ブックマーク / bakhtin19880823.hatenadiary.jp (656)

  • 【愛の◯◯】一人称の表記と『ミスター非常識』 - 音楽と本、それからそれから……。

    「リリカさん、リリカさん」 「なあに? 小百合(さゆり)ちゃん」 「私のもとに、『管理人さん』から手紙が来たんですよ」 「『管理人さん』って、このブログの?」 「はい」 「いきなりすごいメタフィクションだねえ。……ま、いっか、お手紙には、いったいどんなコトが?」 「私へのお詫びでした」 「お詫び?」 「そうです。『小百合さん。あなたの一人称視点だった記事で、あなたの一人称の表記が間違っていました。あなたの一人称は来は漢字の『私』なのですが、その記事では平仮名の『わたし』となってしまっていたのです。管理人であるわたくしの不注意でした。お詫びいたします』って」 「……細かいんだね、管理人さんって案外」 「表記のミスとか細かいとこによく気付くものですよね。確かに、『私』は『わたし』じゃなくて『私』なんですよね」 「あと、小百合ちゃんも記憶力が良いよね。お手紙の文面をスラスラ言えるなんて」 「ホ

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    japan-eat 2024/06/22
  • 【愛の◯◯】弱々(よわよわ)マッキー - 音楽と本、それからそれから……。

    「ねえ卯月(うづき)ちゃん、トーコちゃんとユーガちゃんの『アレ』は、どーなったの??」 「小麦さん……。『アレ』ってなんですか、『アレ』って」 つれないなー、卯月ちゃんも。 「トーコちゃん・ユーガちゃんコンビを放送部に引き入れるコトだよ。グズグズしてると、トーコちゃんもユーガちゃんも3年生になっちゃうよ。ということは、グズグズしちゃってたら、卯月ちゃんも3年生になっちゃうし、わたしたちは卒業しちゃうってコトなんだよ?」 「気が早すぎませんか」 『まだ1学期ですよね』と言いたいんだろうけど、 「甘ーい甘ーい。カスタードクリームパンのとろけるようなクリームみたいに甘ーい」 「また、ヘンテコな比喩を……。懲りないですよね」 わたしのご近所さんであるがゆえの態度。カワイイ態度である。 × × × トーコちゃんとユーガちゃんは卯月ちゃんの同学年の親友女子、トーコちゃんは髪が長く、ユーガちゃんは髪が短

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    japan-eat 2024/06/21
  • 【愛の◯◯】渦中の顧問がわたしたちを◯◯ - 音楽と本、それからそれから……。

    オンちゃんが所用で部活を欠席。 さみしい。今日活動している女子部員はわたし1人。 部活はまだ始まったばかり。活動教室で校内スポーツ新聞の編集作業をしているのは部長のわたし含め3人。わたしを除いた2人はノジマくん&タダカワくんの1年生男子コンビだ。 黙々と編集作業をしている男子コンビに近寄っていく。 「2人とも頑張ってるね」 とりあえず声掛け。 それから、 「わたしモチベーションがイマイチ上がんないの。オンちゃんがお休みだし」 と言う。 「部長さんは3年生ですから、受験勉強とかも忙しいでしょうし、そういう忙しさでモチベーションが削がれちゃったりもするんですよね」 そう言ったのはノジマくんの方だった。 受験勉強よりも『オンちゃんロス』の方がモチベーション下がってる主要因なんだけどな。 いかにオンちゃんの存在が大事なのかというコトをこの場で男子コンビに説明しようかとも思った。 でも、タダカワくん

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    japan-eat 2024/06/19
  • 【愛の◯◯】ピアノを弾かせてもらったあとで◯◯ - 音楽と本、それからそれから……。

