ブックマーク / honz.jp (48)

  • 我らが ”サピエンス観” 崩壊!『ゲノムが語る人類全史』 - HONZ

    ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。 ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。 その配列を決定する方法は猛烈なスピードで進歩してきた。2000年に最初のヒトゲノムが報告された時、13年の年月と三千億円の費用がかかった。それが今や10万円以下、数時間もあればできてしまう。信じられない技術革新だ。従来の酵素を使う方法とは全く異なったナノポアシークエンシングが開発されているが、これに使われる機械の大きさを知ったら、誰もが目を疑うはずだ。なにしろスマホを少し大きくしたくらいなのである。 いうまでもなく、ゲノム解析の進歩は、医学に大きな進歩をもたらした

    我らが ”サピエンス観” 崩壊!『ゲノムが語る人類全史』 - HONZ
  • 『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』時計と時間のズレた関係 - HONZ

    この原稿を書いている最中に、想定外のニュースが飛び込んできた。Facebookが新しい時間の単位を発表したというものだ。人類(のほとんど)は秒を共通の使用しているが、Facebookが提案した新しい時間の単位「フリック」は、7億560万分の1秒で、映像コンテンツを制作する際に、有用な単位となるらしい。 確かに時計の技術的な進歩により、時間の単位は変わっていないが、定義は変わった。はじめは地球の自転により定義され、公転に変わり、1967年に現在の定義であるセシウム原子の固有の周期に基づく秒に変わった。 そして、人類を悩ます問題も同時に誕生した。人工的な原子時計が導入されたことで、原子時間と天文学的時間にずれが生じたことだ。そのズレの影響の被害者は、生活を裏側から支えるシステムやプログラムである。ズレを修正する「うるう秒」が1972年からこれまでに27回導入されてきたが、対応の負荷があまりに大

    『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』時計と時間のズレた関係 - HONZ
  • 『天才を生んだ孤独な少年期』つながりの過剰は愚民社会の到来を招くか? - HONZ

    天才とは何たるかがよく分かる一冊。が、それゆえに自分が天才でないことにも気付いてしまうという残酷な一面を持つ。 書に登場するのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アイザック・ニュートン、トーマス・エジソン、夏目漱石、アルベルト・アインシュタイン、そしてスティーブ・ジョブズ。時代も分野も異なる、これらの天才たちには、ある共通点があった。 それは、いずれも孤独な少年期を送っていたということである。ダ・ヴィンチとニュートンは幼い頃に母から引き離され、夏目漱石とジョブズは養子に出された。また、エジソンとアインシュタインには、ADHDや自閉症を疑わせる認知の特性があった。 このように聞くと、「やはり神は平等だ。輝かしき栄光を手にした人物には、同時に試練も与えたのだ」と思われるかもしれない。だがそれは因果が違うのである。彼らにとっては孤独な少年期こそ、才能を発揮するための必要条件であったというのが、書の

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    jpon7 2015/03/31
  • 『本は死なない』キンドル開発者、読書についてかく語りけり! - HONZ

    アマゾンが電子書籍読み放題サービスに参入するというニュースがある。これは月額9.99ドルの契約を交わすと、約60万タイトルの電子書籍が読み放題になるというサービスだ。日ではいまひとつ普及していない印象が拭えない電子書籍だが、アメリカでは事情が異なるようだ。書の記載によると、アメリカの出版業界の市場調査を専門とした機関の報告で、2012年までに成人の24・5パーセントが日常的に電子書籍を読んでいるという調査結果が出ているそうだ。 社会学者エヴェレット・ロジャーズの著書『イノベーションの普及学』によると、革新的な技術が消費者に普及するまでには5つの段階をふむという。消費者全体の2・5パーセントを「革新者」と呼び、最も早い段階で新しい技術に反応し購入する層。次が「初期導入者」で13・5パーセント。これに次ぐのが34パーセントを占める層で「初期多数派」といい、ここまで消費者のほぼ50パーセント

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    jpon7 2014/07/18
  • 「上書き保存」で、記憶を編集する - HONZ

