前回、書き忘れたことからはじめよう。 講談社版の久米元一訳『消えたスパイ』にある、「ホームズがここに私立探偵の事務所をひらいてから、すでに二年あまりになる。」という文章だ。「ここ」というのは、ベーカー街221Bのことで、つまり「緋色の研究」事件から二年後に、「恐怖の谷」事件が起きたという設定である。それが、集英社版の久米みのる訳『恐怖の谷』では、「私立探偵を開業してからすでに7年」となっている。例のベアリング=グールド説では、7年の方が正しいようであるが、さて、この年代の差は、いったい何に基づいているのだろうか。 それはさておき、次は偕成社版《名探偵ホームズ》である。訳者は野田開作。 野田開作について、グーグル検索すると、まず八木谷涼子氏の「日本の児童書に見るロレンス」http://homepage3.nifty.com/yagitani/art_ja03.htm というページが見つかった