作曲家、矢代秋雄の音楽論集『オルフェオの死』を読んでいるのだが、すごく面白い。忌憚のない発言がどしどし出てくる。例えばアンドレ・ジョリヴェに対してなんか「はっきり言ってしまえば、大嫌いである。まず、私はこの人の顔が嫌いだ」と、冒頭からテンションが高い(笑)。 もう少し「冷静な」考察を記しておきたい。『ラヴェル考』というモーリス・ラヴェルについての論考だ。1957年11月号の「フィルハーモニー」に掲載された。 何よりドビュッシーとラヴェルの違い──「ラヴェルは、ドゥヴュッシーのとなりに座らせられた時に、最も、すわり心地が悪かったであろう」──が明快に述べられる。 ドビュッシーは偉大なる破壊主義者であった。が、ラヴェルは違う。チャイコフスキーのような、歌い出したくなるようなメロディがそこにある。リズムにしても、ドビュッシーのように「トランキライザーを飲みもせず」「ヒロポンを注射したり」もしなか