    『ニューヨーカー』誌の2014年5月19日号に「パーシャル・リコール(partial recall)」というタイトルの記事が載っていました。ピンと来た人もいるかもしれませんが、これは映画『トータル・リコール』に引っかけているんです。この映画、いろいろ話題になったので、ご覧になった方も多いかもしれませんね。『トータル・リコール』は、人間の記憶をまるごと入れ替えることにより、別人格の人間をつくるという設定の映画でした。 (いきなり余談ですが、私は『ニューヨーカー』のこの記事を読んでから、有名な映画なのに見ていないことに気づき、ちょっと見てみました。オリジナルのシュワルツェネッガー&シャロン・ストーン主演のものは、自分的には、マジっすか、と開いた口がふさがらないくらいに、演技が下手だったり、台詞がベタだったり、まるで出来の悪いアメコミみたいだと感じましたが、リメイクされたコリン・ファレル主演のほ

    「上書き保存」で、記憶を編集する - HONZ
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    jpon7 2014/07/09
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    『腸よ鼻よ』11指腸 2018年09月29日 澄み渡る青い空と透き通るような海、白い砂浜のある南の島――沖縄。 この島に生まれ、蝶よ花よと育てられた1人の少女がいた。 彼女の名は島袋全優。 漫画家を志し、いずれは大都会東京での タワーマ...

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    jpon7 2014/06/12
  • 『中国の歴史認識はどう作られたのか』 共産主義から愛国主義へ - HONZ

    この10年間の最大の過ちは教育にありました。ことにイデオロギー的、政治教育です。単に学生たちに対してのみならず、人民一般に対する教育です。 1989年に世界を震撼させた天安門事件を振り返り、鄧小平はこう語った。彼は、民主化を求める抗議行動の拡大を目の当たりにして、1980年代における共産党の最大の過ちは、人民に銃をつきつけたことではなく、イデオロギー教育の欠如であったと結論付けたのだ。この事件以降中国では、共産党主導の愛国主義教育キャンペーンが行われていく。そして、この愛国主義教育によって深く埋め込まれた「歴史的記憶」は、市井の人々の世界観から外交政策の選択肢、指導者の言動にまで大きな影響を与えることとなる。 書のテーマは、「歴史」そのものではなく「歴史的記憶」にある。著者は書で、過去に実際何が起こったのかではなく、中国人が「歴史」をどのように理解してきたのか、また支配者たちはどのよ

    『中国の歴史認識はどう作られたのか』 共産主義から愛国主義へ - HONZ
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    jpon7 2014/05/24
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    『美味しんぼ』における山岡士郎が残した功績を考える (其の二) 2018年09月30日 『この記事を書いたのは誰だーーー!!』 どうもみなさんこんにちは。苦し紛れで書いた『美味しんぼ』レビューがなぜか、マンガ新聞の週間レビューランキングに入っていて驚いています。 しかしながら「なら、...

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    jpon7 2014/05/22
  • 『京都大学人気講義 サイエンスの発想法』世界に誇れる名講義 - HONZ

    感動を飛び越してショックだ。こんな面白い講義をリアルタイムで受けている京大生には、同じ大学生として嫉妬全開である。まあ、受験生時代のセンター試験の点数を聞かれたらぐうの音もでない訳だが、学校が違えばこんなに違うものかとつい思ってしまう。 そんな悩ましい程面白い講義とは、京都大学屈指の人気を誇る、「生命の化学」。その中から生徒に好評だった部分を選りすぐり、実際の講義の流れに沿ってまとめたものが書なのだ。 しかもこれがただの人気講義ではない。ハーバードやMITといった世界的名門大学によって設立された国際オンライン教育機関である、edXにて今年4月から、この講義の模様は世界中にネット配信されている(edxからの配信としては日初)。つまり、世界トップレベルというお墨付きを受けた超人気講義がこの一冊に収まっているという訳だ。 早速、気になる講義の内容を、プロローグより抜き出して紹介しよう。 この

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    jpon7 2014/05/19
  • 『テキヤはどこからやってくるのか?』知的好奇心を満たしてくれる一冊 - HONZ

