著者のスティーブン・ピンカーはカナダ生まれのユダヤ人で、現在はハーバード大の心理学の教授を勤めている。サピエンス全史を書いたユヴァル・ノア・ハラリもユダヤ人だが、結構論点が似ているところもあり(暴力の人類史のほうが前に出ている)、特にジェノサイドに対する思いというのはユダヤ人に共通して強く刻まれたものがあるのだろう。 本書では、古代から現代に至るまでに暴力がいかに減少してきたか、また、暴力に関して我々の内なる悪魔がどのように人類の攻撃性を駆り立て、また最近では我々の内なる天使が何を持って暴力行為に走る人々を減らしてきたのか、ということが議論されている。先程紹介した通りピンカーは心理学者だ。なので本当は前半で展開される統計的な事実よりは後半で展開される心理学的な考察の方が本書のメインディッシュなのだと思う。暴力の人類史という物騒な邦題通り本書の中には残酷な人間の歴史が数多く書かれているが、B
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