3.記号とブリコラージュ――あるいはモノの単独性について 3-1.制服という記号 鷲田さんのこの本(『ちぐはぐな身体』)は、衣服やファッションを「記号」として扱った本だということができます。つまり、衣服の記号論ともいえます。ただし、衣服を記号だというとき、それは衣服が着る人の地位や職業や性別や年齢やキャラ(つまり同一性)を示す記号だということだけではありません。同一性を表す記号としての衣服の典型が「制服」ですが、鷲田さんは、この本の中で、制服についていろいろ考察して、制服が制度的な同一性に人を従順に縛り付けておくものといった、一筋縄の単純な「記号」ではないことを論じています。たとえば、鷲田さんは、制服を着崩すことが抵抗の表現になるだけではなく、制服の「裏の顔」として、「制服へのいわば裏返されたまなざし」、すなわち、コスチューム・プレイや着せ替え、異性装、セーラー服願望など、制服への執拗なフ