FSWのF1開催からの撤退は、親会社であるトヨタの、厳しい経営状況下での判断として尊重すべきではあろう。だが一方、F1という大きな国際イベント開催への社会的責任を、どうとらえているのか、首をかしげざるを得ない。 トヨタは巨額資金を投入してFSWを改修し、日本GPを招いた。それまで20年間に渡りF1を開催し、高く評価されていた鈴鹿から開催権が移った状況は、ファンの目に「カネの力で奪い取った」と映った。さらに2007年の開催初年度は観客移送バスの運行が混乱し、多くの観客がレースに間に合わない、帰れないとうトラブルが発生。訴訟になるなど信頼は損なわれた。 昨年の大会では約20億円かけて施設を整備し、入場客数も絞ってスムーズな運営を実現。信頼回復の緒に就いたが、ここで投げ出せば再びファンの目は厳しくなる。 F1開催でサーキット側の収入はチケット代程度。立地条件の悪さから観客の足を用意せねばならない