荻窪を去ることになった。 2年半ほど前、中央線沿いに住みたいという一心で、間取りなんか度外視した物件選びを無理やり敢行した結果、荻窪・天沼2丁目のワンルームアパートが見つかり、俺のような昆虫でも審査を通してくれるとあって、晴れて念願の杉並区民となった。 最初の半年くらいは、最寄りの駅にルミネがあるという嬉しさ、歩いて阿佐ヶ谷にも高円寺にも行けるという嬉しさ、何より杉並区民を名乗れる嬉しさで、部屋のことなど気にならなかった。中央線沿いの街で”東京をする”、その事で精いっぱいだったのだ。 しかし、東京を始めてから1年近くの月日が経ったあたりから、徐々に部屋への不満が募っていった。狭すぎる。でもそれは俺が整理整頓ができないことが主な原因だ。5畳のワンルームだって、工夫次第で快適な暮らしを送れる。 ただ、ユニットバスの狭さだけはどうにもならなかった。風呂とトイレが近すぎる。冗談ではなく、2センチほ