戦って、戦って、戦い抜いた。 いまにも潰えそうな地球という星に現れた一人の少年は、瞬くほどに眩しく短い時間で一人の男になった。奇跡があったとするならば、それこそが二度とはない奇跡であった。滅びを目前に控えた人々に希望をもたらした事実など、その軌跡にすぎないといっていい。 しかし忘れるなかれ。奇跡を手にした人間がその代償を支払わなかった結末など、この世界にかつて一度もなかったことを。 大人になった少年――白銀武が手放したものは大きかった。 成長の過程において彼が失ったものは、互いに背中を守りあい、互いに命を預けあうことのできる、血より濃い絆で結ばれた仲間たちの命。腕をもがれ脚を落とされた方が遥かに楽だといいきれる想像を絶する苦しみが、彼を無理やりに高みへと引き上げたのだ。 死が隣人よりも近くに潜むような狂った世界に生き延びた人々は、誰しもが彼と同じ苦痛に追い立てられて大人へとなっていく。 人