受賞式の折、交響楽振興財団の方々に連れられ、高層ビル林立する東京・赤坂の日本財団本部にご挨拶に伺ったのを、鮮明に憶えている。 その時、演奏会(コンクール本選会)を聴いて下さった財団職員の方から、 「私は作曲の事はわかりませんが、平野さんの曲だけ、他の作品と、何か違っていました」 という風に、声を掛けて頂いた。 最上位とはいえ、"作曲賞該当なし"という結果に大いに憤慨、かつ、内心烈しく疵ついていた当時の私は、その言葉にいたく励まされたのだった。 そう思い返してみると、これもまた「やわた市民音楽祭」を巡っての、奇なる縁の一つには違いない。 恩返しには足らずとも、日本財団のご関係の皆様の裡に、あの時コイツに賞をやって良かった、との想いが、チラとでも過ってくれたのならば冥利である。