哲学者はなぜ部屋に引きこもって他人の文章を読むだけで研究できるのか。なぜ外に出てデータを取りにいかないのか? この疑問に対して自分なりの回答を用意しておく必要があるとつねづね思っているが(学際的な分野に関わっているとしばしば言い訳が求められるので!)、昨日授業後に雑談していて、こういう答え方ができるかなと思いついたことがいくつかあった。*1 たとえば歴史学者や社会学者や人類学者は、まだわからないこと、まだ知らないことを明らかにしようとするところにモチベーションがある。それゆえ、外の世界に出て新しいデータを見つけようとする。比喩で言えば、ジグソーパズルを完成させるために欠けたピースを探す。パズルのように決まった正解があるわけではないので、むしろモザイク画を作るための素材を探す、という比喩のほうが適切かもしれない。 一方で哲学者は、自分(および想定される読者)がすでにそれなりにわかっていること