岩手・花巻宮沢賢治の想像力をかき立てた岩手山と星空=岩手県八幡平市 人々のあいだの絆がおぼつかなくなった時代だからこそ、宮沢賢治(1896〜1933)の言葉が改めて光を放つのでしょうか。賢治は詩や童話を書くかたわら、農学校の教壇に立ち、農民の生活改善のために尽くして、イーハトーブ(理想郷)の実現を夢見ました。 昨秋、賢治の生まれ故郷・岩手県花巻市を訪ねました。午後7時。市内中心部で「星めぐりの歌」のBGMが流れます。賢治の作った中で最も知られているこの歌曲は、初期の童話『双子の星』の作中歌です。1918(大正7)年夏、盛岡高等農林学校の研究生だった賢治が、幼い弟妹に歌い聞かせたとされています。 星座名をちりばめた曲の調べは、ほのぼの明るいものです。「石コ賢さん」とあだ名されるほど鉱物採集に熱中し、コンパスと星座表を持って星座さがしに出かけていた姿が目に浮かぶようです。 裕福な商家に生まれた