『義公黄門仁徳録《ぎこうこうもんじんとくろく》』[江戸中後期成立か。呑産通人(呑産道人)作]巻二十七「下総国八幡宮藪を八幡知らずと申す事」 ※国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA) 新日本古典籍総合データベース 【原文】 両手を伸べて義公様を捕らへ、目より高く差し上げたり。 義行様も差し上げられながら、御刀を抜き給ひ、 「無礼な奴」 と仰せながら、切り付け給ひバ[給へバ]、其の儘《まゝ》取つて投げつけられしに、義行様、矢張《やは》り以前の薮の中に立ち給ひ、風の音のミ木霊《こだま》に残り、時刻も然《さ》のみ経ちたる躰《てい》にも非《あら》ず。 四方を見渡し給ひど[給へど]、只一面の薮にて、少しも怪しき事ハ無し。 此処《こゝ》に於《お》ゐて、初めて御心付き給ひ、 「此の薮ハ八百万神《やほよろづのかみ》住み給ふ、神の森なり。 後/\決して人の出入りも禁制致すべし」 と有つて、薮の外へ出給ひバ