「くらやみの速さはどれくらい」 エリザベス・ムーン (アメリカ) <早川書房 単行本> 【Amazon】 すでに自閉症の幼児期での治療が可能になっている近未来、35歳のルウ・アレンデイルは自閉症の最後の世代だった。ルウは自閉症の社員として会社に勤め、週に一度はフェンシングの教室に通い、日曜日には教会に行くという穏やかな生活を過ごしていた。 ルウの持つ特殊な能力は仕事で充分に生かされている。同じ職場で働く自閉症の同僚仲間もいれば、親しくしている健常者もいる。相手の気持ちはわからないが、好きな女性もできた。もちろん、ときには挙動不審ととられて動揺することもあるが、すべてが順調といえた。しかし、新任の上司クレンショウは、ルウたちを自閉症治療の実験台になるよう申し渡してきた。 今の自分が気に入っているのに、どうして治療され、自分でない自分にならなければいけないのか。それとも、治療を受けるのは良いこ