●「ものぐさ精神分析」の受けいられ方,昔・今 岡田 うちの姉が高校生で、僕が中学の時、いきなり姉がニヒルになってしまったんですよ。(一同笑)それで本棚を見ると「ものぐさ精神分析」という本があって、これが悪いんだなと思ってですね。それから十年間読みませんでした。姉が突然、「すべては幻想さ」のようなことを言い出してですね、あの時代にはものすごく影響を与えましたね。あの時代と比べて、いまの時代というものの反応はいかがですか。 岸田 ちょっと常識化したという面もありますね。 岡田 当時は、学生に殴りかかられたというような伝説も聞いているんですが。 岸田 いまから二十年も前の話ですね。「理想というのは幻想で、理想のためにいろいろ献身するのは本人はいい気分かもしれないが、はた迷惑だ」なんて言ったら、怒ったやつがいて。いまはさすがにそういうのはいませんね。 岡田 いまの学生というのは、先生の学説