honto.jp 1970年代に行われた梶村秀樹*1先生(1935-1989)の講演記録を一冊にまとめた『排外主義克服のための朝鮮史』は、朝鮮史の知識を網羅的に解説したものでありませんし、梶村先生が依って立つ学説の中には、最近の研究によってすでに否定されている見解もあります。それゆえ、「梶村秀樹の著作は、もはや読む価値がない」と言う人もいるでしょう。しかし、私が思うに、そのような人は本書の意義を誤解しています。 『排外主義克服のための朝鮮史』は、決して朝鮮史の知識を網羅的に習得するためのものではなく、書名のとおり「排外主義克服のための」ものです。つまり、本書でいう「朝鮮史」とは、単なる知識としての「朝鮮史」ではないのです。それでは、本書でいう「朝鮮史」とはどういうものか。思うに、それは一言で言えば「朝鮮を主体として捉えた朝鮮史」です。日本国民が学校教育などを通じて習得する「朝鮮の歴史」は、