金融庁の「金融リテラシー」が問われかねない さらに、平均値によって議論することの危険性も忘れてはならない。高齢無職世帯の「経済力」の差は主に資産額の差による。多くの資産をもつ世帯が非常に多くの支出を行うと、「平均値」は「世間で一般的な値」から大きく引き上げられてしまう。 この問題点がよりクリアにわかるのは資産額の「平均値」だろう。2018年の金融広報中央委員会による調査では世帯主70歳以上の世帯の平均金融資産保有額は1780万円である3。この値を見ると、驚く方が多いだろう。 しかし、特別に多くの資産を持つ世帯が存在することを忘れてはならない。より「世間で一般的な値」に近いのは中央値――資産が多い順に並べてちょうど真ん中の順位の人の値だ。同調査での高齢者金融資産の中央値は700万円である。こちらのほうが、「一般的な資産額」の実感に近いだろう。 「一般的な資産額」とは程遠い平均資産額を示して、