昨年の第40回全国高校生読書体験記コンクール(一ツ橋文芸教育振興会主催)で、宮城県北の高校に通う3年の賀井暁月(かい・あかつき)さん(17)=筆名=の作品「世界にゆさぶりをかけるもの」が最高賞の文部科学大臣賞を受けた。1920~30年代に活動した米国人作家、H・P・ラヴクラフトのホラー小説に魅了さ…
(※再公開です) 批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書) 作者:廣野 由美子 発売日: 2005/03/01 メディア: 新書 批評ブログやりたいわけじゃないんだけど、物語作品の考察なり分析なり書こうとするとどうしてもこういうところの参照が要請されるので再確認のためにも出してきました。 日本の読書文化が誇る中公新書における名著の1つなので今更感はあるけど、こういうのは書いとくに越したことはないでしょう。今はこんなのも電子版出ててすごいね。 題名は「批評理論入門」となっているけど、思い切って言えばこれは「小説の読み方」を教えてくれる本です。もちろん映画でもアニメでも物語ならなんでも役に立つ。このジャンルの入門書でこの本を越えるものは令和3年の今でもおそらくまだない。入門書と言っても何度も読み返すに値する深みを持っている、正しく新書版の名著と呼ぶにふさわしい本です。 1.
文学の哲学は、存在論、認識論、倫理学、心の哲学、そして美学から、哲学的に文学を考察する研究ジャンルである。 物語とは何か、物語は人生の何を教えてくれるのか、作者とは誰か、詩的想像力とは何か、フィクションとは何か、詩の深遠さとは何か、キャラクタになぜ惹かれるのか、文学作品はどんな存在なのか、そして、文学とは何か。 本稿は、The Routledge Companion to Philosophy of Literature*1 を参照しながら、主に英米圏における文学の哲学の主要な32のトピックを紹介する。文学の哲学について関心のあるひとがさらに学びを深めるために、あるいは、美学や文学の研究者の方が研究の手がかりとするために役立てばと思う。計三万字強あるので、頭から読んでいただくのもうれしいが、気になるところからすきな順番で読んでもらえればと思う*2。 定義とジャンル 1. 文学の概念 2.
一気読みした。長かった。情報量も多かった。 全体を通して生きることに纏わる自己と社会との深遠なテーマが繰り返し提示されており、村上が何度も挫折や現実と直面させられる中で力強く描き出されており非常に読み応えが合った。 吉野が水野から手を引いた辺りが描写不足にも感じたが、そのような点を一つずつ論っていても仕方ないので割愛。 村上の妄想や思考を非常に長く描写する、同時に分裂した自己の提示、複数の人間の視点から物語を多角的に描き出すなどマンガとしての表現の技巧として高度なものをいくつも感じたが、特に終盤での谷口との心理戦における視覚化された感情の動きや、最終巻の胎内描写が延々と続きながら、文字だけで物語の展開を描いていくところなどはマンガという形式への挑戦を感じた。 最大の問題となりそうなのはラスト。全てが大妄想、それすら妄想、妄想……と夢オチのような下らない終わり方をするのか!と思ってしまったが
※本記事は、物語の結末に触れていますので、未見の方は映画鑑賞後にお楽しみいただくことをお勧めします。 ※2018年8月記事掲載時の情報です。 『トゥモロー・ワールド』あらすじ 人類に最後の子供が誕生してから18年が経過した西暦2027年。原因がわからないまま子孫を生み出すことの出来なくなった人間には滅亡の道しかないのか。希望を失った世界には暴力と無秩序が際限なく拡がっていた。世界各国が混沌とする中、英国政府は国境を封鎖し不法入国者の徹底した取締りで辛うじて治安を維持している。そんなある日、エネルギー省の官僚セオは、彼の元妻ジュリアン率いる反政府組織“FISH”に拉致される。ジュリアンの目的は、ある移民の少女を“ヒューマン・プロジェクト”という組織に引き渡すために必要な“通行証”を手に入れることだった。最初は拒否したものの、結局はジュリアンに協力するセオだったが…。 Index 説明を排除し
全世界で約200万本のヒットを打ち出した、スクウェア・エニックスより発売中のゲームソフト「NieR:Automata」。本コラムでは、この作品が一体何を成し遂げたかということについて、私なりのひとつの考えを提示したいと思う。 はじめに、私が本作をクリアしたときに思い起こした、ある苦い記憶の話をしよう。もちろん、読み飛ばしてもらっても構わない。 或ル日ノ記憶: 序 頭がおかしくなってしまった。 聡明な母に対してそう感じたことが一度だけ、ある。私が中学を卒業する年の1月、高校受験を直前に控えて塾から家に帰宅すると、そこには新しい家族が待っていた。 空(そら)とすでに呼ばれていたそれは、黒い毛並みに茶色の眉が愛らしいダックスフンドだった。父が獣医であったため、飼いきれなくなった患畜の子供を育てることになったらしい。 時期もあり、最初は少し厄介くらいに思っていたが、彼が母や私の日々の生活の垢を落と
