すでに2か月前の話になりますが、『現代民俗学研究』という雑誌の第6号に僕の論文が載りました。 タイトルは「妖怪の、一つではない複数の存在論―妖怪研究における存在論的前提についての批判的検討―」で、113-128ページに掲載されています。 冒頭の英文要旨を翻訳したものは次のようになります。 本稿は、近代の民俗学的妖怪研究が前提としてきた存在論的コミットメントを批判的に検討する。学術的な妖怪研究者は、妖怪は超自然的存在であり、妖怪は一般的には実在しない、と想定している。しかし、近代的な研究者のもつ存在論的枠組みを共有しない人々の世界を研究するときの、これらの前提の妥当性は、これまで妖怪研究においてほとんど関心をもたれてこなかった。本稿は、妖怪研究において主流の言説や理論を批判的に検討することにより、研究者が、妖怪を受け入れ共存する人々のパースペクティヴを把握しそこねていたということを指摘する。