E. O. Wilsonは,アリについての世界的権威であり,学問分野の統合を主張する巨人であり,70年代の社会生物学論争の一方の主人公(というか被害者)であるわけだが,最近ではD. S. Wilsonのグループ淘汰理論の論文や,Martin Nowak et al.のNatureに載せられた包括適応度理論をこき下ろす悪名高い論文の共著者になっている.おそらく,これらの論文の主要なところはD. S. WilsonやMartin Nowakの手によるもので,E. O. Wilson自身は(理論的な諸問題への理解が怪しい中で)それに賛同して,社会性昆虫についてのコメントを担当しているということなのだろう. いずれにせよE. O. Wilsonは「血縁淘汰・包括適応度理論を否定してグループ淘汰理論で真社会性を説明する」というのが自分自身の理論的な立場だと理解していると思われる.私はまだ読んでいない