    浮かれた雰囲気の場所にはかならずといっていいほど露店が立ち並んでおり、焼きそばを焼くソースの匂いや派手な色彩の店構えがその場の雰囲気を盛りあげている。特に縁日や祭りにとって露店は欠かせない存在であり、露店の賑やかな存在が私たちにハレの気分を味あわせてくれている。 東京下町では、これら伝統的な露天商のことを「テキヤさん」と親しみを込めて呼んでいるが、一般的には陽のあたる場所からちょっと引っ込んでいるような社会的ポジションを保ってきた存在の人たちだ。祭り前日夕方にどこからともなくふらっとやってきては組み立て式の屋台を設営し、そして祭り翌日朝にはゴミ一つ残さず綺麗に姿を消しているという神出鬼没な旅人の印象も持たれている。 そんな彼らは、一体どういう人たちで、どこからやって来て、そしてどういう商慣習のもとで縁日や祭りに参加しているのか。書は、普段なかなか知り得ないディープな世界を人文社会学的に解

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    jpon7 2014/05/15
  • 『暴露 スノーデンが私に託したファイル』世界24カ国同時発売−世界初レビュー - HONZ

    書は世界24カ国同時発売である。日では日朝から書店店頭に並べられている。ということはこのレビューが世界最速になるかもしれない】 このレビューを書くため、「スノーデン」や「NSA」などのキーワードを20回以上Googleで検索し、何件かの事実確認をするためにMicrosoft Office 365を経由してメールを送受した。すでにこれらの通信は北米大陸のどこかに存在するサーバーに蓄積されているかもしれない。 “バウンドレス・インフォーマント”と呼ばれるプログラムが、2013年3月8日から1ヶ月間で世界中から傍受したメールは970億件以上、通話は1240億件以上だ。なかでもイランやパキスタンなどは140億件を超えている。それどころか、傍受が禁止されている米国内や、技術的に難しいはずの中国からですら30億件以上のメールと通信データを収集している。もちろん日も例外ではない。米国企業に勤務

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    jpon7 2014/05/14
  • 『かくして「源氏物語」が誕生する』by 出口 治明 - HONZ

    僕は、確か小学生の頃、平家物語を読んで感動し、同じ感動を味わおうと思って源氏物語に取り組んだ。田舎の少年は、源氏物語は武家としての源氏の盛衰を描いたものに違いないと勝手に決め込んでいたのである。読み始めて、おそろしく拍子抜けしたことが記憶に残っている。途中で投げ出した源氏物語に、再び取り組んだのは高校生の頃ではなかったか。その時は漱石よりもむしろ惹かれるものがあった。20世紀文学の双璧と言われるジョイスやプルーストにも決して引けを取らない大ロマンが、1,000年も前に日で書かれていた、田舎の高校生はとても誇らしく思ったものだった。 ところで、全ての物語にはそれに先行する物語(群)があると言う。人間の独創力は実はそれほど大したものではないので、次々と翻案を重ねていくのである。例えばダンテの「神曲」は、トレードの工房で翻訳されたムハンマドの天国と地獄への旅を扱ったイスラームの物語「階梯の書」

    『かくして「源氏物語」が誕生する』by 出口 治明 - HONZ
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    jpon7 2014/05/06
  • 『文楽へようこそ』 - HONZ

    ゴールデンウィーク前、締め切りが立て込んでいる中、大阪の文楽の観劇を強行した。人間国宝、竹住大夫引退興行の第1弾であり、めったに掛からない「菅原伝授手習鑑」の通し舞台だったからだ。ちょうど直前に菅原道真と藤原時平の小説の文庫解説を書いたばかりで、筋書きが頭に入った状態で改めて通して観てみたかったのだ。理不尽だと思っていた「寺子屋の段」が理解できて、初めて松王丸の慟哭が胸に響いた。 大阪文楽劇場は正月公演を含めて年に数回、足を運ぶがこんなに混んでいるところは見たことがなかった。大阪市長と真っ向から戦った住大夫さんの舞台を、一度は見ておこうと思うのか、当日券や幕見席のチケットを買う人で長蛇の列。私は茶屋に席をお願いしていたが、そこも満杯の状態で、いつもは静謐な劇場が興奮状態にあった。 病気から復帰され、また、元の迫力あるお声が戻ってくると信じていたが、やはり年齢には勝てず、満89歳、68年の

