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増田文学に関するiguchitakekazuのブックマーク (43)

  • 夏の時間の終わり

    配送の仕事が遅くまで続いた日は近所のコンビニで唐揚げ弁当とチューハイを買って胃に流し込んでから寝る。ケイタはずっとそうやって暮らしてきた。今日もそうやってベッドに体を沈めよう、そう思って帰った部屋には万能家事ロボット「キョウコ」がいた。 ※ ※ ※ 「始めましてケイタさん。万能家事AIロボのキョウコです」そう話しかけられてケイタは思い出した。先週スマホのSNSで見かけたロボットのモニターに応募したのだった。広告など普段は見逃すのに、ロボットの薄い緑色の瞳と淡い栗色の髪に惹かれてしまった。そして目の前に少女の姿で現れたそれは生き生きと動いていてとてもロボットとは思えない。 「ケイタさん、お事は買ってきたんですか?」ロボットに話しかけられて、ケイタは「あ、はい、いつもこれなんです…」と曖昧に返事した。そういえば部屋に帰って誰かと話すなんて慣れてない。いくらロボットとはいえ誰かが見てる前でいつ

    夏の時間の終わり
  • 後世に残したい美しい言葉 5選

    ①孫衛星衛星の周りを回る衛星のことを孫衛星という。 しかしこのような天体は天然には発見されていない。 実物はないのに未来に発見される可能性のために名前だけが付いている。 言葉の影響力は今この世界のみに及ぶのではないことを教えてくれる。 ②トリプルA面メイン曲が3曲入っているシングルCDのこと。 A面B面とはレコードからの名残である。メイン曲をA面、カップリング曲をB面と呼び、両方の曲がメインとなる場合は両A面とかダブルA面という。 そこまでは良いのだが、トリプルとなると元のレコードのイメージは完全に崩壊する(レコードに面は3つもない)。 つまり元はレコード由来の概念だったものをCDに拡張した際、面という言葉が意味を失い、抽象世界上の産物になったが故に成立した言葉なのだ。 言葉は実世界から発生するが、必ず手の届かない抽象世界へと逃げていくことを教えてくれる。 ③幽霊文字JIS規格に紛れ込んで

    後世に残したい美しい言葉 5選
  • 家電の機嫌を取るのは難しい

    今日は日曜なので10時半に起きた。遅い朝を取ろうと炊飯器を開けようとすると、スイッチが開かない。 私が「おーい、」と言いながら蓋のところを叩くと、炊飯器は伸びをしたように一度体を震わせて、ボコりと蓋を開けた。 「もう昼前なのに寝ぼけてんのかね」 私がそう言いながらしゃもじでご飯をよそっていると、炊飯器は寝起きのだるそうな声をしながら、 「買い主がものぐさだと家電もそうなるんですよ、私はあなたに似たんです。」 と言ったので、少し強めに蓋を閉めた。 「昼にもごはんべるから、ちゃんと保温しといてよ。昼寝しないでよ。」 そう言い返したが、返事はなかった。 居間で朝べながら、家電について考えた。 最近、うちの家電たちが私に冷たいのはおそらく気のせいではない。 原因は分かっている。 この前、酔って帰ってきたときに、うっかり一晩じゅう冷蔵庫の扉を半開きにしていたことがあり、中のべ物を半分駄目

    家電の機嫌を取るのは難しい
  • 一人の風俗嬢から、来て下さるひとへ

    風俗嬢をしている。勤務しているのは店舗型のイメクラだ。 私は性的な行為や初対面の男性が特に好きということはないけれど、 人間という生き物が全体的にうっすらと好きな感覚はある。 店の小さな個室の中で、色んな人間と出会う。 来てくれる人たちにとって、私は人間である以前に「女」とか「女体」なのだなとよく思う。 そういった感覚に対して別に嫌悪感もないし、自分のできる範囲で尊重する。 だって、「そういう店」なんだから当たり前だ。 それにお金を頂いているぶんくらいは、私も期待にこたえたい。 でも、これだけは私の方も尊重してほしい。 あなたが店員に案内されて、個室の扉をくぐった後、 「初めまして、○○といいます、よろしくお願いします」 と言ってお辞儀をした私は両手を差し出すので、握手をさせてほしい。 男と女、客と風俗嬢、に当になってしまう前に、ただ人間として一瞬でもコミュニケーションがしたい。 できれ

