メモには2つの効用がある。一つ目は記憶を定着させる効果、もう一つは記憶を呼び覚ます作用である。 記録者は、経験や思い付きを書き留めるに際して、紙の上に手書きの文章を記すことで、アタマの中に浮かんだ内容を整理し、より強固な形で刻印する。 一方、適切に記録されたメモは、書き留めた時点で書き手が考えていた内容を、読んでいる者の眼前に正しく再現してくれる。 であるから、メモを取ることに長けた取材者は、漫然たる記憶に頼って原稿を書いている書き手と比べて、常に数倍量の情報とアイディアをストックしておくことができる。 なんだか素晴らしい話に聞こえる。 正しいメモの取り方を習得すれば、明日から諸君のコラムは見違えるほどビビッドになる......てな調子で、自己啓発関連のビジネス本は、最初の数行の間で空中にパイを投げることになっている。ほら、あのパイを追いかけて行けば君たちはどこまでも高い場所に到