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    jpon7 2014/05/06
  • 天才数学者の青春 『定理が生まれる 天才数学者の思索と生活』 - HONZ

    数学のノーベル賞と言われる「フィールズ賞」を受賞した天才数学者による、定理を証明するまでの舞台裏と日常――このの内容を一言でいうと、そうなるだろう。ただ、ほとんどの人が、なんとも不思議で神秘的な瞳を持つ、の帯の著者写真(こちらでどうぞ)に目を奪われるように思う。 写真では、肩まで下りるワンレングスの漆黒のストレートヘアと、細面の顔に浮かぶ深い黒の瞳が印象的だ。服装はといえば、数学者というよりも、おしゃれな手品師のようで、白いシャツにドレッシーな黒のスーツ。おまけにトレードマークのクモのブローチは、繊細に左胸を飾っている。おでこに手をあてるポーズ自体、なかなかビシッと決められる人は少ないだろう。 1973年生まれのこのフランス人が、2010年のフィールズ賞受賞者での著者、セドリック・ヴィラーニだ。弱冠28歳でリヨン高等師範学校数学教授となり、ポアンカレ賞など、とにかくすごい数学賞を総な

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    jpon7 2014/05/04
  • 『社会はなぜ左と右にわかれるのか』 - 断層を乗り越えるための技法 - HONZ

    保守とかリベラルとか、その手の話題とは願わくば一線を引きたいと思っていたし、あまり深入りせずに真ん中あたりをうろちょろしていると思われたいのが音だ。だが、ここまで明確に人間社会における道徳の機能的価値を晒されると、むしろ知らないことの方が怖くなってくる。 道徳心理学という手法を活用した書の明快すぎる論考には、いささか著者固有のバイアスもかかっていることだろう。だが、冒頭に大部分の分量を割いて、そのスタンスを丁寧に明示している。それは、社会的直観モデルとされる「まず直観、それから戦略的な思考」というもの。つまり直観の概念を重視しながら、人間の性を描き出そうとしている。 このスタンス自体、論争の対象になりうるだろうし、実際、書にはいくつかの批判も寄せられたのだという。だが、紹介されている膨大な新事実を前に、その種の議論が周回遅れの印象を受けるほどの興奮を感じた。 冒頭から、道徳を理解す

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    jpon7 2014/05/02
  • 『トロイアの真実』 シュリーマンは何を見つけたのか - HONZ

    一冊のは、人の一生を変えてしまうほどの力を持つことがある。8歳のときに父親からプレゼントされた『子どものための世界の歴史』は、ハインリッヒ・シュリーマンの人生をハリウッド映画よりも劇的なものに変えてしまうこととなる。幼いシュリーマンは、そのに描かれていたトロイアが炎上する挿絵の虜になり、いつかその場を訪れることを誓った。ホメロスの『イリアス』にも描かれるトロイア戦争は空想の産物であると父親にいくらいわれても、シュリーマンは聞く耳を持たず、その争いを“史実”として信じていたという。 ビジネスマンとして大成功したシュリーマンは、子どもの頃の夢を忘れることはなかった。40歳を超えたシュリーマンは蓄えた資金を携えトルコへと発掘に向かい、気の遠くなるような作業の末、ついに夢物語と思われたトロイアを発見したのである。ロマンに満ちた彼の生きざまを知ったフロイトは、「シュリーマンこそもっとも羨むべき人

    『トロイアの真実』 シュリーマンは何を見つけたのか - HONZ
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    jpon7 2014/04/22
  • 感電するアート 『オーラ!? 不思議なキルリアン写真の世界』 - HONZ