    有給休暇を取り、葉山むつみちゃんのお家(うち)にやって来た。 ピアノの練習をさせてもらうのである。 お昼過ぎ。玄関で出迎えてくれた葉山ちゃんを見てあたしは、 「パジャマみたいな服着てるね」 言った途端に彼女は照れ始め、目線を徐々に下降させながら、 「『みたいな』というか……パジャマです」 「あ、起きてから着替えてないんだね?」 「すみません」 「謝る必要無いよ。そんな日だってあるよ」 「でもっ」 あたしよりほんの少しだけ背の高い葉山ちゃんの頭頂部に敢えて右手を置き、 「あたしに何かして欲しいコトある? ピアノ練習よりもそっち優先させるけど」 と言いながら軽くナデナデしてあげる。 「例えば、お部屋の掃除だとか」 「あのっ。実は、午前中に何時間もかけて、自分の部屋の床に散乱してた漫画を片付けてて」 なるへそ。 「それで、着替えるのまで手が回らなかったんだね」 「はい、そういうワケなんです」

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    japan-eat 2024/06/18
  • 【愛の◯◯】雷鳴響けば縮こまる - 音楽と本、それからそれから……。

    蜜柑です!! 梅雨です。雨が降り続いています。 風も強かったのでレインコートを着て外に出ました。 近所のスーパーマーケットに料品を買いに行く必要があったのです。 精算を終えてスーパーを出て、バルサミコ酢やオリーブオイルやスパゲッティなどの入った買い物バッグを持って帰り道を歩きました。 え? 『買い物バッグ大丈夫なの、雨で濡れたりしないの、あなたレインコート着てて傘は持ってないんでしょ』 みたいな疑問をもしかしてお持ちになりましたか? 大丈夫です。 この買い物バッグは特製仕様でして、完璧な防水加工がなされているのです。ただの買い物バッグとは違うのです。 えっ? 『納得できないよ。完璧な防水加工ってどんな防水加工だよ。雨を全く通さない買い物バッグなんて存在するか!?』 ですって?? ふふふ……。 分かっていらっしゃらないようですね。 そういうバッグも在(あ)るという『世界観』を……! × ×

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    japan-eat 2024/06/17
  • 【愛の◯◯】父の日はカラダにチカラが入る - 音楽と本、それからそれから……。

    両親の住む一軒家に来ている。 今日はなんといっても父の日! であるがゆえに、 「おとうさん、あのね」 と、ダイニングテーブルの席についているおとうさんにゆっくりと近付いていくわたし。 意図を察して立ち上がってくれるおとうさん。 わたしは緊張してしまい、紙袋を差し出そうとする両手が震えを起こしてしまう。 見つめ合うコトすら上手にできない。 大学4年生にもなって未だファーザー・コンプレックス。 そんな不甲斐無いわたしにおとうさんが、 「愛。おまえは変わんないな」 「え……。どこが?」 「いざとなると自分を出し切れないところ」 「『いざとなると』って……」 「いざ父の日のプレゼントを渡す段になって、緊張しまくってるじゃないか」 6月だというのに背中がヒヤリとするわたし。 「もっと自然で良いんだよ。おれのコトをリスペクトし過ぎてるんじゃないか? だから、全身に余計なチカラが入る」 わたしは、うつ

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    japan-eat 2024/06/16
  • 【愛の◯◯】新田くんのスケッチブック - 音楽と本、それからそれから……。

    自転車に乗って某・公園まで向かった。 到着して広い敷地内をぶらぶら。 6月では貴重な晴れた日で、湿気のベタベタした感じもあまり無い。 ステキな日ね。 わたしは池のほとりまで来た。 そしたら、なんと!! 見知った男の子が木のベンチに座ってスケッチブックを持っていて……!! × × × 新田俊昭(にった としあき)くんだった。 わたくし羽田愛が幹事長を務めている『漫研ときどきソフトボールの会』の同級生会員。 漫画家志望の男の子。 公園の風景をスケッチして腕を磨いてるのね。偉いわ。 こちらから挨拶したら、彼はとっても驚いていた。 ベンチの左隣が空いていたから腰掛けたら、驚きに加えて緊張がプラスされたらしく、スケッチする手を止めて背気味になってしまった。 「続けたら良いのに、スケッチ」 柔らかく言うと、 「しゃ、しゃ、喋りながらだと、上手くスケッチできないから」 「そんなコトで漫画家としてやって

