村上春樹等いわゆる“全共闘世代”“団塊の世代”の作家たちが作家としてスタートするにあたって、『赤頭巾ちゃん気をつけて』に始まる“薫くんシリーズ”がいかに大きな影を投げ掛けたか――ということを、「文學界」誌上で連載中の『サブカルチャー文学論』の中で大塚英志がものすごく鋭い分析をしていた。で、僕も最近“薫くんシリーズ”を読み直してみた。そしたら薫くんシリーズの傑作ぶりに驚いた。 僕は文学史に疎いので“薫くんシリーズ”がいったい何をその源流として持っているか、月並みにサリンジャーぐらいしか思い浮かばないが、“薫くんシリーズ”は間違いなく村上春樹に代表されるその後の現代小説の源流となっている。その源流ぶりたるやすごいもので第三作『白昼の歌なんか聞こえない』の薫くんの心の密度が高まったときの書き方なんて、いまでも村上春樹が『白鳥』を目の前に広げてお手本にして書いているのではないかと思うほど似ている。