東京という単語には魔力がある。 この世の綺麗なものや面白いものや美味しいもの、悲しいこと汚いこと残酷なことその全てがギュギュッと詰まった東京に憧れたことがない日本人はいないのではないだろうか。 かくいう私も、かつては東京に憧れて、東京を目指した女だった。 自分のキャリアや夢について考えた時、 東京は私の行き先ではなくなり私がこの先東京に住むことは無くなったけれど、 それ以来東京との縁は切れたと思っていたが、 東京という単語は意外な形で私の目の前にひらりと舞い戻ってきた。 「姉ちゃん、俺東京配属になっちゃった」 私の弟が新卒の配属が東京本社になったのである。 弟。 私の2つ年下の可愛い可愛い弟は、 地元の九州が大好きなマイルドヤンキー九州男子。 そんな弟が、「広い世界を見てみたい!」という悲壮な決意を胸に就活戦線に身を投げて掴み取った大きな製薬会社の内定。 面接に落ちても、酷いこと言われても