文学と建築。まったく異なるジャンルでありながら、そのたたずまいやなりたちに文学を思わせる建築、そして構造、手法に建築を思わせる文学がある。 日本を代表する建築家・青木淳さんが、自ら編纂した『建築文学傑作選』をめぐって、収録作家の一人である平出隆さん(作家・詩人)と特別トークを繰り広げた。なぜ文学と建築は響きあうのか? 文学と建築のつながり 平出隆:このアンソロジーのタイトルは『建築文学傑作選』ですが、「建築文学」というのは、青木さんが作った言葉ですか? 青木淳:そうですね。最初に考えたのは「建築物が登場しない建築文学」を集めてはどうか、という案だったんです。建築物が出てくる建築文学って結構パッと思いつくでしょう。「金閣寺」とか。 平出:具体的な固有の建築物ですね。 青木:あるいは今回「中隊長」という作品を収録させていただいた筒井康隆さんで言うと、「家」という、ちょっと変わった構築物が登場す