はるか昔から 心を分かち合うパートナーとして人々の傍らで暮らしてきた馬たち。岩手のあちこちをめぐると馬と人の絆を感じるエピソードがあふれています。 岩手における、馬と人とのつながりは長く深いものがあります。古くは敵陣に挑む戦友であり、日々を共に歩む家族でした。軍馬として、農耕馬として、夢や希望の象徴として、いつの時代を覗いても人の暮らしには馬が寄り添っていたのです。 柳田國男の紹介する『遠野物語』にも馬が数多く登場します。馬と人間の娘が恋をするオシラサマ伝説をはじめ、馬を川に引き込むカッパの話、オオカミに馬を食い殺される話……。思えば馬と人が苦楽を共にした遠野の里。頻繁に話に出てくるのは当然のことかもしれません。 「この地方を旅行して最も心とまるは家の形のいずれもかぎの手なることなり」。厩と軒続きの「南部曲がり家」について、柳田國男はそう記しています。しかし、岩手の農村では当たり前にあった