第4回 芸術というゾンビ 「音楽芸術は公共財である」という掛け声はすでに無効だ。そのことがはっきりしているのに、あたかもそれが有効な物言いとして流通しているのはなぜだろうか。それは、旧来の音楽芸術概念がゾンビとして生き残っているからだ。それをゾンビとして生かしているのは意外にも、旧来の枠組みで非芸術とされた音楽に携わる人々である。今、音楽芸術概念を最も必要としているのは、ポピュラー・ミュージックを中心とした生産性の高い音楽ジャンルなのである。そのカラクリはこうだ。 芸術は死んだ。それも、芸術なるものは幻想だ、なにものも旧来の意味での芸術たり得ない、という死に方をしたはずである。しかし、芸術概念はしぶとく生き残ってきたというのが実際のところだ。たとえば、19世紀半ばに始まる「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、芸術と日用品のあいだの境界を取り除き、両者の融合を図ろうとしたが、それは日用品を芸術
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