる「知性」とはなにか:つるの剛士の外国人差別発言を契機に、自衛隊コラボアニメ『GATE』を振り返る はじめに:2020年からの再定位 役者にはある種の知性が求められる。知性を欠いた役者(これを「痴性」の発露とでも呼べばよいだろうか)は、舞台の外でおぞましい醜態を晒すことになる。 醜態を晒し続けている役者の一人に、『ウルトラマンダイナ』で主役のアスカ・シンを務めたつるの剛士がいる。彼が「おバカタレント」として持て囃されたのも今は昔、現在はTwitterで無理筋の安倍政権擁護、ありがちな野党批判、差別発言などをひっきりなしに垂れ流すインスタント右翼(普通の日人ともいう)となってしまった。 彼はつい先日も、自身の畑のパクチーが盗難被害に遭ったことについて、外国人への憎悪を煽るような発言を繰り返しており(下掲記事を参照)、「愛すべきバカ」では済まない次元に足を踏み入れようとしている

    役者に求められる「知性」とはなにか:つるの剛士の外国人差別発言を契機に、自衛隊コラボアニメ『GATE』を振り返る|髙橋優
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    honeybe 2020/09/10
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