いつも反芻(はんすう)してきた。 「キミ、それ自分で確かめたんか?」 5年前に亡くなった梅棹忠夫さんが国立民族学博物館(大阪府吹田市)の館長をしていたころ、月に1度、記者懇談会があった。博物館の行事予定や刊行物が紹介され、海外から戻った研究者の報告があった後、館長室に場を移して「梅棹ゼミ」が開講された。 と言っても、難しい学問の話ではない。もっぱら梅棹さんの放談である。午後5時を過ぎると、「もうええやろ」と酒が出ることもあった。「知の探検家」の謦咳(けいがい)に接することができるのだから、贅沢(ぜいたく)にして幸福な時間だった。 メモを取っていなかったのが残念だが、民族学者のフィールドワークと新聞記者の仕事は似ていると思った。だから大先輩からのアドバイスのように聞いた。 民博の小山修三名誉教授を聞き手にした「梅棹忠夫 語る」(日経プレミアシリーズ)にこんなくだりがある。 小山 (梅棹さんた