上野千鶴子の「<わたし>のメタ社会学」で情報について書かれていた一節。強調は引用者による。 ここで「情報」とは何か、を定義しておこう。「情報」とはノイズの別名である。ノイズをはさんでその両端には、一方に自分にとって自明なあまり情報にさえならない領域、他方に自分にとって疎遠なあまり「認知的不協和」(フェスティンガー)のせいで情報としてひっかからない領域とがある。「情報」とはまったき自明性とまったき異質性の中間領域、そのファジーゾーンにはじめて発生する「意味あるもの」の集合である。 情報科学の概念では「ノイズ」はもともと「情報」と対立する概念である。だがノイズがノイズとして「聞こえる」という事実の中には、ノイズから情報への契機が含まれている。言い換えれば、「情報」とはノイズから絶えず生成される「意味生産」のプロセスと考えてよい。したがって情報とノイズとの境界はほんらいあいまいで流動的なものであ