    キルリアン写真というものを、ご存知だろうか?今から約80年ほど前の1930年代に、旧ソビエト連邦で発明された不思議な写真のことである。発明家ニコラ・テスラの影響を受けた旧ソ連のキルリアン夫がその発明者。電気治療器の高周波によって生体から放電が起きていることに気付き、それを撮影しようと試みたことが発端であったという。 この鉄のカーテンの中で育まれたキルリアン写真が西側諸国にも広く知られるようになったのは1970年代のこと。超能力の研究で博士号をとったアメリカの臨床心理学者セルマ・モスが1970年にソ連を訪問したことがきっかけとなった。手や植物の周りを光が取り囲む不思議な写真は、「オーラを撮影したものではないか?」とも言われ、一気に世の中に知れ渡ることとなったのである。

    感電するアート 『オーラ!? 不思議なキルリアン写真の世界』 - HONZ
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    jpon7 2014/04/21
  • 江戸の科学する心『江戸の理系力』 - HONZ

    「日を知るには、明治維新前の科学を見るのがおもしろい。」雪の科学者、中谷宇吉郎が自身のエッセイの中で語っていた。日の科学は、明治以後になって輸入され、模倣されたものが多い。だから中谷宇吉郎は、明治維新前の日の科学を解釈し、独創性ある隠れた科学を堀り起こした。特に江戸時代は、自然科学に目覚め、数学を生活の中に取り入れ、医療も格段に発展した時期でもある。書は、この中谷博士の「日の心」を探求する姿勢を踏襲するものではないだろうか。 「江戸の天文暦学」「江戸の測量術」「江戸の医学」「江戸の数学・和算」「江戸を彩る理系人たち」という5つの章から構成され、天文暦学者・渋川晴海にはじまり、測量家・伊能忠敬、北方調査団・間宮林蔵、医師・華岡青州、和算家・関孝和、草学者・平賀源内など、様々な科学者の経歴や功績を追いかけていく。読みやすさにもこだわり、図版が多数挿入されている点も嬉しいところだ。三

    江戸の科学する心『江戸の理系力』 - HONZ
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    jpon7 2014/04/17
  • 捏造を知るにはこれを読め! 『背信の科学者たち』の緊急再版を訴える⇒再販が決定しました! - HONZ

    『背信の科学者たち』、この刺激的なタイトルのが化学同人から出版されたのは四半世紀前。1988年のことである。かけだし研究者であったころにこのを読んだ。驚いた。捏造をはじめとする論文不正を中心に、科学者のダークな事件をあらいだし、その欺瞞から科学をとらえなおそうという試みである。最初におことわりしておくが、この、後に講談社ブルーバックスとして出版されているが、いまは絶版になっている。 科学というのは、基が正直ベース。性善説にのっとった営みである。こういったことと自分はまったく無縁だと思っていた。まさか、10年後に捏造事件に巻き込まれるとは夢にも思っていなかった。そして、今回のSTAP細胞騒動である。 STAP細胞について、直接は関係していない。しかし、主人公以外の登場人物は、論文調査委員会のメンバーも含めて、個人的に知っている人ばかりである。そして、専門領域が近いこともあってか、ある

    捏造を知るにはこれを読め! 『背信の科学者たち』の緊急再版を訴える⇒再販が決定しました! - HONZ
  • 『サードマン 奇跡の生還へ導く人』解説 by 角幡唯介 - HONZ

    私もサードマンを見たかった いいを読んで感銘を受けた時はつよい読後感でしばらく呆然となったり、新しい世界観を獲得して人間としてひと皮むけたような気になったりするものだが、私はこのを読んでもそういう前向きな気持ちにはならなかった。 もちろんいいだとは思った。それに面白さという点でも群を抜いており、一気に読み終えたことも事実だ。このは冒険を扱ったものではあるが、ほかの冒険とはちがってサードマン現象というあまり知られていない新しい視点で貫かれており、内容が斬新で、したがって類書もなく、要するに驚きに満ちた作品であることはまちがいなかった。オカルトととらえられてもおかしくない現象を扱っているが、著者のジョン・ガイガーはそれをあくまで科学的かつ実証的に分析し、説得力のある見解を導きだしている。とくにキリスト教の守護天使と絡めた分析などは、謎めいた宗教的な聖蹟に新しい光をなげかけたとさえいえ

    『サードマン 奇跡の生還へ導く人』解説 by 角幡唯介 - HONZ
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    jpon7 2014/04/12