ウィッチャー3の世界情勢を考察 幾つもの2015年Game of the Year(GOTY)に輝いたウィッチャー3(THE WITCHER3)。そのシリーズ原作となる『THE WITCHER』は、ドラマや映画化も予定されているポーランドの人気小説だ。 ウィッチャーI エルフの血脈 (ハヤカワ文庫FT) 作者: アンドレイ・サプコフスキ,川野靖子,天沼春樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/08/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 異界と繋がってしまった架空の世界を描いているウィッチャーシリーズ。ゲームでは原作のその後を描いており、その内容は実ヨーロッパの歴史を強く反映していることが伺える。 なるほど。それならポーランドの首相がオバマ大統領にゲームを贈ったのも納得できる。 そこでウィッチャー3の物語に奥深さを与えたであろう歴史背景や舞台を調べてみた。 本
【注意】本記事には『ファイナルファンタジーXV』のエンディングに言及した重大なネタバレが含まれています。具体的な言及は避けていますが、ゲームをクリアしていない方は閲覧・取り扱いに注意してください。 2016年11月29日、日本のRPGシリーズの代表格、FFシリーズ最新作『ファイナルファンタジーXV』発売――。発表から数年、紆余曲折の末にようやく発売された本作は、毀誉褒貶という状況ではありますが、それでも国内外で一定の存在感を示してくれました。 良いところも悪いところも含め、わたしが『FFXV』を一言で表すなら「異形のRPG」です。どのあたりが「異形」なのか。過去のFFと何が決定的に違うのか。主にゲームデザインの観点から「リアル=現代/現実/現在」「物語」「JRPG」というタームを使って考えてみたいと思います。 また、公式サイトのABOUTに記載されている「新たな世代のための新たな礎」という
遠い昔にFPSにハマりきっていたころ、筆者はすでに販売が終了していた三菱製のCRTディスプレイ、「ダイアモンドトロン」の中古品をネットオークションで手に入れて使っていた。いまでこそe-Sports用の液晶ディスプレイが普及しているが、当時FPSに本気で入れ込んでいた連中は、マイクロ秒の応答速度を求めて、米俵と同じくらい重たいブラウン管を自室に運び込んで腰を悪くし、針灸院に通いながらプレイしていたものだった。そういうわけで、ブラウン管の走査線のイメージは筆者の記憶に深く刻まれている。 『Back in 1995』が模写したのは、初代プレイステーションにおける低解像度のポリゴンとクリエイターの創作欲求の摩擦が産んだ、狂気じみた作品群の感覚である。「プレイステーションなら新しいことができる」という時代の熱狂と、実際にはそんなに大したことはできないという現実のずれが、『鈴木爆発』、『せがれいじり』
2015年がそろそろ終わるにあたって、国内外のメディア、ゲーム賞などでベストゲームが選出されていて、私も1人のゲーマーとして楽しませてもらっている。今回、私は1年総じてのベストゲームという主旨を少し変えて1本のテーマに絞った形でベストゲームというのを選出してみたい。 2015年 思考・思索ゲーム賞ベスト5 私はゲームそのものが、悩み、考え、掘り下げ、批評し、ついには思想を持つことによって、どこか遠い地平を目指す、そのようにゲームそのものが思考・思索している観点を設けてみた。そして仮設的に「思考・思索ゲーム賞」というのを設定してみる。そして、その観点から私が選んだベスト5は以下のようになる。 1位『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』 2位『Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-』 3位『Urban/Satanic
誰もが「物語」を求めている。 スティーブ・ジョブズの魅力的なプレゼンには、「三幕構成」という作劇法が応用されていたという。iPhoneが一台あれば映画を作れる時代だ。今ほど「物語」が求められている時代はない。にもかかわらず、物語を作る「技術」の重要性に気づいている人はまれだ。物語作りに必要なのはセンスだけ──と、素朴に信じている人は多い。 物語作りにも、技術がある。 なかでもシド・フィールドが体系化したハリウッド式の「三幕構成」は、汎用性と自由度の高さが魅力だ。脚本製作の現場だけでなく、商談につかうプレゼンや、WEBメディアの記事執筆(※ブログを含む!)、飲み会のときの「滑らない話」にいたるまで、およそ物語性を持つほとんどのものに応用できる。ジャンルを選ばず実用可能な、ほぼ唯一の技術といっていいだろう。 今回は「三幕構成」がどのようなものか、ざっくりと紹介したい。 三幕構成を説明する前に、
ヤクルト・スワローズのウラディミール・バレンティン選手が今季55本目のホームランを打った。 シーズン55本の本塁打記録は、これまで、王貞治(1964年)、タフィ・ローズ(2001年)、アレックス・カブレラ(2002年)の三選手が達成している。残り試合数(22試合)を勘案すれば、バレンティン選手が新記録を樹立することは確実と見て良いだろう。昭和の時代からプロ野球を追いかけてきた者として感慨深い。 今世紀のはじめ、ローズ、カブレラの両選手が55本目の本塁打を放った前後の打席では、かなり露骨な四球攻勢が続いていた。その四球戦術のせいもあって、両選手は、王貞治氏の記録に並ぶところまではたどり着いたものの、ついに55というエポックを越えることはかなわなかった。 この時に大量供給された四球について、当時ダイエーホークスの監督だった王貞治氏が暗黙の指示を出していた旨を主張する人々が執拗に声をあげていた。
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