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    japan-eat 2024/06/14
  • 【愛の◯◯】オムライスと古着 - 音楽と本、それからそれから……。

    親友の久里香(くりか)とカフェで昼ごはんだ。 わたしも久里香もオムライスを注文した。 デミグラスソースとホワイトソースが一緒にかけられたオムライスが運ばれてきた。 卵はトロトロ。 べてみる。 ソースが2つもかかっているのに全然クドくない。 中身は、ケチャップで薄く味がつけられたご飯。ご飯の味付けが絶妙で、デミグラスソースやホワイトソースと響き合っている。お米の炊き加減も申し分ない。 あっという間にべ切ってしまった。 「よっぽどお腹すいてたんだね」 久里香に言われてしまった。 「ごめん、早いで」 謝ると、 「いいんだよ、謝らなくたって」 と笑顔で言いながら、久里香はスプーンを口に運んでいく。 少し遅れてオムライスをべ切った久里香は、 「もう一度べたくなる味だったな。このお店入って正解だった」 「そうだね」 わたしは頷いて同意する。 「さて」 と言って久里香は、 「久しぶりに、ふたり

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    japan-eat 2024/06/12
  • 【愛の◯◯】わたしはニーチェを、彼はサルトルを - 音楽と本、それからそれから……。

    アツマくんが仕事場から帰ってきて、ダイニング・キッチンまで来たので、 「今日の晩ごはんはトンカツよ、アツマくん」 と言ってあげる。 「お、いいな」 「いいでしょ」 キッチンからアツマくんのところまでペタペタと歩いていき、 「楽しみにしててね」 とココロを込めて言う。 愛情表現だ。 わたしの愛情表現、上手く伝わったかしら。 伝わってるわよね。 アツマくんの顔、仄(ほの)かに照れ顔になってるもの。 エプロン姿のわたしはさらに彼に近付く。 彼を見上げ、ジンワリと微笑みの視線を注いでいく。 × × × トンカツを盛り付けたお皿がダイニングテーブルに2つ。 向かい合って着席。 「美味しそうでしょ」 とわたしがアツマくんに言う。 「美味そうだ。おまえのトンカツを揚げるスキルを考えれば当然だが」 「なんだかキラキラしてると思わない?」 「トンカツのコトか?」 「そーよ」 「確かにな。黄金色(こがねいろ)

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    japan-eat 2024/06/10
  • 【愛の◯◯】ふたりの様子が突然変わった - 音楽と本、それからそれから……。

    今日はあすかちゃんの誕生日だ。 昼過ぎ。あすかちゃんのバースデーを祝うためにお邸(やしき)にやって来た。 今は、彼女に、バースデープレゼントを渡したところだ。 わたしからのプレゼントを受け取った彼女はわたしの真向かいのソファに座っている。 そして、わたしから見て右斜め前には羽田センパイ。左斜め前は現在は空席。 「ほのかちゃん、プレゼント大切にするね」 あすかちゃんがそう言ってくれた。 嬉しさに浸りたかったわたし、なんだけど、向こうからやって来る男のヒトに気が付いてしまう。 あすかちゃんのお兄さんたるアツマさんである。 アツマさんは、丸形のトレーを持ってやって来た。トレーに置かれたカップから湯気が立ち昇っている。 彼は、わたしたちにコーヒーを配っていく。 わたしの手前にコーヒーカップを置くのとほとんど同時に、 「今日のコーヒーは今までで1番の自信作なんだ。川又さん、きみも堪能してくれ」 と言

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    japan-eat 2024/06/09
  • 【愛の◯◯】サークルも『大賞』を決めてみませんか? - 音楽と本、それからそれから……。

