なくてはならない書体 1998年(平成10)9月にイワタ新ゴシック体制作の監修を始めてまもなくのこと。橋本和夫さんは、同社の水野弘一郎社長(当時)に、顧問になってほしいと頼まれ、承諾した。1999年3月のことだ。 「顧問に就任して、あらためてイワタの書体見本帳を見て思ったことがふたつありました。一つは、見本帳に掲載する書体を豊富にしたいということです」 当時のイワタの書体ラインナップは、金属活字の原字をトレースしてつくった明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体の各ウエイト、教科書体、楷書体、行書体、隷書体、新聞明朝体、新聞ゴシック体といった基本的な書体だけだった。写研で多書体化を手がけた経験のある橋本さんは、このカタログに掲載される書体をバラエティ豊かに、にぎやかにしたいと考えたのだ。 そのためには新書体を制作していかなくてはならない。 しかしその前にまず着手すべき書体がある。それが、橋本さんが