    一人の風俗嬢から、来て下さるひとへ
  • キモイと言われる僕の友人

    桜が気が早く散ってしまった頃に、電話が来た。 「暖かくなったし、飲まないか?」 「うーん、今週は予定があるから、来週はどうかな?」 いつも通りそう答えつつ、また何かあったのかなと思う。 仲間と会う時やこちらから気分が乗った時でも一緒に飲んだりするが、彼から誘われる時は大抵そうだから。 予定を合わせて、それじゃ、と電話を切り、付き合い長くなったなぁと思った。 彼とは高校時代からの友人だ。 入学式の時、母と少し早めのバスに乗ると彼と彼の母がいた。 同じ制服だったので、話もしやすかったのだろう。母は彼の母とすぐ打ち解けていた。 彼と僕とは、必ずしもそうではなかった。 話はしていたが、どうも上滑りしているところがある。そんな感触があった。 背は小さく、小太りで、話す度にキョロキョロする。けれども話す時は圧迫を感じる程こちらを見つめる。 話す度に身体を動かすものだから、距離感をどうしたものかと考えた

    キモイと言われる僕の友人
  • 「くっ!殺せ!」って言ってる女騎士を精神的に陵辱したい

    「殺せ!」って言ってる帝国騎士隊の女隊長を丁重に扱ってさ 共和国の豊かな生活や事や文化を楽しませて着飾らせて可愛がってさ 帝国での過酷な訓練と戦いに塗りつぶされた灰色の人生観を塗り替えさせた後にさ 「ところで殺せと言う例の話ですけど。」って切り出したいよね。 「落ち着いてきたので、どうしてもというなら残念だけど意志に沿いたいと思います。」って。 「出来たら考えを変えてくれてたらとても嬉しいんですけど」って。 女騎士は内心ではもうかなり死に疑問と躊躇いが生まれてるんだけど まだ残ってる騎士のモラルとか一旦大見得切った立場とかのせいで今更「生きたいです」なんて恥ずかしくて言えなくて煩悶してるとこに 「あなたが死んじゃうと捕虜になってるあなたの部下達の境遇にもいいことないんですよ?」とか助け舟を出したいよね。 それで女騎士も勿論その話が助け話だと気づいて、 自分の内心の葛藤まで見透かされたこと

    「くっ!殺せ!」って言ってる女騎士を精神的に陵辱したい
  • 長年連れ添ってきたバイブが、溶けた。

    長年連れ添ってきたバイブが、溶けた。 独身OLの夜の慰めを、かれこれ6年近く支えてきてくれたバイブを、ジップロックから取り出したら溶けていた。 つるり、と優しく柔らかでしなやかなシリコンが。春の晴れた日の空のような、透き通った海のような、優しいブルーの色が。凹凸の少ない、だか狙うところはけっして外さない完璧な形とも言えるバイブが。まるで大火傷を追った、ケロイド傷のように、表面がどろりと溶けているのだ。 その姿を見たとき、もう泣きそうだった。ひとり暮らしの部屋に、可愛げもなにもない、ただ情けのない声が漏れ響いた。その感情を例えるならば、大好きな恋人が不慮の事故で、美しい顔を崩されてしまったかのような、その顔が戻ることのないと知った、そんな大きな衝動だった。ああ、どうしてこんなことに! 洗っても、磨いても、拭き取ることもできない、傷だらけのバイブ。あまりにもかわいそうな姿になってしまった。キッ

    長年連れ添ってきたバイブが、溶けた。
  • 地震がくると天井を見てしまう 電気のひもなんて無いのに

    地震がくると天井を見てしまう 電気のひもなんて無いのに

    地震がくると天井を見てしまう 電気のひもなんて無いのに
  • こんばんは、猫です。残念ですが、あなたのようなヒトによる書き起こしか..

    こんばんは、です。残念ですが、あなたのようなヒトによる書き起こしからは、その意図を正確に翻訳することが難しいです。 理由として、あなたには「みゃう~なあう~」と聞こえているそうですが、実際は「っなぁあぁみゃうぅるっつぅなぁああぅううるるっ(この空はいいね、それは好きか?、の意)」かもしれませんし、「むぅうみゃぁぁうーっふ、んなぁぁうーっふ(夢に出てきたのはお前か?、良かったぞ、の意)」かもしれません。ヒトは2万ヘルツまで聞き取るそうですが、私達のそれは10万ヘルツです。ゆめゆめ、あなたに聞こえているものが全てだとは思われませんよう。この世には、目に見えない、耳に聞こえない事柄も在る故、「各自の定める『在る』こそ無い」という理のみが真実なのです。 ところで私たちは元来、人目につかない場所で目を閉じてじっとすることが好きです。まわりの音が四方から絶え間なく聞こえ、私が居ても居なくても、世界

