アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:クリス ハドフィールド早川書房Amazonこの『アポロ18号の殺人』は、アポロ17号でアポロ計画が終わり、その後宇宙開発が停滞に入ってしまった現代とは異なり、アポロ計画が18号まで持続し、さらに米ソの戦いが宇宙、月でも繰り広げられるようになった「架空の宇宙開発史」を描きだす宇宙SF長編である。近年、長らく停滞していた宇宙開発がコストダウンや民間企業の参入が重なってにわかに盛り上がってきているが、それに呼応するように宇宙SFのヒット作も(たとえば『宇宙へ』『火星へ』など)出始めてきている。 本作もいわばそうした流れに連なる宇宙開発ものの作品なわけではあるけれども、他作品と異なる本作ならではの特徴は、著者クリス・ハドフィールドが、カナダ出身の引退した宇宙飛行士であるという点だ。しかも、カナダ人としてはじめて宇宙空間で船外活動を行い、2回のスペ