革命は一瞬の出来事(祝祭)のように語られてきた。ロマンチックである。革命の前にも、革命の渦中にも、革命の後にも、生活は続く。いまを犠牲にするものは、永遠の高みにある革命という大義(理想)の前に、常に犠牲を求められることになる。いまを捨てて、未来をとる。その転倒した発想と縁を切れるか。今回は、著者にとって格別の愛着の対象(ウイリアム・モリス)から語りおこされる。(編集部) 序章――「好きなこと」とは何か?(承前) 〈暇と退屈の倫理学〉の試みは決して孤独な試みではない。同じような問いを発した思想家はかつて存在した。時は一九世紀中頃。イギリスの社会主義者、ウイリアム・モリス[1834~1896]がその人だ。 モリスはイギリスに社会主義を導入した最初期の思想家の一人である。当時の社会主義者・共産主義者たちは、どうやって革命を起こそうかと考えていた。いまでは想像もできないかもしれないが、彼らにとって