春の名人戦が終わり、藤井聡太最年少名人が誕生した。 その華やかで、おめでたいニュースは同時に、渡辺明前名人が失冠し、19年間保持していたタイトルが0になったことを意味していた。多くの報道陣が勝者を映していて、敗者が背中にカメラのシャッター音を受けるのは、将棋界ならではの光景だった。 数は違えども、私も多くのシャッター音を背負ったことがある。 新幹線の掲示板にニュースが流れて… 2013年、里見香奈女流五冠が初めて誕生した日、その対局相手は私だった。当時女流棋戦は6つで(現在は8つ)、里見さんは全冠制覇まであと1つとなり、人々はそれを期待しシャッターを切り、私は唯一持っていた「女王」のタイトルを失った。 毎局後に行われる打ち上げに参加し、大阪から東京へ帰らなければならない私は良きところで席を立った。すると、女王だった2年間で特にお世話になった関係者の方が「駅まで送りますよ」と、一緒に歩いてく