    「ムラサキさん、今日は短縮版だそうです」 「おー」 「あんまり、悠長にしてるヒマは無いみたいですよ?」 「うおー」 「……『短縮版だ!』という自覚を持ってください」 「じゃあ、あんまり長々と喋れないね」 「そーゆーことです」 「あのさ、小百合さん」 「ハイ?」 「ぼくはね、最近ずっと、日レコード大賞のデータブックを読み込んでたんだけど」 「日レコード大賞って、あの日レコード大賞ですか? 大晦日の前日にやってる」 「フフッ、昔は大晦日の前日じゃなくて、大晦日の当日に放送してたんだな」 「へー、そうだったんですか」 「え!? 初耳!?」 「驚き過ぎです」 「あのね、レコード大賞は、かつては、今とは比べ物にならないぐらい権威があったんだよ」 「ステータス的な?」 「そ。1970年代とかはね」 「でも、70年代の主流って歌謡曲ですよね」 「歌謡曲だとダメなの?」 「このサークルに入って色んな

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    japan-eat 2024/06/08
  • 【愛の◯◯】お便りは、人生相談 - 音楽と本、それからそれから……。

    「湿っぽい季節になってきましたねー。ジメジメ。ジメジメだから『ジメっぽい』とも言えちゃうな。 そんなジメっぽい季節は少しユーウツ。だけど、だからこそ、この校内放送を聴いて元気を出して欲しいな。 『元気を出して』といえば、竹内まりやの曲、なんだけども……。 タカムラちゃん、タイトルコールの前に曲流してもOK?」 「エッ、紅葉(もみじ)先輩、もう曲をかけちゃうんですか」 「そういうパターンもアリ」 「竹内まりやを?」 「ううん、違うよ」 「違うって……」 「わたしが流したいのは、竹内まりやのダンナさんの曲」 「山下達郎!?」 「そ」 × × × 「……というワケで、日のオープニングナンバーは某キムタク主演飛行機ドラマの主題歌でありました。 わたしたちが誕生した頃のテレビドラマであるのは承知の上。 さあ!! 始めていきましょー、『ランチタイムメガミックス』!! 日は、金曜日!!」 「テンショ

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    japan-eat 2024/06/07
  • 【愛の◯◯】666と999の雑談 - 音楽と本、それからそれから……。

    「今日は令和6年6月6日だねっ」 中嶋小麦(なかじま こむぎ)さんがニッコリと言う。 「なんだか『サタン』って感じだ」 とも。 サタン? あー。 「6が3つ並ぶと、悪魔的なイメージを感じるもんね」 わたしは小麦さんにそう言った。 放送部室の椅子に腰掛ける小麦さんが前のめりになり、 「そうですそうです小泉先生!! 6が3つ並んで、とってもオカルト」 「不吉な感じもするけどね」とわたし。 「でも、コーフンしません!? 6が3つ並ぶ日付なんて今日ぐらいでしょ!?」と小麦さん。 平成6年6月6日以来ってコトだよね。 放送部員の彼女たちは当然産まれてないし、わたしだって産まれてない。 「小麦。あんまりハッスルしないの」 わたしから見て小麦さんの右に座っている尾石素子(おいし もとこ)部長がツッコミを入れる。 「素子ちゃんは毎度ながら厳しいね」と小麦さん。 「6が3つ重なって興奮する気持ちは分かるけど

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    japan-eat 2024/06/06
  • 【愛の◯◯】『新古今和歌集』を仲立ちに - 音楽と本、それからそれから……。

