PR誌『世界思想』50号「歴史」特集号より、歴史学者の山本浩司先生の「男性としてジェンダー史をはじめること」を公開します。経済史の研究者である山本さんは、なぜジェンダー史を研究するようになったのか。研究と生活、今と過去を行き来する、渾身のエッセイです。 ――歴史とは、歴史家とその事実のあいだの相互作用の絶えまないプロセスであり、現在と過去のあいだの終わりのない対話なのです。 E・H・カー『歴史とは何か 新版』 ――個人的なことは政治的なことだ フェミニストスローガン 二〇二一年四月末のある日、僕は足早に最寄りの大型書店に向かっていた。脇目もふらずに入口を通過する。「女性」「出産経験」「子育て」「ジェンダー」……手当たり次第に思いつくキーワードを店頭の検索用端末に入力する。今、女性として日本で子供をもうけるって一体どういうことなんだ? お母さん向けの本じゃないんだ。出産や子育ての経験を男の
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