    こんばんは、猫です。残念ですが、あなたのようなヒトによる書き起こしか..
  • 知らないオッサンに尿を飲ませた

  • 仕事辞めて牛タン食べた

    今さっき仕事辞めてきたから、記念に安すぎず高すぎない好きなものをべたくて、ランチ御膳4000円くらいの牛タン屋に来てみました。この開放感をゴリゴリに噛み締めたかったので、ちょっと歯ごたえがあるものにしようと思って。かすかにジャズの流れる店内に入り、4500円の特上御膳セットを注文。すみやかに運ばれてきた御膳。牛タン焼きを一口、かじったその瞬間、美味すぎて……鼻血が出てしまうかと思った…… 昼休みに上司と行った某ぎしとは厚みが違う!?いい牛タンってあんまり固くないんだね!!柔らかくてそれでいてコリコリ感もあってあああ〜脂が口の中でじゅわっと溶ける〜〜!口直しに白菜漬けを齧ってまた牛タン。白菜。麦飯。牛タン。白菜。麦飯。牛タン。美味い・美味い・美味い。さらにとろふわの麦飯とろろが疲弊していた脳を包み込んでくれる。まるでお母さんの懐のような温もり。今時珍しいパワハラモラハラ上司の顔も、過労で出

    仕事辞めて牛タン食べた
  • 午前4時

    特に用があるわけでもないが、ただ寝るのが惜しくて夜更かしをしている。 小腹がすいたので餌を買いにコンビニに行った。 道中、誰もいない交差点でオートバイが稲のように通り過ぎて行ったような気がした。 気がする、というのは寝ぼけて夢でも見ていたようにも思えるということだ。 ふと見上げると、雲の切れ間が早くも白んでいるらしい。 もうすぐ夏至である。

    午前4時
  • 頭蓋骨

    「お前、脳みそ入ってんのか?」と問われて、私には脳みそが入っているのかどうか不安になった。 私の頭蓋骨の中に脳みそが入っているのかどうかを確かめることは、相当に難儀することが予想された。なぜなら私は脳外科医ではなくパン屋だからだ。 パンを切る尋常ではない形のナイフとピザを切り分けるローラーみたいなやつしか見当たらかなったので、それで手術を敢行した。 は接客をしている。今がチャンスだ。万が一私に脳みそが入っていなかった際ののショックは計り知れないだろう。なぜなら私たちは、私の頭の中に脳みそが入っているという暗黙の了解の元に結婚したからだ。離婚などとなったら誰がパン屋の接客をすればいいのか。 3時間の奮闘の末に頭蓋骨を取り外した。ピザを切り分けるローラーみたいなやつは頭蓋骨を切り分けることもできるとわかったことが収穫であった。 よし、いよいよ自分に脳みそが入っているのかどうか確かめるぞ。

    頭蓋骨
  • ファミマのフラッペ飲んで泣いた話

    クライアント様企業のわがままに付き合って労働をしていた結果、土/日/月と会社に缶詰になっていた。 豊洲の綺麗な夜景を照らす蛍族としての活動が終わり、ようやく家に帰れることになった。 いっときの開放感にワクワクするものの、このワクワク感を共有していた友達も今では少なくなってしまった。 具体的には他の企業に連れ去られたり、良さそうなベンチャー企業に逃げ込んだり、実家に帰って農家をしたりするようになってしまった。 こういう時に思考は良くない方向に転がり込むもので、ファミマで晩ご飯を選びながら 夏の日の思い出とか、そういうふんわりとした言葉にならないノスタルジックな気持ちでいっぱいになっていた。 しかし、よくよく考えると、夏の日の思い出とか甘酸っぱいエピソードとかそういうのは何一つ無いし、 サークルで合宿だのBBQをやっても後片付けばかりしていたし、未だに好きな女の子と手をつないだこともない。 「

    ファミマのフラッペ飲んで泣いた話
  • 市役所

    隣に座ったのは大きく×印が書かれたマスクをつけた女の子だった。少女は頭で小さく礼をすると、わたしの隣に腰掛けた。 ×印は太めのマッキーで書かれたようで、ところどころ線が震えていた。 「ミッフィー?」 わたしが訊くと、少女は首を振った。黙ったままわたしに目で微笑みかけた。 「じゃあ、ナインチェ・プラウスかな」 少女は首を傾げた。「それって」言い掛けて、慌てたようにマスクを手で抑えた。それからしばらく、わたしたちは黙ったまま窓口に並ぶ行列を眺めた。 少女はまわりを伺うと、マスクをずらして耳打ちしてきた。 「言葉は出しちゃうと自分のものじゃなくなるんだって。取り返せないの」少女が囁いた。「だから守っておかなくちゃ」 「それは言ってよかったの?」 わたしは訊いた。少女は笑って頷いた。人好きのする、活発そうな笑顔だった。 「これはあたしの言葉じゃないから。で読んだの。さあ、さっきのを教えて」 わた