    昼下がりのカフェテラス。左斜め前には川又さん、右斜め前にはさやか。川又さんはホットコーヒーを、さやかはアイスコーヒーを飲んでいる。 川又さんは喫茶店の娘らしくホットコーヒーをじっくりと味わっている。 そんな姿を見て、さやかはアイスコーヒーのストローを右手の指でつまみながら、 「吟味してるんだね、川又さん」 ぴくっ、と反応した川又さんはコーヒーカップを置き、 「すみません、青島センパイ。吟味し過ぎて、自分だけの世界に入り込んでしまってました」 「いいんだよ」 さやかはそう優しく言い、川又さんに微笑みかける。 どきっ、としたみたいな川又さんの表情。 いい感じ。 いい感じ、というのは、 『川又さんとさやかの距離を近付けたい』 という目論見がわたしにあったのである。 2人がお近付きになったら、面白い。 「さやか、さやか」 「なにかな、愛。はしゃいでるみたいな勢いでわたしの名前を呼んで」 「昔話なん

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    japan-eat 2024/06/03
  • 【愛の◯◯】アシスタントには場馴れを - 音楽と本、それからそれから……。

    「こんにチワワ、チワワチワワ!!! 5月終わり。週の最後の金曜お昼休み。皆さんいかがお過ごしかな? 秋萌音(あきもと モネ)です。 放送部部長の中川紅葉(なかがわ もみじ)が『今週の金曜の担当はわたし』って告知してたみたいだけど、代わってもらっちゃった。 もみじのファンの子には申し訳無いコトしちゃったね。 でも放送部ナンバー2のわたしも、良かったら推していってちょーだいね。 さて!! 日から、1年生ボーイに、アシスタントとして、番組内で喋ってもらいます!! というわけで、豊崎(トヨサキ)くん、タイトルコールおねがい!!」 「え、えっと。あーっと。そのっ。ら、『ランチタイムメガミックス』、金曜日」 「タイトルコールできたね〜! できるだけ偉いよ。 もっとも、『いかにも校内放送のスタジオの空気に慣れていませんよ』的な感じの言い方だったけど。 決めた、わたし。 やっぱり場馴れよ、場馴れ。 わ

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    japan-eat 2024/05/31
  • 【愛の◯◯】アカ子さんはウィスキーより強く、おれより強い - 音楽と本、それからそれから……。

    なんと今日は仕事が午前中で終わった。 いわゆる「半ドン」だ。実家の邸(いえ)に向かう。 応接間に向かっていく。 横に長いソファには愛とアカ子さんが既に隣同士で座っていた。 おれは真向かいのソファに腰を下ろした。 アカ子さんに眼が行く。 涼やかなワンピースだ。やや濃いめの青1色。 『昨日の夜におれの妹がマンションの部屋で途中から着ていたワンピースと、どっちがお値段が高いんだろうか……』 そんなふうな余計なコトを思ってしまう。 おれから見てアカ子さんの右隣の愛が、見かねたように、 「品が無い目線してるわね、アツマくん」 「ぐぅ」 「そして、『ぐぅ』だとか品が無いリアクション」 すんません。 「アカちゃんのワンピースに見惚れちゃうのは予測範囲内だった。だけど、何事も『ほどほど』なのよ?」 はい。 「アカ子さん。すまん。なんか変な視線向けちまったよな」 しかし彼女はすこぶる上機嫌に、 「神経質にな

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    japan-eat 2024/05/29
  • 【愛の◯◯】妹の「いつも優しくしてくれてありがとう」 - 音楽と本、それからそれから……。

    夜道を妹のあすかと歩いている。 「あすか。ハッキリ言っておく」 「なにー?」 「おれの店に来る時は前もって『来るよ』と言ってから来い」 「事前連絡必須ってコト!?」 妹は大げさな声を出し、 「カタイね〜、兄貴も」 と、カラダを寄せてくる。 「いきなり来店されると対応のしようが無い!」 キッパリ言うが、 「それで今回兄貴はトレーの上のお冷やをこぼしかけちゃったんだね」 と妹が痛いトコロを突くから困る。 「こ、こぼさなかったし。未遂で終わったし」 「でも、危なかった。わたしがドアを開けてお店に入った途端にあんなに動揺するんだもの」 と言い、 「青二才だよね、兄貴って」 うるせー。 「社会人2年目だし、2年目のジンクスだな。2年目のジンクスが発動してる」 「『発動』ってなんだよ、『発動』って」 おれはツッコみ、 「なぁ、あすか。おまえにはいい加減なコトバづかいしてほしくないんだ」 「なんでー?」

