今さら聞けない肉の常識 第31回 <ビーフ・ステーキを焼く> その1 加熱による凝固・収縮と肉汁の滲出性 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室 本誌95年9月号の「チラリ・チクリ」欄で“短気オジサン”が「薄いステーキで焼き加減なんか聞くな」と大いに憤慨していらっしゃる。注文した焼き加減より余計に焼き上がってくると思って間違いなく、ほとんどウエルダンがでてくるというわけです。そこで、ステーキを焼いた時、肉に起こる変化について考えてみました。 肉を加熱調理した時、焼く過程でみられるいくつかの反応、それに伴う変化、とくに色の変化、タンパク質の変化、脂肪の変化、香りの生成、焼き過ぎによる変異原性物質の生成などの変化が起こっていますが、今回は主として加熱調理した時の肉の硬化と肉汁の滲出について触れてみます。 ステーキを焼く場合、鉄板などを使う間接加熱法と網焼きなどの直接加熱法があります。鉄板焼きの