    市役所
  • 「餅は餅らしくしてろ」 そう言われて、私は膨れた。

    らしくしてろ」 そう言われて、私は膨れた。

    「餅は餅らしくしてろ」 そう言われて、私は膨れた。
  • 約束のオナニー

    「やだい!手術なんか受けないんだい!」 独特の消毒臭に混じって大きな金切り声が白い廊下に響いた。ここが病院であることを忘れるほどの元気な声、わたしは深くため息をついた。8歳になる我が息子は生まれつきの難病を抱えている。治療法もなく、担当医曰く10歳まで生きられれば奇跡らしい。それ以上延命できた例がないそうだ。助かる助からない以前の問題だ。 「病気なんだから治さないとダメよ、お外で遊べなくなるんだから」 手術をしてもいくばくかの延命にしかならない。儚い命をいくらか繋ぎ止めるだけの手術。それだけのために息子の体にメスを入れ痛みを与えることになる。心ではそんなことしないで欲しい、そう思ったが少しでも長生きして欲しいという思いもあった。 少しでもこの子の笑顔を見ていたい。元気に叫ぶ姿を見ていたい。できることなら外を走り回る姿だって見たい、そう思った。もう、手術をしてもらうことしか選択肢はなかった

    約束のオナニー
  • Iさんについて

    職場で知り合ったIさんという女性の話。 うちの職場は繁忙期にデータ入力の短期アルバイトを雇っている。期間は3ヶ月で、毎年5人位が採用される。短期雇用なので学生が多いのだが、Iさんはその中のひとりだった。 Iさんは母親が日人で、父親はスロバキア人。両親がすぐに離婚してしまったので、父親に関する記憶はまったく無いらしい。 Iさんは18才までスロバキアで過ごし、日の大学に通うために都内に移住してきた。東京に住み始めて、今年で4年目を迎えた。 最初にIさんがオフィスに現れた時、僕ら社員の間で軽いどよめきが起こった。Iさんがめちゃくちゃ美人だったからだ。その場から完全に浮きまくっていた。ギャグ漫画の中に、一人だけ画風の違う美少女が混ざっているようだった。しかもIさんはただの美人ではなかった。かなり個性的なキャラだったのだ。 Iさんはかなり独特な日語を話す。最初に聞いた時は、シュールな現代詩みた

    Iさんについて
  • 妻「今年の里帰り、予算的に厳しいんだけど」

    一人優雅な気分で朝べていると、寝起きのが突然語りかけてきた。 お小遣い制のぼくには家計の内情はわからないが、そういえば今年は子供の進学だとかでお金がかかるというようなことを言っていた。 しかし、その言葉にが何を期待しているのか、ぼくには今ひとつ理解できなかった。 里帰り先はの実家で、海沿いの片田舎にある。 家が小さいために毎年近くの民宿を利用するのだが、目の前が海水浴場ということもあり昼はレジャーに夜は新鮮な魚介を堪能するという我が家にとっての一大イベントでもあった。 「そうか。そりゃお義父さんも寂しがるな。」 の真意もわからぬまま、当り障りのない言葉を返す。 「そうなのよ。一年に数回の、せっかくの孫に会える機会だからね。」 それに続く次の言葉を待ってみるが、からは一向に口を開こうとはしなかった。 はたまにこうして、自分自身に結論を持っていながらこちらがそこに辿り着くまで

    妻「今年の里帰り、予算的に厳しいんだけど」
  • 母さん、私デートします。

    母さん、 私デートに行きます。 行っちゃいます、初デートです。 齢二十四にして、記念すべき 初の、デートです。 母さん、 あなたは二十四年ものあいだ、 私には、ひとっことも、 そろそろ彼氏のひとりくらい、 とか サークルにかっこいい男子いないの、 とか 口にしませんでしたよね。 その代わり、 あんた、 子どもだけは作りなさいよ、 と。 旦那は必要ないから 子どもだけは作りなさいよ、 と 何度も言いましたね。 子どもにシングルマザーになるよう勧める親が 一体どこにいるんだ、 と頭を抱えた私が、 今度、 デートに行きます。 母さん、 あなたの娘はKIRINです。 つまり彼氏いない歴=年齢です。 中学も、 高校も、 大学も、 彼氏がいないどころか、 男友達もろくにいない、 パッサパサの、 パッサパサのサバンナで、 青春時代を過ごしたキリンの私ですが、 そろそろ、 そろそろ慎ましいオアシスに、 た

    母さん、私デートします。