三上さんが『シュッポロ』絡みで口にする詩人の吉田一穂(よしだいっすい)って誰だっけ、どんな詩人だっけ。うろ覚えでほったらかしていた疑問である。日本の文学史に残る大物だけど読んだことがない。昨晩、情報をひもといたら、そうか、あの詩の作者! 僕の文学に関する知識はその程度だ。 ああ麗はしい距離(ディスタンス)、 つねに遠のいてゆく風景…… (吉田一穂『母』より) それで思い出した。おそらく高校生の頃、詩集を開いても、万華鏡のように光り、散乱する言葉の輝きに、その当時の僕の心が十分にはついていけなかった詩人。人生においてタイミングというものが重要だとすれば、吉田一穂と僕は悪い方のタイミングで出会ったらしい。もう少し大人であったなら、文学の楽しさにより親しんだ後であったなら、一穂の詩はまったく違った印象を僕に残したかもしれない。 そして、これは三上さんに指摘されて気がついた。吉田秀和に『吉田一穂の