ブックマーク / wagaizumo.hatenablog.com (7)

  • 詩をよむそれはくるしい 5:塚本邦雄 - 古い土地

    邦雄(1920-2008年)は、第二次大戦後の前衛短歌運動の旗手としてよく知られる。 きっかけは、戦後まもなく歌壇・俳壇に対して突きつけられた「第二芸術論」(1946年)だった。これは短歌型文学の前近代性──日的抒情、表現の狭小、「何を」より「誰が」詠むかを重視する解釈──を否定する評論であり、呼応する形で、塚邦雄は「現代短歌」を模索し始める。 第一歌集『水葬物語』(1951年)は歌壇からは無視されたものの、三島由紀夫の激賞を受けた。1950年代から60年代にかけて塚は、寺山修司や岡井隆らとともに、現代短歌の韻律・語法・情景を整備していくことになる。 その後1980年代に俵万智や穂村弘が口語短歌を定着させ、今の「#tanka」に繋がる、というのが詩歌史的なあらすじ。 稿の主題は、塚邦雄のテクニックにある。「私」の消滅、クールポーズ、現実批評と幻想、組織的な破調の運用、etc

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  • 中原中也という現象【詩を読まないのでとても楽しい】 - 古い土地

    大岡昇平(編)『中原中也詩集』岩波文庫、1981年 これを読んだ。良さが分からなかった。 北川透『中原中也論集成』思潮社、2007年 困ったのでこれを流し読んだ。おおむね説得的な議論だった。だが1935年生まれの北川透が、なぜ1968-2007年の間に700ページ分もの中原中也論を書いたのか、著者が中也のどこに惹かれたのか、いまいち分からなかった。 何かの詩の良いと思うことと、何かの詩を良しとする人がどういう感性・理由を持っているか理解することは、別のことだ。私の場合前者の守備範囲がどうも狭いから、後者を理詰めで広げたいと考えている。しかしここで、人間理解力──それがあったら近代小説もっと読んどるわという能力──が試されている気がしてならない。 中原中也との邂逅 私が中原中也(1907-37年)を僅かでも意識し始めたのは、入沢康夫(1931-2018年)を通してだったと思う。 ──ではもう

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  • 日本の狼(犬)は月に吠えたか:萩原朔太郎『月に吠える』と狼の文化史 - 古い土地

    萩原朔太郎の第1詩集『月に吠える』(1917年)は、大正口語自由詩を代表する作品としてよく知られる。 この詩集に頻出するモチーフの1つが、タイトルにもなっている「月に吠える犬」「病める犬」だ。 月に吠える犬は、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである。疾患する犬の心に、月は青白い幽霊のやうな不吉の謎である。犬は遠吠えをする。 (「序」『月に吠える』) 稿で調べたいのは、「月に吠える獣(狼/犬/その他)」というモチーフの歴史的形成である。朔太郎の詩全般がそうであるように、「月に吠える犬」という一見なんということもないモチーフもまた、明治維新以後の文化交渉(東洋/西洋、都市/地方など)の中で生まれた。このダイナミズムを記述することが、私の(建前に近い)根的なモチベーションだ。 ただ件は未だ調査途上にある。今回は狼を中心に据えて、分かったこと・分からなかったことをまとめた。 日の「月に吠える

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  • なろう批評6:エロ、いくつかの - 古い土地

    一番面白い詩より一番面白いポルノの方が面白い、とは誰の言だったか。 ともかく最近は詩とWebポルノ小説を読んでいて、今回はポルノの方で面白かったものを何点か紹介したい。 注意事項 ①作品はノクターンノベルズ掲載のものから選んだ。Webポルノ小説が全体としてどのような環境にあり、その中でノクターンノベルズはどのような地位を占めてきたか、といったシーン全体の分析は誰かやるべき仕事と思うが、少なくとも私の手に余る*1。稿では目に付いた比較的最近の作品を個別に論じたい。 ②「なろう批評」のナンバリングをしているところから察せられるように、なろう小説の延長線上で論じようとしている。エロのあるところにエロ以外を求め、エロのないところ(例えば今私の手許にある『芭蕉七部集評釈』や『三好達治詩集』)にエロを求めるのは人間の性だ。要するに面白い「文体」を目的としてポルノ小説を消費するので、非R-18のなろう

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  • 日記:「パターン化された”エモ”」一周年を記念して/安藤元雄の詩 - 古い土地

    もうパターン化された“エモ”気持ち悪すぎるんだよ、純喫茶でクリームソーダ、フィルムカメラで街を撮る、薄暗い夜明け、自堕落な生活、アルコール、古着屋、名画座、ミニシアター、硬いプリン、もう全部飽きた 面白くない https://x.com/_capsella_/status/1611892581537058816?s=20 このブログで「パタエモ」に言及するのはもう3回目になるだろうか。 せっかくだから、「パタエモ」がここまで流行った理由を考えてみよう。重要なのは、アイロニー(改変しやすいカレンダーの手法、「もう」で強調される断ち切りがたい過去へのベクトル、etc)ではなく、ユーモアである。 「パタエモ」のユーモアは、「パタ」という音韻そのものに含まれていると言っても良い。つまり 日曜の夜は腰のあたりで両手を小さくパタパタさせ、星空の中を浮遊してる https://x.com/gsnc_/s

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  • T. S. エリオット『荒地』登場人物最強議論スレ(強さランキング) - 古い土地

    以下、独断と偏見に基づきエリオット『荒地』(1922年)の登場人物で誰が一番強いかを決める。ただし一般人レベルのDランクとそれ未満のEランクは列挙していたらキリがないので、ある程度枝刈りした。 和訳は基的に岩崎宗次訳『荒地』(岩波書店、2010年)に従う。引用の末尾に「I:死者の埋葬」「II:チェスゲーム」「III:火の説教」「IV:水死」「V:雷の曰く」のいずれの章に属するかを記す。例: 四月は最も残酷な月、リラの花を (I) 燃える (III) Eランク 水 せめて水の音でもあれば [……] チャイロコツグミが松の樹にとまって歌うところに ポトッ ポトッ ポトッ ポト ポト ポト ポト だが水はない (V) 存在すらしない雑魚。Eランクが妥当。 原注で「ポトッ」はツグミの鳴き声だとされている。しかし一部の専門家によれば、ツグミの鳴き声よりも「ノコギリフクロウ」の鳴き声の方が「ポトッ」

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  • TSの欲望:エリオット『荒地』と『お兄ちゃんはおしまい!』 - 古い土地

    「性」は神話の時代から、ずーっと、ずぅーっと、私たちの想像力を駆り立ててきた。 T. S. エリオットの現代 mixing / Memory and desire 追憶と欲望をかきまぜ (I. The Burial of the Dead, T. S. Eliot “The Waste Land”)*1 1. T. S. エリオット(1888-1965年)*2の『荒地』(1922年出版)から101年経ち、『お兄ちゃんはおしまい!』(アニメ化2023年)*3がジブリ並のアニメーションと(日常系として考えても)つまらない作劇で放映されて、思うこと。 2. 「助かる」というネットミームがある。英語圏の人がなにか不都合なことが起こったときに使う「nice」と似ているかもしれない。違うのは、「nice」は皮肉だが、「助かる」は相手へのいたわりがあること。「それは自分にとって都合の悪いことではありませ

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    ichigocage
    ichigocage 2023/05/16
    うーーーーん……BL夢のミラーリングがTS百合ってなかなか納得できないな……/BL夢は二次創作由来だけどTS百合って二次創作でもほとんど見かけないような
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