前回、「あっちが正しいか、こっちが正しいか」という二項対立的な問いは、「問い方のマジック」であるというお話をした。「あちらか、こちらか」と問われると、人は思わず、どちらかが正しいのではないかという“マジック”にひっかかってしまうのだ。 でも、とりわけ意味や価値について、あちらとこちら、どちらかが絶対に正しいなんてことはない。だから僕たちは、「あちらか、こちらか」じゃなく、「あちらも、こちらも」、どちらもできるだけ納得できる、もっと建設的な“第3のアイデア”を考え合う必要がある。そして繰り返し言ってきたように、哲学は、そのような深い“共通了解”を見出し合うための思考法を、2500年の長きにわたって磨きつづけてきたのだ。 相手を言い負かすための技 さて、でも僕たちは、あまりにしばしば、“共通了解”を見出すのではなく、相手を言い負かすための議論をしてしまう。 実を言うと、哲学はこれまで、この「