福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだ」のどこがおかしいかをもうちょっと説明しよう。結論からいえば、「シュレディンガーは誤りを犯した」という福岡伸一さんの説は物理学の常識の欠如によるものだ。 P.150 そのかわり、シュレディンガーは、生命が、エントロピー増大の法則に抗して、秩序を構築できる方法のひとつとして、「負のエントロピー」という概念を提示した。エントロピーがランダムさの尺度であるなら、負のエントロピーとはランダムさの逆、つまり「秩序」そのものである。 生きている生命は絶えずエントロピーを増大させつつある。つまり、死の状態を意味するエントロピー増大という危険な状態に近づいていく傾向がある。生物がこのような状態に陥らないようにする、すなわち生き続けていくための唯一の方法は、周囲の環境から負のエントロピー=秩序を取り入れることである。実際、生物は常に負のエントロピーを"食べる"ことによって