ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。 ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。 その配列を決定する方法は猛烈なスピードで進歩してきた。2000年に最初のヒトゲノムが報告された時、13年の年月と三千億円の費用がかかった。それが今や10万円以下、数時間もあればできてしまう。信じられない技術革新だ。従来の酵素を使う方法とは全く異なったナノポアシークエンシングが開発されているが、これに使われる機械の大きさを知ったら、誰もが目を疑うはずだ。なにしろスマホを少し大きくしたくらいなのである。 いうまでもなく、ゲノム解析の進歩は、医学に大きな進歩をもたらした