食虫植物は世にも不思議な存在である。「種の起源」を書いたダーウィン(1809~1882年)も魅せられて研究に熱中し、著書「食虫植物」(1875年)を残した。その謎が140年のときを経て、現代生物学で解かれつつある。代表的な食虫植物、サラセニア(北米原産)の長い袋状の捕虫葉は、特定の部位で細胞分裂の向きが変わることによって形成されるという巧みな仕組みを、総合研究大学院大学の大学院生、福島健児(ふくしま けんじ)さんと基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の長谷部光泰(はせべ みつやす)教授らが見いだした。 形態観察や遺伝子実験、コンピューターのシミュレーションなど多様な手法を総動員して突き止めた。食虫植物にとどまらず、生物の特異な形態の進化を解く手がかりになる発見として注目される。基礎生物学研究所の藤田浩徳(ふじた ひろのり)研究員、川口正代司(かわぐち まさよし)教授、東京大学の塚谷裕一(つかや