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    japan-eat 2024/05/28
  • 【愛の◯◯】利比古くんを悔しがらせるのは愉しい - 音楽と本、それからそれから……。

    昨夜のショートパンツとは打って変わってジーンズを履いている。 もっとも、わたしの脚は長くないから、あまり見栄えはしない。こんな時155センチという身長を呪う。 見栄えがするのは……そう、今わたしの真向かいのソファに座っている梢(こずえ)さんみたいな体型の女性(ヒト)。 「梢さんって、身長、わたしよりも10センチ以上高かったですよね?」 「そだね。166.5センチ」 「ステキだ」 「そう? ありがとう」 こういうやり取りをした後で、梢さんと一緒のソファに着座している利比古くんに注目する。 梢さんと一緒のソファといっても、利比古くんは彼女とはかなり間隔をとっている。 大胆とは真反対の性格。 顔面は当然、いつも通りの2枚目フェイス。 梢さんとさほど変わらない身長(168センチだっけ?)が気にならないぐらいイケていて、キラキラしている。 見続けてしまったら「負け」だと思い、小さく『はぁ』と溜め息を

    【愛の◯◯】利比古くんを悔しがらせるのは愉しい - 音楽と本、それからそれから……。
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    japan-eat 2024/05/27
  • 【愛の◯◯】21歳目前のわたしを…… - 音楽と本、それからそれから……。

    流(ながる)さんの彼女さんのカレンさんは名前の通り可憐な美女だ。 わたしたちの邸(いえ)にやって来た彼女。リビング。ソファ。わたしの真向かいで流さんに寄り添って座っている。 わたしから見て流さんの右隣に座っているカレンさんはニコニコと、 「流くん。楽しみでしょ」 「え。何が」 キョトンとする流さんに、 「にぶーい。鈍過ぎ。新人賞のコトだよっ」 ついに流さんが小説の新人賞に投稿したのだった。 結果はまだ分からない。 「受賞したらデビューできるんでしょ!? 楽しみだねぇ」 「いや、そう簡単には。何回か選考もあるし」 控え目な流さん。 『受賞を目指して投稿したんだから、もっと前向きでも良いんじゃないですか?』 わたしがココロの中でそういう風に思っていると、 「そんなに弱気でどーすんのよ〜〜〜!!!」 と、満面の笑顔でカレンさんが流さんの背中をバンバンと叩いた。 押されまくりの流さん。 「か、カレ

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    japan-eat 2024/05/26
  • 【愛の◯◯】年下ならば◯◯。年上ならば……。 - 音楽と本、それからそれから……。

    「加賀くん」 「なんだ? あすかさん」 「状況説明させてよ」 「どーぞ」 「後輩の加賀くんとのビデオ通話。スポーツ新聞部出身者同士のいわば『OGOB会』」 「なーんか大げさだな、『OGOB会』とか」 「そんなコト無いよっ!!!」 「叫ばなくても」 「……ねえ。加賀くん?」 「なんだよ」 「わたしさ、いま、ベッドに腹ばいになって、スマホ見ながら喋ってるんだけど」 「それがどーした」 「だらしないって思う? そ・れ・と・も……」 「だらしないのヒトコトだな」 「ガクッ!!!」 「や、なにがやりたいんだあんた」 「……わたしが、やりたいのはね」 「おう」 「『スポーツ新聞部に1年生の男の子が2人入ったんだよ』っていう、キミへの情報提供」 「男子2人? 初耳だな」 「言うの遅れちゃってた」 「その男子2人は戦力になりそうなんか」 「入学したての頃の加賀くんよりは200倍戦力になるみたいだよ」 「…

    【愛の◯◯】年下ならば◯◯。年上ならば……。 - 音楽と本、それからそれから……。
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    japan-eat 2024/05/25